想い
「殿下が、どんなお気持ちで、ステフを手放したか。。。熟考を重ねて、ステフのために自分の想いに蓋をして。。。全然簡単じゃないわ!!」
エミリーは、キャサリンの剣幕に後ずさりそうになる。
キャサリンは悔しかった。
フレデリック殿下の、ステフへの想いを、軽んじられたような気がした。
殿下は、ご自分のお気持ちを隠すのがとても上手だわ。ある人についてどう思っているか、好意を持っているのか、頼りにしているのか、疎んでいるのか。。。ちょっと見では、わからないわ。いつも飄々として、なんでも軽く飛び越えるように見えるもの。
王族の方がある人を疎んでいると周囲の人にわかってしまったら、その人は貴族社会で生きづらくなってしまう。だから、好きも嫌いも隠しているのでしょうね。
でも、殿下だって人ですもの、いろんな思いを持って当たり前よ。強い想いだって抱くわ。それを手放すのは、誰だって辛いはず。
「『貴族は政略結婚が当たり前』。確かにそうだと思います。でも夫婦となるのだから、お互いに慈しみ合うことが大切なのではないでしょうか?」
「ステフのためを1番に考えられる殿下だから、どなたと結婚することになっても、きっと守ってくださるでしょう。だから私は、もし殿下がお望みなら、殿下をお支えしたいと思ったのです!」
「殿下がどなたを婚約者に選んでも構わないけど、人の気持ちを勝手に判断するあなただけは、私は反対だわ!」
エミリーは、キャサリンに圧倒されて口をはさめずに聞いていた。が、ここで、はっ!とした。
「なんで、あなたが反対するのよ! 殿下の婚約について、あなたがどんな権限があるって言うのよ! あなたが反対しようとも、殿下が認めてくださればいいのよ。あなたには関係ないわ!」
キャサリンとエミリー。睨み合う2人に声がかかる。
「そうだな。私の婚約者は、私が決める。その通りだ。」
「「殿下!」」
現れたのは、フレデリック王子だった。




