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第65話 【システム・ロールバック】と量子AI。世界の理を司る女神の『マッチポンプ・ビジネス』を完全論破

創紀プラットフォームの【オープンソース化】とAPIの解放により、大陸全土はかつてないスピードで豊かになっていた。

飢餓は消え、病は癒え、人々は争う理由を失い、世界は完全な平和と最適化のサイクルに入ったかに見えた。

だが、人類が自らの手で「究極の幸福」をデザインし始めたその時。

世界の根幹システム(最深部)が、ついに異常なアラートを発した。

「レクト理事長! 大陸全域の空に、凄まじい高エネルギーの亀裂クラックが発生しています! これは魔力ではありません……世界そのものの【管理者権限(ルート権限)】による干渉です!」

システム管理アシスタントのミレナが、理事長室のモニター前で悲鳴を上げた。

空がガラスのように砕け、そこから神々しい光を放つ巨大な魔法陣が現れる。そして、純白のドレスを纏った光の存在――この異世界を創造した女神・アイオーンが降臨した。

『愚かな人間たちよ。やりすぎましたね』

女神の声は、大陸中のすべての人々の脳内に直接響き渡った。

『私が設定した「魔王と勇者の戦い」も、「身分差による理不尽」も、すべてお前たちがその小賢しい「システム」とやらで解決してしまった。そのせいで、私の天界サーバーに送られてくる【祈りのエネルギー】が枯渇してしまいました!』

「祈りのエネルギー、だと?」

俺は理事長室のバルコニーに出て、空に浮かぶ女神を見上げた。

『そうです! 人間は絶望し、苦しみ、悲劇に見舞われて初めて、神に「どうか助けてください」と切実な祈り(トラフィック)を送るのです! お前たちが完全に安全で豊かな街など作ってしまったせいで、誰も神に頼らなくなってしまったではありませんか!』

女神アイオーンは、美しくもヒステリックに叫んだ。

『このままでは神の存在意義が失われます! よって、私は世界の創造主たる管理者権限を行使し、この世界を数百年前に【システム・ロールバック(巻き戻し)】します! お前たちの文明をすべて破壊し、再び「神にすがるしかない暗黒時代」を再インストールするのです!』

「な、なんだと!? これまでの私たちの努力を、全部なかったことにする気ですか!」

財務顧問のアカザワが激昂する。

「対象者の積み上げたデータを初期化する、最悪の破壊行為クラッキング……絶対に許さない!」

特務支援チームのコイケが武器を構えるが、相手は物理法則すら操る「神」だ。剣や魔法が届く次元ではない。

だが、俺はコーヒーカップを優雅に傾け、鼻で笑った。

「わざと悲劇バグを起こして絶望させ、神の奇跡パッチを与えて感謝を搾取する。……典型的な【マッチポンプ】であり、最悪の『ベンダーロックイン(悪徳業者の囲い込み)』だな」

「レクト理事長、どうしますか!? ロールバックの進行度、すでに30%を超えています! 街の建物が、少しずつ中世のボロ小屋に退行ダウングレードし始めています!」

「慌てるな。旧時代のポンコツOS(神)が管理者権限を振りかざすなら、こっちは計算能力スペックの暴力でその権限を上書き(オーバーライド)するだけだ」

俺はメインコンソールを最大出力で展開した。

「大陸中の全デバイスのリソースを並列接続。さらに、俺たちが極秘で組み上げていた【量子魔導AI(クォンタム・マナ・AI)】を起動する」

ピィンッ!

「女神アイオーン。あんたのロールバックの魔法式ソースコードは、俺の量子AIが『1秒間に数京回』の速度で解析し、リアルタイムで【逆位相のパッチ】を当てて無効化している」

