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クアットゥオル・シーズン  作者: 二郎
第3章 人間の国へ
28/65

第27話 カドモニアの森防衛戦~フェイズ2 上空300mの戦い

低っ!!!

300mって、大阪市阿倍野区のあべのハルカスと同じ高さ!!!

低い、低いですよ!!ドッグファイトって、最低でも1,000m以上の高さでやるもんじゃないのかぁぁ!!!!\(゜ロ\)(/ロ゜)/



‥‥‥‥こほん。お見苦しい所を見せてしまい大変申し訳ありません。<m(__)m>

では、第27話どうぞ!!!





 サガムの東側に広がるヴァーグ草原上空を我が物顔で西へと進軍する一団があった。

 カドモニアの森へと侵攻しているテラン王国軍の第一陣だった。

 第一陣は上空は鷲の頭に獅子の胴体に翼が生えている空を駆る獣グリフォンや翼と腕が一体となっている小型の飛竜種ワイバーンといった航空戦力で構成されている第一連隊だ。

 その数は1,500。

 1匹で歩兵5人以上の働きをすると言われているこの世界の航空戦力に於いては、数がそのまま戦力では無く、数の上でも驚異的な数字だった。それだけテラン王国が今回の作戦の航空戦力を重要視していた。

 その後方に第二陣である第三連隊は、テラン王国が金で雇った傭兵とそれを統制する中間種の鹿毛や栗毛の馬に乗っている騎兵。石で出来たゴーレムとそれを操る魔術者で構成されている混合連隊だった。傭兵と騎兵とゴーレムと術者を合わせて6,000に上る。

 統一性の無い恰好と武器がバラバラな厳つい大勢の傭兵達と、皆同じ鎧を着ている騎兵。石のゴーレムとテラン王国の魔術師である証の赤のマントを羽織っている術者。統一性が全くの無い連隊の進軍は、周囲に一種の異様さを醸し出していた。

 後詰めとして本隊である第三陣の第二連隊の兵力は10,000だ。騎兵、歩兵、弓兵、魔術師が構成されており、特に歩兵と弓兵が戦力の7割を占めていた。

 この編成はカドモニアの森の中での戦闘を意識しての事だった。

 突撃性の高さで平原では強さを誇る騎兵だが、カドモニアの森に侵入した際には、乱立する木々に邪魔されその強みを生かせず。寧ろ住人達との戦闘に於いて、図体が大きいので目標になりやすく、かえって部隊の足を引っ張ると懸念が発生し、部隊を率いるのに必要最低限の騎兵を配備していた。

 もうすぐ陽が出る頃にサーズ砦から第一陣の第一連隊は、事前に決められた野営地予定地の制空権確保と偵察の役目を担っていた。

 第一陣が出発して1時間後に出発した第二陣の第三連隊は、自由気ままの傭兵達はだらだらと歩いているが、列を乱す事は無く先頭の騎兵の後に続いた。

 

 その数時間後、本隊の第二連隊を率いるのは軍司令官のフェルデン将軍だった。

 フェルデンはスポーツ刈りの金髪碧眼で武骨な顔つきで、熊を立たせたかのような筋骨隆々な大柄の男だ。

 テラン王国の古参の将軍で実力は折り紙つきで、忠誠心の高さと相まって国王の懐刀と呼ばれていた。齢50過ぎなのだが、年齢を感じさせない精力的な人物で、暇さえあれば部下の騎士達の指南役を買って出る事もしばしばあった。

 兜は被ってはいないが銀のプレートアーマーを装着していた。また動き易くする為なのか、関節部分は金属の板では無く、網目状の細い金属によって保護されていた。

 男の体重と鎧の重量で普通サイズの馬では長時間歩く事は困難になり、自然に一回り大きい重種の全身が黒い馬に乗っていた。

 心地良い秋の陽光が降り注ぐ空の下。フェルデンは、チラッ!!と、さり気なく横目で隣で並走している人物を見た。

 その人物は利発そうな少年で、ショートの金髪碧眼。整った顔立ちをしており、見るからに優等生といった感じだった。

 少年は戦闘用では無い権威を表すかのような煌びやかな装飾が施されている銀の鎧を着て、真っ直ぐな目で気品溢れる中間種の白い馬に乗っていた。

 その少年を見るフェルデンの瞳には物憂いが孕んでいたが、瞼を閉じて前方を見る頃には、強風が空から雲を吹き払うみたいに消え。、その代わりに敵を倒すといったギラギラとした闘気が宿っていた。

 険しい目でまだ見えぬカドモニアの森を見据えながら、フェルテンは揺らめく記憶の一部分を思い出していた。

 

 それは約1ヵ月半位前の王城ストゥルティでのとある一室での出来事だった。

 サガムの東側では最大勢力を誇るテラン王国のほぼ中央部を縦断するように流れるワロール川中流域に王都ファルサはあった。

 王都を一望できるように小高い丘に建てられている王城ストゥルティのとある一室で、フェルデンは背凭れに彫刻が彫られている木製の椅子に座って、羽ペンや大量の紙が山積みになっている机に肘を置いていた。

