表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/17

第11話 王女からの依頼は【人材流出】の阻止。そして神々のラーメン

第一王女アリシアからの、突然の取引の申し出。

俺はシステム画面を操作し、【ファイアウォール】の一部にゲートを開いた。

「とりあえず、王女様とその護衛一人だけなら中に入っていいぞ」

「……感謝いたします」

アリシア王女と、屈強な初老の騎士団長が、おずおずと結界の中へと足を踏み入れた。

彼らは、死の魔境のド真ん中に広がる青々とした農園や、謎の現代建築マイホームを見て、絶句している。

「こ、これは……なんという神聖なマナに満ちた土地……」

「姫様、お気をつけください。ここにいる者たち、精霊の王や神狼族など、規格外の存在ばかりです……!」

騎士団長が冷や汗を流しながら、シエルやリリアを警戒している。

俺は彼らを庭のテラス席に案内し、椅子を勧めた。

「で、国を救うための取引ってなんだ? また魔王でも復活したのか?」

俺が尋ねると、アリシアは真剣な面持ちで首を横に振った。

「いえ、物理的な侵略ではありません。現在、我が王国が直面している最大の危機は……深刻な【人材流出(頭脳流出)】なのです」

「人材流出?」

予想外の言葉に、俺は少し前のめりになった。

「はい。隣国の巨大な帝国が、圧倒的な資金力で我が国の優秀な魔法使いや職人を次々と引き抜いているのです」

「このままでは、数年以内に王国の技術力と防衛力は空っぽになり、国が内側から崩壊してしまいます」

アリシアの瞳には、切実な焦りが浮かんでいた。

「そこで、この規格外の力を持つあなた様にお願いしたいのです」

「この絶対安全な領域に、我が王国だけのための【最高峰の学園】を創設していただけないでしょうか」

アリシアは立ち上がり、深く頭を下げた。

「他国への人材流出を防ぐため、王国の民にのみ門戸を開き、王国のために力を尽くす真のエリートを育成する場が必要なのです」

なるほど。

大陸全土や他国に向けたものではなく、あくまで【自国の利益と発展のみ】を目的とした教育機関の設立。

「……面白いな。それ、俺の領地で作ってやってもいいぞ」

「ほ、本当ですか!?」

アリシアが顔をパッと輝かせる。

俺の【バグ】スキルを使えば、チート級の訓練施設や学習環境をワンクリックで作るのは簡単だ。

それに、若い才能を集めて理想の学園を作るというのは、このスローライフのいい暇つぶしになりそうだった。

「ただし、条件がある。学園の運営に関して、王国からの干渉は一切受け付けない」

「俺は誰かの部下になるつもりはないし、貴族だろうが平民だろうが、ここでは対等な【伴走者】として扱う。それでもいいか?」

「もちろんです! あなた様のような御方に、身分という小さな枠組みを押し付けるつもりは毛頭ありません!」

交渉は成立だ。

「よし、難しい話はここまでにして、とりあえず飯にしよう」

俺は空中にシステム画面を展開した。

大切なお客さんには、俺の最高傑作の料理を振る舞うとしよう。

【Object_Create: Ultimate_Rich_Ramen(究極の濃厚豚骨醤油ラーメン)】

テーブルの上に光の粒子が集まり、二つの巨大な丼が出現した。

「こ、これは……? 独特の、しかし強烈に食欲をそそる香りが……!」

「麺料理のようですが……スープが琥珀色に輝き、表面には未知の脂が浮いています……!」

アリシアと騎士団長が、初めて見るラーメンを前にごくりと喉を鳴らす。

「俺の故郷の料理だよ。熱いうちに食べてみてくれ」

二人は恐る恐る箸(システムで使いやすく翻訳済みだ)を手に取り、麺をすすった。

ズルルッ。

「……ッ!?」

二人の目が、限界まで見開かれた。

「な、なんという破壊力……! 濃厚な豚の旨味と、醤油のキレが完璧に融合しています!」

「この太くてモチモチとした麺が、スープの魔力を見事に絡め取っている……! 上に乗っている分厚いチャーシューも、口の中でホロホロと溶けましたぞ!」

騎士団長に至っては、涙を流しながらスープを飲み干している。

「美味しい……こんなに深く、心を満たしてくれる食べ物がこの世にあったなんて……!」

アリシア王女も、王族の作法など完全に忘れ去り、夢中で麺をすすり続けていた。

「お気に召したようで何よりだ。これからは、学園の食堂でもこれを出せるようにしておくよ」

「……っ! この神の料理が毎日食べられる学園……! 間違いなく、誰も帝国などに行こうとは思わなくなります!」

アリシアが力強く断言する。

「レクト様……! どうか私も、その学園の第一期生として入学させてください! いや、させてくださいお願いします!」

「姫様!? あなたには王位継承権が……いや、しかしこのラーメンのためならそれもやむなし……!」

どうやら、俺の作ったラーメンの破壊力は、国家の危機すら忘れさせるほどの【バグ】だったらしい。

こうして、俺のチート領地の中に、王国最高峰の【創紀学園】を建設する巨大プロジェクトが幕を開けたのだった。

【キャラクター・プロフィール】

【レクト】

役割:主人公

状況:アリシアからの依頼を受け、領地内に自国ファーストの【最高峰の学園】を創設することを決定。名刺代わりに振る舞った「濃厚豚骨醤油ラーメン」で、王族の胃袋を完全に掌握した。

【アリシア】

役割:第一王女

年齢:17歳

性格:責任感が強く、国を憂う真面目な王女。しかし、レクトのラーメンの虜になり、王族の地位を放り出してでも学園に入学したいと言い出すポンコツな一面を見せ始める。

【ガルド】(New)

役割:王国騎士団長

年齢:52歳

性格:厳格で忠義に厚い歴戦の騎士。魔境の異常な環境と精霊たちにビビり散らしていたが、ラーメンのあまりの美味さに涙を流して感動し、レクトを食の神として崇め始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