誕生祝い(後)
曹灰長石は光に当てると、揺らめきながら虹色に輝く。その幻想的な輝きからオーロラ石と呼ぶ人もいる。
ステファニーが贈った物は磨く前の原石の様だが、それでも揺らめく光は美しい。
「ステフの説明によると、これはブランドン領で採れる『精霊石』を模した石なのですって。エディ様は精霊石をご存知ですか?」
「ああ、まあね。肌身離さず持っていると、精霊の加護が得られるって言い伝えがあるんだよ。本当かどうかはわからないけど。」
エドワードはそう言ってから曹灰長石を右手で持って光にかざし、ほぅっと安堵のため息をついた。
「これなら綺麗だし王族の誕生祝いとして贈っても十分だね。よかった。」
「もしかして君たち、ステファニーから変わった精霊石を贈られたのか?」
フレデリックが、エドワードとダイアナを交互に見ながら聞いた。
キャサリンも同じ事を考えていた。2人の動揺の仕方、きっとステフは誕生祝いにすごい石を贈ったに違いない。
「う〜ん。うちに贈られたのは、琥珀だったのだけどね。」
エドワードは苦笑いしながら答える。「中に大きなハチが入っていたんだよ。」
「蜂ですか? 虫の?」キャサリンは思わず口を挟んでしまった。
「そう、その蜂。ブランドン領では、蜂は実りをもたらす幸福な生き物だと言われるし、虫入りの琥珀が珍しいということも知っているけど。。。」
「蜂の顔が正面を向いていて、今にも襲いかかってきそうなの。かなり不気味なのよ。」
ダイアナも苦笑いという感じだ。
「彼女らしいといえば、彼女らしいか。」
フレデリックの言葉に、キャサリンも頷く。従僕のティムを振り回しながら元気にやっているステファニーの姿が容易に想像でき、キャサリンは自然と微笑んだ。