 短い金髪碧眼で、意思の強そうな精悍な顔つきで贅肉の無い均整がとれた男だ。外見からフェルデンと同年代と見て取れた。高級感あふれる白の袖にフリルが付いている長袖の上に全体的に赤でボタンや袖のラインに橙色が入っている上着を着ていた。

 神聖テラン王国の現国王であるエドワール=ジョクラトル三世だった。

 フェルデンにとって上司であり忠誠を誓うべき相手なのだが、2人の間には緊張感というものは無く。寧ろ長年の仲の良い友人同士で話しているような朗らかなものだった。

 

 「奪還作戦の準備の進捗(しんちょく)状況はどうなっている」


 「予定通り9割方完了している。後は残りのストーンゴーレムを配備するだけだ」


 「そうか」


 エドワールはそう満足げに頷いた。

 フェルデンは手元にある紙を見て、何処か皮肉めいた顔をした。


 「しかし、今回の戦力は我が国が保有するワイバーンやグリフォン等の航空連隊を1つ。量産型のゴーレムが中心の魔法連隊が1つ。通常兵力の騎士団と兵団が合わせて2つ。後は金で雇ったゴロツキ共か。‥‥‥これが5年前の奴隷たちを使った武力偵察から導き出されたカドモニアの森奪還に必要な戦力か」


 エドワールは肯定と頷くが、フェルデンは何処か合点のいかない顔をしていた。


 「決定事項だから異論を言うつもりはないが、戦力過剰すぎないか。魔力が多いだけのあの出来損ない達が相手だからって、この戦力は多すぎる思うぞ。モルスの連中と俺の師団を使えば、奪還なぞ容易だろ」


 「確かにあの出来損ない共だけなら、モルスの連中とお前の師団だけに出撃命令を下していたが。敵は出来損ない共だけでは無く、住み着いている魔物共も駆逐せねばならない。そうなればモルスやお前でも無事にはすまないだろう。俺達はまだまだやらねばならない事が山積みだ。此処で命を落とす訳にはいかない。‥‥‥そうだろ」


 エドワールの宿命と相対するかのような顔つきに、フェルデンはよく分かったと言わんばかりに深々と頷いた。

 エドワールとフェルデンから発せられる静かで炎のような熱い闘気で、部屋は満たされていた。


 「軍の総司令官はエルカナ第一王子で良いんだよな。」


 「ああ。だが実質的な総司令官はお前だ。好きにすると良い」


 「王位継承する為の実績作りか。大した親だよお前は」


 フェルデンの皮肉に、エドワールはただただ苦笑するしかなかった。


 「それが無いと言えば嘘になるが、森を奪還できれば出来損ない共が頑なに隠している秘薬とその製造法を独占すれば、病気で苦しむ民や貴族連中への良いカードになる。また我等の長年の悲願も叶う事になるからな」


 「だから」


 「ああ。我等の祖霊達から奪った森に寄生している出来損ない共には、息子の王位継承の実績になるという事は、十分すぎる程の栄誉だろ」


 「間違いないな」


 2人の天に打ち上げるかのような狂気染みた笑い声が部屋中に響いていた。

 自分達が言っている事に対しての疑問など微塵にも思っていなかった。

 笑い声が収まり、一拍の静寂を置いて。


 「さてと、俺はこれから若い連中の稽古をつけて来るか」


 「あんまり無理をさせるなよ。大事な時期の前だからな」


 「善処はするぜ」


 笑いながら答えになっていない答えを言って、フェルデンは心の底から楽しそうな顔をして、部屋から出て行った。

 その後ろ姿をエドワールは仕方が無い奴だなと頬に皺を寄せて苦笑いをした。

 部屋の窓から差し込む輝く陽光に当たって、壁にかけられている大人一人分の大きさの四角形の赤い旗に描かれている双頭の獣が、部屋の主たちを表しているかのように照らされていた。


 カドモニアの森へと続く石の街道を馬に揺られながら、フェルデンは雲が風に乗って流れて行く空を見上げていた。

 先行している第一連隊の事を考えていた。


 「(そろそろ第一連隊が野営予定地に着く頃か。あそこは何も遮蔽物が無い平地だから隠れる場所がないから危険なのだが。‥‥‥まあ出来損ない共は森から出ようとしないし。しかもあの数だ。周囲に居る魔物が襲ってくる事はまず無いから、危険は無いだろ)」


