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「あっ、久しぶりです……」
本庄君が挨拶をする。目の前の女性と会ったからだろう。緊張しているように見える。
「大きくなったね〜。でもすぐ分かったよ」
タイミングが良すぎてもしかして先程、本庄君の話に出た女性なんじゃないかと思ってしまうがまさかそんな偶然ある訳無い。そう思って本庄君の顔を見てみるが明らかに何時もと様子が違う。
「お姉さんはかなり大人になって……」
照れているのか頭をポリポリ掻きながらお姉さんの顔を見れていないようだ。うん、間違いなく僕邪魔だ。
「あっ、じゃあ、僕はこれで」
僕は空気を読んで手を上げて「へへっ、あっしはこのへんで」と言わんばかりにこの場所を離れようとする。
「あっ、ごめん。お友だちの邪魔しちゃったよね」
お姉さんが別れようとするので僕は慌てて手をブンブン降る。
「いえ、この後用があるので。積もる話もあるでしょうし」
お、僕にしてはかなり気を使えているのではないか?本庄君の方を見ると悪いとごめんと手でジェスチャーをしている。僕は大丈夫だ。問題ないと頭を下げてその場を離れた。
その後、僕は駅まで歩いてきた。本庄君上手くやっていると良いけど。というか今週は特に色々あったな。明日は休みだし久しぶりにゆっくりしようかな。そんな事を考えているとスマホがバイブする。何だろうと画面を見てみると川口さんからのメッセージだった。
「やっほ〜、本庄君の件どうなった?」
入間さんから連絡が来るかなと考えていたが川口さんか。まあ彼女も結構興味ありそうではあった。僕は何処まで伝えていいものか悩む。本庄君も僕だから話してくれたんだろうし川口さんには悪いけどそこまで言う必要は無いだろう。
「いや、僕も聞き出せなかったよ」
「……ホントに〜?」
目の前にいる訳ではないのに鋭いな。女の勘ってやつなのだろうか。それともただ単にカマをかけているだけか。
「まあ、本庄君にも秘密にしたいことがあるんじゃないかな」
「……まあ、それなら私には伝えられないか」
川口さんも気にはなっているものの、コチラの事情を組んでくれたみたいだ。助かる。
「じゃあ、もう一個の要件!!明日、私の用事に付き合ってくれない?」
「用事って?」
「ちょっとテーマパークというか……、なんというか行きたい所があって〜」
「遊園地みたいな?あんまりお金無いんだけど大丈夫かな?」
正直、最近遊ぶことも多かったのでお小遣いが心許ない。遊園地ってお金かかるし申し訳ないけど断るしかないかもなあなどと考えてスマホをポケットにしまい駅のホームにまで移動する。再びスマホの画面を見ると返事が返ってきていた。
「大丈夫!!優待券があるからチケット代はかからないの。移動費と昼食代くらいあれば平気」
「それなら行こうかな」
移動費と食事代くらいならどうにかなりそうだ。僕は了承の返事をして、電車に乗りながら明日の予定を話し合った。他の人は誘わないのと聞いたら優待券は二枚しか無いとのことらしい。僕で良いの?と訪ねたら何故か怒られてしまった。
翌日、池袋の駅前で合流することになった。ただ、都会の駅で土曜日ということもまり多くの人で賑わっている。僕達のように待ち合わせしている人も多い。スマホを見るともう待ち合わせの場所にいるとの連絡が来ている。
「ええ、何処にいるんだろ」
そこで男性が誰かを囲っている集団を見つける。僕は嫌な予感がしてそちらを見ると中心には川口さんがいた。もしかしてだけどナンパというやつか。ラブコメではやたら見かけるけど存在していたのか。川口さんの顔を見るとどう見ても困惑しているようだ。僕は勇気を出してその集団の輪に入る。




