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第23話 情報戦と【Nコード】。謎の天才作家『八咫日本』の誕生

4月20日の中央監査局による【内部指導】を、完璧なAI生成書類で完全論破した俺たち。

【心と暮らし総合協会】の基盤は、もはや王国の王族すら手出しできないほど盤石なものとなった。

「理事長。物理的な防衛と事務的な基盤は完璧です。ですが、次なる帝国の手は【情報戦】になるかと」

理事長室で、財務顧問のアカザワが推測を述べる。

「情報戦?」

「はい。帝国は我々を武力で落とせないと悟れば、今度は『学園は悪魔の巣窟だ』といったデマやプロパガンダを大陸中に流布し、我々を孤立させるはずです」

なるほど、確かに物理的な【ファイアウォール】では、人の口に上る噂までは防げない。

「なら、こっちから先に、大陸中の民衆の【心】を掴むエンターテインメントをばら撒いてやるか」

俺は空中にシステム画面を展開し、新たなプラットフォームの開発を始めた。

「エンターテインメント、ですか? 劇団でも立ち上げるおつもりで?」

「いや、もっと効率的で、無限に拡散する最強の娯楽だ。名付けて【Nコード(ネットワーク・コード)】配信システム」

俺は、学園の生徒たちに配っているタブレット端末の通信網を、大陸全土の水晶板や魔道具に【間借り(ハッキング)】して接続した。

「これを使って、大陸中の誰もが無料で読める『娯楽小説』を定期配信する。内容は、痛快な成り上がりと、理不尽な権力者への【ざまぁ】展開だ」

「なっ……!? 活字の娯楽を、全大陸に無料配信……!? しかし、それだけの物語を誰が執筆するのですか!?」

「俺の【生成AI】にプロットを食わせて量産させるのもいいが、一番肝心な『熱』は、俺自身が書き上げる」

俺は地球のWeb小説のノウハウ――テンポの良さ、圧倒的なカタルシス、次が読みたくなる引きの強さ――をすべて注ぎ込んだ。

「とはいえ、俺の名前で出すと角が立つ。ここは一つ、正体不明の覆面作家としてデビューするとしよう」

俺は著者名の入力欄に、一つのペンネームを打ち込んだ。

【著者名:八咫日本ヤタ・ヤマト

「八咫日本……! またしても、神の国を思わせる壮大な響きのお名前……!」

アリシア王女が、俺の入力したペンネームを見てうっとりと両手を組む。

こうして、謎の天才作家【八咫日本】による、第一作目のWeb小説が大陸中に向けて一斉送信された。

数日後。

大陸全土は、かつてない熱狂の渦に包まれていた。

「おい見たか! 今日の【Nコード】の更新! 主人公がついに悪徳領主を追放したぞ!」

「最高だ! 明日が待ちきれない! この『八咫日本』という作家は、我々平民の心の痛みを完全に理解してくれている!」

王国の街角でも、辺境の村でも、人々は仕事終わりに魔導具の前に群がり、八咫日本の小説に夢中になっていた。

そして、その熱狂は当然、敵国であるガルディア帝国の内部にまで深く浸透していた。

【一方その頃】

ガルディア帝国の厳重な情報統制室。

「だ、ダメです! 王国から発信されている謎の通信波【Nコード】を遮断できません!」

帝国の魔導技術者たちが、コンソールを前に悲鳴を上げていた。

「ええい、役立たずどもめ! たかが小説の電波一つ防げないのか!」

情報大臣が激怒して技術者を蹴り飛ばす。

「我が帝国の市民たちが、こぞってあの『八咫日本』などという反逆思想の小説を読んでいるのだぞ! 労働意欲は低下し、皇帝陛下への忠誠心まで揺らいでいる!」

「し、しかし大臣! この通信波は、我々の魔法システムの根幹バグをすり抜けて直接脳内に……!」

「言い訳は聞かん! ただちに帝国内の全魔導具を破壊してでも――」

大臣が怒鳴り散らしていた、その時。

バタンッ! と情報統制室の重厚な扉が開き、一人の人物が駆け込んできた。

帝国の最高戦力の一角であり、冷酷無比な将軍として知られる女傑、レオンティーナだった。

「れ、レオンティーナ将軍! ちょうどよかった、この忌々しい通信装置をあなたの剣で――」

大臣が命令しようとしたが、レオンティーナ将軍の様子がおかしい。

彼女の目は真っ赤に充血し、手には帝国軍の支給品である通信魔導具を握りしめて、ワナワナと震えていた。

「将軍……? いかがなされました?」

レオンティーナは、涙声で絶叫した。

「大臣! なぜだ! なぜ今日の【Nコード】の更新が止まっているのだ!」

「……は?」

「昨日の第42話で、主人公が絶体絶命のピンチに陥ったところで『次回へ続く』になったのだぞ! 気になって気になって、夜も眠れんのだ!」

帝国最強の将軍は、完全に八咫日本の小説の【熱狂的読者ファン】へと成り下がっていた。

「しょ、将軍!? あなたまであの反逆小説に毒されて……!」

「黙れ! 『八咫日本』先生の物語は、弱肉強食しか知らなかった私の心に、本当の『伴走』の温かさを教えてくれたのだ!」

レオンティーナは剣を抜き、あろうことか情報大臣の首元に突きつけた。

「今すぐ通信規制を解除し、最新話を読ませろ! さもなくば、私が自ら国境を越え、日本創紀学園へ亡命するぞ!」

「ひぃぃぃぃぃっ!?」

俺が軽い暇つぶしと情報戦のつもりで放った【Nコード】小説。

それは、帝国の最高幹部の寝返りすら誘発する、物理兵器よりも恐ろしい『文化侵略バグ』へと変貌していたのだ。

【キャラクター・プロフィール】

【レクト(ペンネーム:八咫日本)】

役割:主人公(日本創紀学園・理事長 / 天才作家)

状況:帝国のプロパガンダを未然に防ぐため、【Nコード】配信システムを開発。覆面作家『八咫日本ヤタ・ヤマト』として執筆した小説が大陸中で社会現象となり、文化の力で敵国を内側から崩壊させ始めている。

【レオンティーナ】(New)

役割:帝国軍将軍

年齢:24歳

性格:冷酷無比な氷の将軍と呼ばれていたが、八咫日本の小説にドハマりし、更新が気になりすぎて情緒不安定になっている。続きを読むためなら祖国を裏切る覚悟を固めた、重度の活字中毒者。

【帝国情報大臣】

役割:ざまぁ対象

状況:暗殺部隊の失敗に続き、今度は自国の市民と軍のトップが「敵国のWeb小説」のファンになってしまうという地獄のような状況に直面。ストレスで胃に大穴が開きかけている。

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