 フェルデンはそう自己完結をすると、ぼんやりとしていると部隊の士気に関わってくると思い、姿勢を正そうと目線を地上に戻そうとした、その瞬間。

 神樹カドモニアの幹よりも一回り小さい巨大な光の柱が、前方の上空から自分達の頭上を通過していくのが見えると同時に、天を真っ二つに裂くような雷鳴が激しく轟いた。

 目の当たりにしたフェルデンは不意打ちで頭を殴られたかの衝撃を受け、目と口を限界にまでに開いて、彫刻品のように固まっていたが、それも長くは続かなかった。

 乗っている重種の黒い馬が、ロデオのように激しく暴れ始めたのだ。

 その暴れようは巨大な岩が自分の意思で動いているように見えた。

 それはフェルデンの馬だけでは無く、隊の指揮官クラスの中間種の鹿毛や栗毛の馬たちも同様だった。

 あまりの馬達の暴れように手綱を引いて落ち着かせようと、馬の扱いに手馴れている筈の騎兵達が四苦八苦していた。

 知っての通り馬は草食動物で、基本的には物凄く臆病な動物だ。

 肉食動物から逃げれるように人の何倍の聴覚を持つようにと進化して来た。乗っている人間や近くに居る人間が、大声や悲鳴を上げるだけでも、吃驚(びっくり)して走ってしまう程だ。

 第三連隊が使っている馬達は軍事用にと訓練である程度人や音に慣れせてているが、それも限度はあり、根本的には変わっていなかった。

 今回の空からの不可解な轟音は、人間にとって耳元で戦用の大きな銅鑼を体格の良い大男が思いっ切り叩いた音に相当するものだった。

 それだけの大音量を聞いたパニック状態の馬達が1頭も逃げ出していないのは、あまりのパニックに逃げだす事を忘れたのか、手綱を引いている騎兵達の扱いが上手かったのかは定かでは無かった。

 幾分かの時間を消費して第ニ連隊の馬の全てが落ち着く頃には、今度は第ニ連隊全体に動揺が広がっていた。

 それは不安という恐怖の感情を持つ人間には無理も無かった。

突如として得体の知れない巨大な光の柱が、自分達の頭上を通過したのだ。あれが何なのか正確に答えられる者は居らず、憶測が憶測を呼び不安を掻き立てられ、動揺は流行病のように瞬く間に連隊全体に広がった。

 これで動揺しないのは自らの意思を持たないゴーレムぐらいだろう。

 第二連隊の兵達の動揺が最高潮に達しようとした時。


 「静かにせい!!!!!」


 フェルデンの家を震わせるかのような鋭い大声に、周囲は深海と思わせる深い静寂に包まれ凍り付いたかのように動けないでいた。

 フェルデンは厳しい表情をして自分の得物である白銀製の槍を持っていた。たった一言で動揺する大勢の人間を黙らせたのは、数々の戦いを経験して来たフェルデンの貫禄故だった。

 その堂々たる姿をエルカナは尊敬の眼差しで見ていた。

 フェルデンは何ともないように平然とした声で、近くに居た騎兵を呼びつけた。


 「お前は隊を連れて、先行している第一連隊と第三連隊の無事を確認とその場に止まるように伝えろ。そして何があったのか調査をするように伝えろ。‥‥‥それで宜しいですか。エルカナ司令官」


 言われたエルカナは一瞬虚を突かれたかのような顔をしたが、直ぐに元の表情に戻し。


 「ああ。そうしてくれ」


 「ありがとうございます。‥‥‥お前の隊には第一連隊と第三連隊の無事の確認と調査を命ずる」


 「はっ! 御命令確かに承りました」


 隊長格の騎兵はフェルデンとエルカナに深々と礼をすると、自分の隊の所に戻った。


 「我等は第一連隊と第三連隊の救援と事態の調査に向かう。‥‥‥アルバ隊、出発っ!!」


 アルバ隊は自分達の動揺を誤魔化すかのように、矢継ぎ早と第一連隊と第三連隊に向かって行った。

 フェルデンは先行する騎兵達が見えなくなると、振り返って待機している第三連隊の兵士達に向かって。


 「事態が分かるまでは我等は此の儘待機だ。腰を下ろして休んでおけ」


 兵士達は最初は戸惑って誰も腰を下ろそうとはしなかったが、兵士の1人が腰を下ろすと連鎖反応を起こして、次々に腰を下ろしていき。そう時間が経たないうちに兵士達は腰を下ろした。

 待機の時は近くに居る者同士で話したりして、暇を潰すのだが。今回はそれらが見受けられず、静寂そのものだった。

 皆話す事を躊躇っていた。

 会話をすると先程の出来事について話してしまいそうで、未知への不安に押しつぶされそうで一様に口を噤んでいた。

 フェルデンはそんな兵士達の様子を気にしている余裕は無かった。

 まるで親の仇を見るかのような眉を顰めて険しい表情で、ジッ!!と、上空のある一点だけを見続けていた。


 「(先程の光の柱は先行している第一連隊の方から来ている。もしやあの光の柱に巻き込まれたのか。‥‥‥いやないな。第一連隊を構成するのは、今回の奪還作戦用に集められた精鋭揃いだ。何人かは巻き添えを食らったかもしれないが、あの飛竜将軍アイヴァンが指揮を執っているからな、今はもう光の柱を放った所に攻撃をしようとしているかもな)」


