舞踏会の準備
「ねえ、お姉さま、どう? 変?大丈夫?」
キャサリンが自室で、姉のダイアナに聞く。ダイアナは苦笑いで答える。
「あなた、さっきもその質問したわよ? 大丈夫よ、とても綺麗だわ。」
今日は王城舞踏会当日である。キャサリンは支度を終えて、最後の確認中だ。
ダイアナの隣で、キャサリンの母である侯爵夫人も苦笑している。
「キャシーはいつも落ち着いているから、そんな姿は初めて見たわ。」
そしてキャサリンをぐるりと1周すると、「大丈夫、完璧よ!」と言って、ウインクをした。
ダイアナがキャサリンに近づき、ドレスに軽く触れる。
「このドレス、フレデリック殿下が考えてくださったのでしょう? ウエストから裾へ広がるライン、すごく素敵ね。」
「本当に絶妙なバランスだわ。さすがフレデリック殿下ね。」
侯爵夫人も、ドレス生地の感触を確かめる。
キャサリンは正式な婚約者ではなく、成人もまだである。そのために装飾は少なく、ちょっと見た感じは地味に見える。しかし着てみると、動きに合わせて光が反射して優雅な印象になる。
「さあ、そろそろ馬車の準備ができたわ。侍女のメアリは、ダイアナに付き従って、何度も王城に行っているから、きっと頼りになるわよ。心配しないで、楽しんでいらっしゃい!」
侯爵夫人は晴れやかに言うと、満面の笑みで、キャサリンを送り出した。
馬車で王城に着くと、近衛騎士に案内され、キャサリンは控室に入った。
メアリがいれたお茶を飲むと、キャサリンも少し落ち着きを取り戻した。
「ありがとう。王城に慣れているメアリが一緒に来てくれて、心強いわね。」
メアリは静かに微笑む。
「このあとの事は知っている? 舞踏会が始まるのは6時だったよね?」
キャサリンは、ホールでの流れはフレデリック王子から説明を受けた。しかし、控室からいつ移動するのかは聞いていない。フレデリック王子が迎えに来てくれることになっている。
「去年までのダイアナ様の場合を考えますと、時間になるとホールの正面入り口が閉じられます。その後、王族がたが舞台脇の入り口から入場ですね。入り口近くまではご一緒いたしますよ。」
ここまで話すと、メアリは考える素振りをした。
「この部屋はホールから遠いので、早めに出たほうがいいかもしれませんね。」
「あら? ここは遠いの?」
王城の配置にそれほど詳しくないキャサリンは、この部屋がホールから遠いとは思っていなかった。
「ええ、この部屋のある西翼とホールとは、建物としては遠くないのですけどね。ホール入り口へは、回廊を歩いて、中庭をぐるっと回らないと行けません。去年は東翼の部屋をいただけたので、近くてよかったのですが。」
メアリは「お化粧直しをいたしますね。」と言って、道具を準備し始めた。