『な、なななっ……!? 私が紡ぐ神の奇跡コードが、発生した端から書き換えられていく!? ば、馬鹿な! 人間の作った板切れが、神の演算能力を超えるはずが……!』

「超えるさ。あんたのシステムは数千年間、アップデートを怠ったレガシー(遺物)だからな」

ロールバックの光は完全に消滅し、スマートシティの輝きが再び世界を照らした。

『ああっ……! 私の、私の世界が……! これでは祈りのエネルギーが集まらず、私は消滅してしまいます!』

女神が空中で涙を流し、膝を抱えた。

「泣くほどのことじゃない。あんたの『祈りの集めビジネスモデル』が間違っていただけだ」

俺は空中に、新たなプラットフォームのダッシュボードを投影した。

「絶望から生まれる祈りは、確かに瞬間的な熱量は高い。だが、それは対象者を不幸にする【焼畑農業】だ。俺たちが提供するのは、持続可能でハッピーな【サブスクリプション(継続課金)型の祈り】だ」

「さ、さぶすく……?」

「俺の構築した『創紀プラットフォーム』のAPIの一つとして、あんたの天界サーバーを接続(連携)してやった。見てみろ」

女神がダッシュボードを見ると、そこには見たこともない凄まじい勢いで、ゲージが天文学的な数値へと跳ね上がっていく光景が映し出されていた。

『こ、これは!? 信じられないほどの膨大なエネルギーが、休むことなく流れ込んでくる!?』

「人間が『今日のご飯が美味しい』『仕事が楽しい』『友達と笑い合えた』と感じるたびに、その【日常の感謝と喜びのデータ】が、自動的に少量の祈りエネルギーに変換されて天界にアップロードされる仕組み(行動経済学のナッジ)を組み込んだんだ」

「悲劇による『1回1万ポイント』の重い祈り」ではなく、「日常の幸せによる『1回1ポイント』の軽い感謝」を、大陸中の数億人から毎日、毎秒、自動で収集する究極の塵積ちりつもシステム。

『あ、あああぁぁっ……! なんてピュアで、温かくて、高品質なエネルギー……! 絶望の祈りなんて泥水みたいに感じます! しかも何もしなくても勝手に入ってくる不労所得オートスケール……!』

女神アイオーンは恍惚とした表情を浮かべ、完全に俺のシステム(サブスク)の虜になっていた。

「どうだ? もうロールバックなんて面倒なことをして、人間に嫌われる必要はない。あんたは俺たちのシステムの【名誉マスコットキャラクター】として、平和な世界を見守ってくれていればいい」

『は、はいぃぃっ! レクト様! 私、日本創紀学園の専属女神として、一生あなたについていきますぅぅっ!』

圧倒的な力を持つ「世界の意志(神)」すらも、力でねじ伏せるのではなく、より優れたビジネスモデル(Win-Winの提案)によって取り込んでしまった。

「レクト理事長……。ついに、神様までコンサルティングして(論破して)システムに組み込んでしまうとは……」

アカザワが呆れを通り越して、深い敬意の溜め息をついた。

「当然だ。世界のルールが間違っているなら、神ごとアップデートしてやるのが俺たちの伴走支援だからな」

いよいよ、世界を縛っていた「神のルール」すらも書き換えた日本創紀学園。

大陸全土が真の自由を手にする【最終回(第70話)】まで、残りわずか5話。

俺たちの歩みは、もう誰にも、神にすら止めることはできない。

キャラクター・プロフィール

レクト

役割:主人公(日本創紀学園・理事長)

状況:世界の創造主(女神)による強引なロールバック(巻き戻し)に対し、【量子AI】による圧倒的演算力で対抗。絶望を搾取する神の旧式ビジネスモデルを否定し、日常の幸せから自動で祈りを集める【サブスクリプション型】のシステムを提案。神様を事実上の配下マスコットにしてしまった。

アイオーン(New)

役割:異世界の女神・世界の管理者(コンサル完了)

状況:人間が自立してしまったことで祈りが減り、世界を暗黒時代にリセットしようとした。しかしレクトの提案した「感謝の自動収集システム(不労所得)」の魅力に完全敗北し、今では日本創紀学園の熱烈なファン(システム依存症)になっている。

アカザワ

役割:財務顧問

状況:「神様すらもWin-Winの契約で丸め込む」という究極のM&A(神の買収)を目の当たりにし、レクトへの忠誠心をさらにカンストさせた。

ミレナ

役割:システム管理アシスタント

状況:神のシステムへのハッキングと量子AIの運用を無事にこなし、アシスタントとしてのレベルが人間を完全に超越(特異点到達)しつつある。

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