 そう楽観的に自己完結をしようとしたが、フェルデン自身に渦巻く最悪の事への疑念を払拭する事は出来なかった。

 それに適切な回答を持ち合わせていないので、フェルデンは思考の渦に飲み込まれるしかなかった。



 フェルデンの頭上を通過した巨大な光の柱に関しては、少し時間を巻き戻さなければいけない。

 フェルデンがサーズ砦から出発して間も無くの頃。

 アウクシリアに乗ってサガムを出発した真田とアシュリーは、カドモニアの森の上空を時速約600キロのスピードで、キィィィィン!!と、甲高い金属音を出して真っ直ぐ東に向かって、風を切り裂くかのように速く、亜音速の状態で飛んでいた。

 真田は丁度目線を落とした所にあるアウクシリアの幅より少し長い長方形の半透明の緑のディスプレイには、デジタル式の白文字で現在のグリニッジ標準時の日本の時刻、時速、高度、磁気コンパスが一目で分かるように映し出されていた。

また一刻も早く目的地に着きたく、1段階上のマッハ。音速の世界に入りたかったが、後ろに乗っているアシュリーや音速状態に入った証である爆発音のような衝撃波が戦闘が始まっていると勘違いを起す可能性を考慮して、音速の半分のスピードで飛んでいた。

 真田に抱き付くような形で後ろに乗っているアシュリーは、最初は慣れない高速移動に戸惑って腕の力を強くしていたが、慣れてきたのか周囲を見回し。眼下に映る緑の絨毯、カドモニアの森とその中央に(そび)え立つ神樹カドモニアを感嘆の目で見ていた。


 「(凄いわ。何時もは見上げるている神樹を同じ目線で見れる日が来るとはね)」


 自分が生まれ育った森をこういう風に見るのは初めてだったからだ。

初めて見張り台から森全体を見た時とは、違った感動をじんわりと胸中で感じていた。

 幾分かの時間が過ぎてアシュリーはその身に感じる風でその長い髪を靡かせていると、徐々に速度が遅くなっていくのに気付いた。

明らかに時間の流れが変わって来ているのが、感じ取れた。

 アシュリーが不思議に思っていると、真田が。


 「アシュリーさん。間もなく目的地に着きますよ」


 そう言いながら真田は、合成ゴム製の右のグリップを徐々に緩めながら、左のグリップを同じ速度で前に滑らせた。

 それと同時にアウクシリアの底に本体の中間部と噴射口近くの蓋が開き、其処から透明の光の粒子が噴出し始めた。

 真田が右と左のグリップを其々逆に滑らせると、それに連動して最後部とアウクシリアの姿勢制御用の先端と真田の中間にある前方、アシュリーが座っている丁度真下にある後部の噴射口からは粒子量は低下し、底部からの粒子量は増加していった。

 真田は慣れた手つきで後部と底部から放出する粒子量を調節し、アウクシリアを減速しさせて、降下していった。

 そこは森と草原の境目の場所だった。

 真田が地面に足を着けると、アウクシリアはその場に停止した。


 「アシュリーさん、着きましたよ。一旦降りましょうか」


 アシュリーは満足げな表情で真田をホールドしていた腕を解くと、真田の右斜め後ろに降りた。

 腕の締め付けに金属の鎧が当たっていた真田は痛みが和らいだことに安堵し、アシュリーが降りた事を視認すると自らも降りて、アウクシリアの飛行時に強張った身体を、腕を天に伸ばして解していた。


 「生まれて初めて空を飛んだけど、空の旅も結構良いものね。こんな時じゃなければ、子供達にも乗せてあげたいのに」


 「そうですね。それにはまずこの戦争を勝たないといけませんね」


 「確かにね。‥‥‥それでどうするの。このままテラン王国の奴等を待って迎え撃つの?」

 

 真田は静かに首を横に振った。


 「それだと後ろのカドモニアの森に被害が被る可能性がありますから。此処はアウクシリアに乗って、打って出ます。先行している航空戦力を叩けば、テラン王国軍の動きが鈍るでしょ」


 やろうとしている事とは裏腹に嬉々と話す真田に、アシュリーは怪訝な表情を浮かべた。


 「まずはこの姿をどうにかしないとな」


 突如何の前触れも無く、真田から目を覆う眩しい光が放たれた。

 近くに居たアシュリーの視界は光に強制的に塗り潰された。

 アシュリーはあまりの眩しさに顔を顰めて、手を翳して目を細めた。


 「(何なの!? 一体何が起きようとしているの!?)」


 急な事にアシュリーは如何していいか分からず混乱をきたし、その場に固まっていたが。時間が経つにつれ眩しかった光は徐々に収束し光が和らぎ、それと共に1人の青年が光の中から現れた。

