慣れと変化
計画通り、夏休みの終わり頃にフレデリック王子とステファニーとの婚約解消が発表された。ステファニーはまだ頭を打ったケガの後遺症のため、夏休み後も領地で静養し、学校は休んでいる。
キャサリンは、ステファニーがいない学校生活に初めは寂しさを感じていたが、1ヶ月も経つ頃にはだいぶ慣れてきた。ステファニーからは10日に1度の頻度で手紙が届く。手紙には、魔の森で役に立つ花や草をみつけたこと、夜空に光る星を観察したことなどが書かれてあり、ステファニーが生き生きと過ごしていることが想像された。
フレデリック王子は婚約者がいなくなったため、さまざまな令嬢から、直接的にも間接的にもアプローチされているようだ。フレデリックと仲のいいエドワードは、「手紙や贈り物を殿下に渡して欲しい、と仲介を頼まれて困る」と珍しく愚痴をこぼしていた。
いつのまにか、11月になっていた。先週、フレデリック王子から「12月の王城舞踏会で着るドレスの準備をしたい」と言われ、王城を訪ねた。
「キャサリン、これから君の周りは騒がしくなるかもしれない。」
採寸を終え、キャサリンとフレデリック王子が、中庭に面したテラスでお茶を飲んでいる。
「私がドレスを贈る準備をしていることや、キャサリンが王城を訪れたことなどを、断片的に噂で流そうと思う。」
フレデリック王子の言葉を、キャサリンはしばらく考え、ようやく口を開いた。
「エミリー嬢の仲間を揺さぶるのですか?」
「君が私の婚約者候補の筆頭であると思われれば、私の婚約者になりたい者には、大変な不都合だ。きっと何か仕掛けてくると思う。迷惑だろうが、すまないね。」
「大丈夫ですよ、予想できたことですから。そういう面倒ごとも含めて、婚約の申し込みを引き受けたのですもの。今さら、文句は言いません。」
キャサリンはの口ぶりからは、感情はあまり読み取れない。怖がる様子も強がる様子もなく、自信を持っているのかもわからない。ただ、彼女ならなんとかなるかも?という安心感がした。




