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「え、僕なんか変なこと言った?」
「お前はそういう奴だったな……」
本庄君は頭を抱えて俯いてしまった。また僕は変なことを言ってしまったのだろうか。
「まあ良いか……。で告白を保留って何?」
「え〜と、恥ずかしいからあまり詳細には話せないと言いますか……」
正しくは越谷さんが僕に対して惚れさせるといった宣言をされた話なのだが彼女のプライドとしても僕としてもあまり話したくはない。
「う〜ん、まあそうか。そしたら俺もあんまり言いたくねえなあ」
「ぐっ、そうだよね」
何故か駆け引きが始まってしまっている。ふと店内を見ると他のテーブルのマダム達が微笑ましそうな顔でこちらを見ている。は、恥ずかしい。
「まあ、でもお前にそこまで話させちゃ悪いか」
本庄君は仕方ねえと腕を組んで話をし始める。
「俺が小さい頃、近所のお姉さんに遊んでもらってたんだ」
僕は黙って聞く。アイスコーヒーのアイスが溶けてカランと氷がグラスに当たる音がする。
「俺が小学校低学年でお姉さんは中学生くらいかな?家が近いってこともあって良くしてくれたんだ」
「なるほど」
「俺に優しくしてくれる年上の女の人だ。好きになるのも仕方ないって今考えればそう思う」
小さい頃の本庄君の大切な思い出なのだろう。大事そうに話しているのが分かる。
「でも俺が高学年になる頃にお姉さんが引っ越しちゃったな。俺はその時携帯なんてものは持ってなかったし連絡も出来ずって感じだな」
「お母さんに聞けば連絡先は分かるんじゃないかな?」
僕は少し悲しそうな本庄君が見ていられず提案する。しかしそれを横に振る。
「もう何年も前の事だ電話番号変わってるかもしれないし親同士でチャットアプリを登録するほどの仲でも無かったみたいだし」
彼は諦めてしまったんだ。いや、昔の事として今更動くのが嫌なのかもしれない。それに今、本庄君が高校生という事はその女性は二十代だ。恋人がいてもおかしくないのだろう。
「それが忘れられないってこと?」
「どうなんだろうな。正直思い出みたいな感じなんだ。そのお姉さんと付き合いたいって思ってるわけでもないしな」
嘘はついていないと感じる。だがそれが心からの本音なのかは僕には分からない。だがその思い出があるから今彼女を作る気がしないのではないかと思った。本庄君は優しいし運動も出来てルックスも良い。あまり把握している訳ではないが当然モテるがそういう関係になりたいと思っていないのかもしれない。
「でお前はどうなんだ?」
本庄君は自分は話したぞ。次はお前の番だと言わんばかりに尋ねてくる。僕は深呼吸をして息を整える。
「……越谷さんには話したんだけど。僕は過去の事がトラウマ。のようなもので恋人を作る気がしないというか。そんな資格があるのかって考えて……」
「なるほどな」
本庄君はまた腕を組んで何と言えば良いか考えているみたいだ。僕はその間にアイスコーヒーを飲む。時間が経っているからか氷が溶けて大分薄くなってしまっている。
「まあ、でも前にも言ったかもしれないけど、越谷さんの気持ちも考えてあげなきゃだろ」
「うん」
そうだ、彼女は僕に告白してくれた。それはきっと凄い勇気のいる事に違いない。僕は真剣に彼女の気持ちに答えなくてはならない。そこから僕達はお互い何を言おうか分からず黙って時が経つ。
「そろそろ帰るか」
本庄君がバッグを持って立ち上がる。僕もすぐに立ち上がり出口に向かう。レジで会計を済ませて外を出ると日が落ち始めていた。思っていたより長居してしまったようだ。その後、駅まで二人で並んで歩いた。
「それじゃあ、春日部。また週明け」
「うん、また」
駅について解散をしようと挨拶をする。お互いの最寄り駅が反対方向の為だ。その時だった。
「あれ、晃君じゃない?」
そこには二十歳くらいの女性が立っていた。