 肌は白く、アシュリーより頭半分高い。腰までの長いストレートの銀髪で、陽光に照らされその長い髪の毛一本一本が自らの存在を主張するかのように輝いていた。

 邪魔にならないように赤のバンドで首の少し下で1房に纏められていた。

 瞳の色は髪と同じく、銀の瞳だった。

 青年はスラリとした短距離走者のような贅肉の無い引き締まった身体をしていた。

 その身に纏っているのは、傷つかないという自信の表れなのか漆黒と思わせるような黒の金属のキュライス(胸当て)、指の動きを邪魔しないように細工してあるガントレット(手甲)、先端が少し鋭いソールレット(鉄靴)といった最低限の物しか纏わせていなかった。

 寧ろその下に着ている特殊な繊維で出来ている黒の長袖長ズボンが、その青年を守っているように見えた。

 アシュリーは何の前触れも無くいきなり現れた青年に、唖然となってまじまじと見つめていたが。次第に眉を顰めて厳しい表情となり、素早く左腰に帯刀していた白金製の剣を右手で抜き取って剣先を青年に向け、魔力を高め何時でも魔術を行使できるようにした。

 その証拠にアシュリーの左手の掌には、左手より一回り大きい半透明の魔法陣が浮かんでいた。

 銀髪の青年は剣先を向けられている事に、恐怖を感じる事無く。仕方が無いなと 言わんばかりに苦笑しながら後頭部を掻いていた。


 「アシュリーさん、私ですよ私。罪人の真田拓人ですよ」


 「‥‥‥‥‥‥えっ!? サナダ君なの!!??」


 『真田』と名乗る青年の言葉に耳を疑い、アシュリーは信じられない物を見たかのように目を丸くして驚ていた。

 アシュリーが驚くのも無理は無かった。

 以前の真田と、今の『真田』はあまりにも違い過ぎた。

 アシュリーが記憶している真田の特徴である髪や瞳の色、身長、服装といったその人物を表す記号が、ほぼ不一致していた。

 合っているとしたら、声や性別ぐらいだった。


 「サナダ君。その姿は」


 「この姿は今回の戦争には必要かと思って」


 「必要?」


 アシュリーは真田の真意が把握できず、首を傾げるばかりだった。


 「それは追々話します。今は侵攻して来ているテラン王国軍を撃退するのが先決ですよ」


 「それもそうね」


 アシュリーは頭の中に思い浮かんでいる数々の真田への疑問を、頭の片隅に追いやり。先程と同様に真田の後ろに乗ろうとしたが。『真田』は自分の後ろに乗ろうとしたアシュリーを止めた。


 「すみませんが、アシュリーさんは此処に残っていて下さい」


 『真田』が何素っ頓狂な事を言っているんだと思い、アシュリーは呆れ果てていた。


 「何を言っているの。私は君の監視役で此処で来ているのよ。それを此処で待っていてくれなんて、役目放棄もいいところだわ!」


 アシュリーはいつになく厳しい表情で『真田』に詰め寄っていた。

 並の者なら縮み上がりそうな迫力に真田は何時もと変わらない涼しい顔をしていた。


 「ではアシュリーさんは、空中戦の経験はありますか」


 その言葉はアシュリーの心に鋭い刃のように深く鋭く突き刺された。

真田の懸念通りにアシュリーには空中戦の経験は無く、それどころか空を飛んだ事すら無かった。

 先程のアウクシリアでの空中移動が初めての事だった。

 だが、それはある意味致し無かった。

 カドモニアの森には飛行能力を持つ魔物がおらず、アシュリーは重力系統の適性が無かったので、それに属する飛行魔術は覚えられずにいた。またエルフ族に限った事では無いが、人間とある種族以外にとってはグリフォンやワイバーン等の魔物は基本的には倒すべき相手であり、利用しようする発想が最初からないので、各種族の里には航空戦力が無いに等しかった。

 ようやくテラン王国軍が運用しているのを見て、徐々にであるが航空戦力が増えつつある。


 「ここから先は目的のために互いの命を奪い合う、狂気が支配する戦場。隙を見せた者が例外無く死神に見初められる所です。アシュリーさんは私を殺したいんですか」


 突き放すかのような真田の言葉に、痛い所をつかれたアシュリーは一瞬反論しようとしたが『真田』が言っている事の正しさに気付いて、悔しそうに俯いて奥歯を噛み締めていた。

 不意に朝霧が消えるように、『真田』の表情から冷淡さが消えると朗らかな表情となった。


 「出来ない事を何時までも悔やんでも致し方ありません。出来ない事を克服するか、自分の出来る事でそれを補えばいいのですから」


 「私が出来る事」


 アシュリーは自分は何が出来るか確かめるように、小さくボソッ!!と呟いた。


 「此処に来るであろう他の里との折衝はアシュリーさんに任せますよ。人間である自分がすると、ややこしい事態になる事は目に見えていますか」


 「確かにね」


 アシュリーの脳裏には他の里のエルフと折衝して、中々言っている事が信じてもらえず。緊急時だからと実力行使に出た他の里のエルフ達と揉みくちゃになっている真田の映像が鮮明に浮かび上がって、思わず笑ってしまった。

