図書館
キャサリンとスーザンが図書館の玄関に着いたとき、誰かが建物の中から出てくる気配がした。2人が端によけると、出てきたのはエドワードだった。
「あれ? キャサリンじゃないか。大きな荷物を持って、返却かい?」
「ええ。薬草学で使った図鑑と標本です。先生に頼まれちゃって。」
キャサリンは自分の図鑑と、スーザンが持つ標本を目で示す。
「図鑑はカウンターに渡せばいいけど、標本は屋根裏部屋の棚だね。」
エドワードの説明に、スーザンの顔が引きつる。
「屋根裏部屋じゃ時間がかかりそうね。今日の買い物は諦めるわ。」
「スーザンは先に帰っていいわよ。エミリー様に会わなければ、もう返し終わっていたはず。遅くなったのは、私のせいでもあるもの。」
キャサリンがニコリと微笑み、スーザンの標本に手を伸ばす。
「でも、、、」と言い淀むスーザンの手から、エドワードが標本を取り上げた。
「僕が君の代わりをするよ。」
図鑑を図書カウンターの係に渡し、キャサリンとエドワードは2人で階段を上る。
2階までは通常の本が並び、それなりに人も多い。3階は専門書や持ち出し禁止の古い本が置かれ、ほとんど人がいない。標本は3階の奥の小部屋、通称、屋根裏部屋に返却だ。
屋根裏部屋に入り、標本を棚に戻す。あまり使われないのだろう、埃がうっすらと積もっていた。
戻し終わると、エドワードは小声でキャサリン話しかけた。
「エミリー嬢となにかあったの?」
キャサリンも声をひそめて返す。
「廊下で話しかけられました。殿下と婚約したのかって。」
キャサリンから話を聞いたエドワードは眉をひそめたが、「その程度なら問題ないかな」と1人でうなずいた。
そして、いくつか確認をした後、2人が部屋を出ようとしたが、扉は全く動かない。2人は顔を見合わせた。
「もしかして、閉じ込められました?」
「そうだね、たぶん外から鍵をかけられたね。」
「図書館で閉じ込められるなんて、ちょうど一年前を思い出しますね。」
「あれは地下だったけどね。」
「誰かが、意図的に、私たちを閉じ込めたのでしょうか?」
「『私たちを』か『キャサリンを』かは、わからないなあ。」
エドワードは、キャサリンの質問に首を傾げた。
「なんにしても、まずいことになったなあ。。。」
エドワードはドアを叩きながら呟いた。