 笑っているアシュリーを見て、『真田』はこの人何か失礼な事を考えているんじゃないかと、疑いの目を向けていた。


 「そこまで言うのなら君1人で行きなさい。私は此処で待っているわ。‥‥‥でも約束しなさい。必ず勝って帰ってくる事! 負けて死んだら冥界にまで行って、君を殺しに行くからね」


 物騒な応援に、真田は可笑しそうに笑みを浮かべた。


 「それは勘弁してほしいですね。アシュリーさんに殺されないように、ますます勝たないといけませんね」


 「そうよ。君は君に出来る事をしてきなさい」


 自分の言葉を引き合いに出されて、『真田』は最初は狐に摘まれたかのような表情をしていたが、徐々に口元が緩んで来ていた。


 「じゃあ行ってきますね」


 「必ず勝ってきなさいよ!」


 『真田』は現代日本ではやる人は居ないだろうなと思われる。握った右の拳の親指を立てるサムズアップを返事代わりにすると。

 アウクシリアから放出される光の粒子を地上に撒きながら、テラン王国軍の方へと弦一杯に引いた弓矢のような速さで向かって行った。



 透き通るような秋晴れの空の下、『真田』は時速300kmの速さで移動していた。

 テラン王国軍との距離があまり無いので、あまりにも速いスピードで移動していると、ゆっくりと移動しているテラン王国軍を通り過ぎていく可能性が高かった。

そんな新兵みたいなミスを犯したくない『真田』は、敢えて先程より半分のスピードで移動していた。


 「(先行しているのは飛行部隊と地上部隊か。部隊の目的は高度を生かした偵察と足の速さを生かした制空権の確保か。戦場の制空権を取るか取らないかでは、戦の勝敗と兵士の生存率に大きく関わってくるからな。‥‥‥定石といえば定石か)」


 『真田』はある魔法から得られた情報を元に、自分なりに相手の出方を探っていると。前方上空に何やら黒い物体が見えた。


 「あれか」


 『真田』はリアルタイムに送られてくる情報と自分が得た情報を照らし合わせて、前方を飛んでいる黒い物体は飛行部隊であると、そう結論づけた。

 『真田』はアウクシリアの推進力を弱めながら、逆噴射を強めて減速し始めた。

走っている車を急ブレーキをかけて完全に停止するまでの制動距離のように、アウクシリアも直ぐには停止せずにある程度の距離を移動したら空中で完全に停止した。

 停止した高度はアウクシリアのディスプレイには高度300mと表示されていた。

アウクシリアの推進部は稼働しておらず、今は姿勢制御用の2つの噴射口から透明な光の粒子が小雨のように地面に向かって放たれていた。


 「(無駄だと思うが、これの用意はしておかないとな)」


 『真田』はノーシェ・バッカスを発動させると、専用の亜空間からラッパに似た物を取り出した。

 それは取っ手が灰色で胴体が白色の小型の拡声器だった。

 『真田』が日本に居た時、訪れたある町で偶々やっていた体育祭で司会進行役の男性が使っているのを見て、面白そうだなと思い。ネットカフェで販売店を調べて20,000円台のを買ったのは良いが。ふと冷静になって、使う場所が無いと気付き、そのまま専用の亜空間に仕舞い込んだままの物だった。

 まさかここで使う事となるとは思ってもみなかった『真田』は、人生とはままならないものだと苦笑するしかなかった。

 少しばかり空中で停止ていると、此方に近付いてくる飛行部隊を『真田』の瞳は捉えた。

 近付いて来たのは、先行している第一連隊だった。

 第一連隊は指揮官であるアイヴァンが率いるエイス部隊を先頭に、縦二列に並んで敵が居ないか険しい目で前方を注視しながら、多数の赤い軍旗を靡かせて進軍していた。

 アイヴァンは魔力を帯びた金属製の竜を模った青い兜と各所に装飾が施されている全身鎧を着ていた。

 総司令官のフェルデンよりも一回り若いが、卓越した戦術眼と並み居る敵を蹴散らす勇猛果敢さを持ち合わせており、フェルデンから厚く信頼され、今回の作戦の先陣を任せられていた。

 フェルデンはゆくゆくはアイヴァンに自分の席を譲ろうと、考えているほどだ。

 アイヴァンが乗っている少し暗い緑色のワイバーンも歴戦の猛者だった。初めて乗った時から変わっておらず、アイヴァンが参戦した数々の戦に必ず参加していた。その時についたものなのか、顔や胴体には傷が何か所か走っていた。

 エイス部隊を始めとして他の部隊も簡略化であるが、アイヴァン同様に竜を模った青い兜と各所に装飾が施されている全身鎧を着ていた。相当な重量がある筈なのだが、グリフォン達は重さをものとはせずに、悠々と飛んでいた。

 第一連隊との距離が効果範囲ギリギリに届くであろうと思われる所で、『真田』は拡声器のスイッチをオンにした。

 『真田』はマイクロホンに口を近づけて、言葉がどもら無いようにほんの少しだけ隙間を開けて、口を開いた。


 「あーあー。此方サガムに所属している者だ。進軍中の部隊。直ちに停止し、進路を変更せよ」


 拡声器を通しての『真田』の声は、事務的で何の感情も無く、まるでカセットテープに録音した声を再生しているようなものだった。

 いきなり聞こえて来た大声に第一連隊は軽い動揺を見せたが、アイヴァンの鋭い大声でそれもすぐに持ち直し、進軍を再開をした。

 『真田』は予想の範囲だったのか、特に慌てる様子も無く再度拡声器のスイッチをオンにした。


 「貴軍はサガムの領空に接近しつつある。速やかに進路を変更されたし。‥‥‥繰り返す。貴軍はサガムの領空に接近しつつある。速やかに進路を変更されたし」


 『真田』が近付いてくる第一連隊に何度も警告を飛ばしているが、効果は無く。第一連隊が進軍のスピードが緩める事は無かった。

 『真田』は少しの苛立ちを覚えて、軽く舌打ちをした。


 「(やはりこれぐらいの事じゃ、帰ってはくれんか。‥‥‥ならば嫌がらせのようにやってみるか)」


 『真田』はアウクシリアを第一連隊の頭上に向けて発進した。

 第一連隊から右斜め45度の位置につくと、拡声器のスイッチをオンにした。


 「貴軍はサガムの領空に接近しつつある。これよりは当機の指示に従え。‥‥‥繰り返す。貴軍はサガムの領空に接近しつつある。これよりは当機の指示に従え」


 『真田』は第一連隊の頭上を大きく旋回しながら、同じ内容の警告を何度も飛ばしているが、先程と同様に効果は無く。第一連隊は『真田』を気にする事無く、野営予定地へと向かっていた。

 『真田』が微妙に内容を変えながら何度目とも知れない警告を発した時、グリフォンの頭上1mの所に、二重の円の中心に五芒星と外円と内円の間に見た事の無い大きな文字が描かれている半透明の魔法陣が出現した。

 真田が一瞬、出現した魔法陣に気を取られていると。「破壊の炎よ。悪しき者を打ち砕け。ファイア・ブレネン!!」の言葉と共に、魔法陣の中心から岩石程の炎の塊が、真っ直ぐに『真田』に迫って来ていた。


 「うおっ!!??」


 逸早く気付いた『真田』は、身体ごとアウクシリアを素早く右に反転させて、炎の塊を回避した。

 『真田』はまた撃たれるのは厄介だと、かつ進軍の邪魔になるように第一連隊の進路上に距離を取って止まった。

 戦争という非日常を差し引いても、第一連隊の考えられない異常行動に『真田』は開いた口が塞がらなかった。

 アイヴァンはルーチンワークをこなすような冷たさで実力行使で排除しようと、振り上げた右腕が振り落した。第一連隊から十数体のグリフォンやワイバーンが、呆けている『真田』へと向かっていた。


 「折角、平和的に解決をしようとしたのにな。残念だ」


 事態がこの様な事になって心を痛めているように聞こえるが、『真田』の表情は遊園地で次のアトラクションを楽しみにしている子供のような満面の笑みを浮かべていた。

 『真田』が言い終わると同時に、アウクシリアの前方に直径100mもあるような半透明の魔法陣が、第一連隊に向かって展開された。

 壁と思わせる巨大な魔法陣は、六芒星を中心に小さな魔法陣が内円との隙間を埋められており、外円と内円の間には小さな魔法陣が整然と並べられ、その周囲と円に沿ってを見た事が無い文字が隙間なく描かれていた。

 向かって来ている飛行部隊の騎手達は、巨大な魔法陣に一瞬たじろぐが直ぐに元の険しい表情となり、全速力で『真田』へと駆けていた。

 『真田』は高速で向かって来ている飛行部隊を、大好物な食べ物を前にした子供のような楽しげな口調で。


 「喰らいな。かつて堕落した古の文明を滅ぼした。神の雷を!!」


 その瞬間、巨大な魔法陣の中心部から中性子レベルで物体を破壊する、前に警備隊のライが放った雷系の中級魔法の『サンダー・ランス』とは根本から比べ物にはならない巨大な雷の柱が発射された。

 巨大な雷は耳をつんざくような雷鳴を轟かせながら、真っ直ぐと第一連隊へと光速の速さで向かっていた。

 迫りくる光の壁に、パニックを起こし焦るアイヴァンは、指揮官として部下達に回避するように散開の指示を出そうとしたが、余計な知識が判断するのを邪魔して「さっ‥‥‥」と、言い切る前に光の渦へと飲み込まれた。

 アイヴァンが光の渦に飲み込まれたのを皮切りに、第一連隊は光の渦へと消えて行った。

 発射されて一秒にも満たない時間内に、第一連隊は『真田』へと向かって本隊から離れた複数の小隊の本隊から一番離れていた数人の隊員以外、光に飲まれて跡形も無くなった。

 自分達の理解を超えた光景に数人の隊員は心ここに在らずといったように呆然とした様子で、近くに居た筈の仲間や本隊の方を見ていた。

 いや、理解は出来ていた。

 理解してしまうと今危ういバランスで成り立っている心の均衡が、一気に崩れてしまいそうで、防御本能が働き現実の出来事の認識を阻害していた。

 だが、絶望的ともいえるこの光景が進行性の遅い病魔のように、彼等の心をゆっくりと侵食していた。

 数人の隊員達が心の許容量を超えてもうすぐ、地獄に叩き落されたかのような恐怖に(おのの)こうとした時。

 突然、強風が彼等を襲った。

 東から西や北から南へといった自然にできた強風では無く、360度全方位からある一点に向かって吹いていた。

 それは『真田』が放った巨大な雷『トレノテンペスト』の射線軸上にであった。

『トレノテンペスト』が消滅させたのは別に第一連隊だけでは無かった。射線軸上にあった窒素、酸素、、魔素等、生物が普段無意識に摂取している空気をも消滅させていた。

 上空300mとはいえ、地上とはほぼ変わらない酸素濃度の塊に大きく穴を開け、一時的な真空状態を作り上げていた。

 思い浮かべてほしい、真空状態でパックされていた袋を開けた瞬間どうなるのか。

 開けた瞬間、袋は気圧の変化に耐え切れず、周囲の気圧と同じになるように開いた口から空気を吸い込む。


 それが、神樹カドモニアよりも一回り小さいとはいえ。大挙を為していた第一連隊を一瞬にして消滅させた雷が空気を消滅させながら通過したのだ。

 それがどのような事を引き起こすのは、明白だった・

 一時的に真空状態となった『トレノテンペスト』の射線軸上の空間は元に戻ろうとする力が働き、周囲の空気をそこにある物体ごと強引に吸収し始めたのだ。

不意の出来事に隊員達は態勢が取れず、掃除機が床に落ちている塵を吸い込むようになされるがままに射線軸上に集めれて、ある者は強風にその身を翻弄され。ある者達は運悪く衝突してそのまま地面に落下した。

 この現象を知っていた『真田』は、事前にアウクシリアの逆噴射を利用して、事無き事を得た。

 強風も収まり、さっきまでの嘘だったかのような元の穏やかな気流に戻った。

態勢を立て直した隊員達はお互いの無事を確認していた。

 そして、不敵な笑みを浮かべている『真田』の姿を見た。

 隊員達の表情には当初あった余裕というものが無く、あるのはこの様な事態を引き起こした『真田』への恐怖で彩られ、全身を生まれたばかりの仔馬のようにガクガクと手綱を小刻みに震わせていた。

 誰一人とも逃げ出そうとしないのは、恐怖のあまり逃げ出す事すらできないのか。自分達がテラン王国軍の精鋭であるというプライドが邪魔して、逃げる事を選ぼうとしていないのか。はたまたその両方なのか。

 それは神ならぬ真田には分からなかった。

 一向に逃げだそうとしない隊員達に、業を煮やしたのか真田はトランプゲームのディーラーが机の上にカードを並べるように肩の高さの位置で右手を動かすと、何も無かった前方に人数分の半透明の魔法陣が出現した。

 それを見た隊員達は『ヒィッ!!』と、涙目で短い悲鳴を上げた。

 展開された複数の魔法陣は不気味な光を放ちながら、其々の目標に向いていた。

 魔法陣がその威力を見せ付けようとした時、1人の隊員が「うわぁぁぁ!!!」と、泣きじゃくる子供のような顔をして、その身に宿す絶望を噴出するかのような泣き声をあげながら、乗っているグリフォンを空中を滑るような速さで第三連隊、第二連隊が居る後方に向かわせていた。

 その逃げ出した隊員の行動が呼び水となり。連鎖反応を起こして見ていた他の隊員達も我先にと後方へと逃げて行った。

 逃げ出した第一連隊の隊員達が見えなくなると、『真田』は、パチンッ!!と、指を鳴らした。

 不気味な光を放っていた半透明の魔法陣は、光を収束させていくと同時に太陽に当たった霧のように霧散した。

 『真田』は第一連隊がいた場所を少し悲しげな瞳で見ていたが、それもすぐに感情の奥に引っ込み、何の感情も映し出さない無機質な瞳に変わった。

 『真田』はアウクシリアを180度転換させると、もうこの場所には用は無いと言わんばかりに音の40%の速さで、アシュリーが待つ森と草原の境界線へと戻って行った。


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