提案
「ステファニーの想像通り、犯人が誰にせよ、次も何か仕掛けてくる可能性が高い。今回は事件にならずに済んだけど、次はどうなるかわからない。だから、こっちが先に手を打とうと思う。」
フレデリック王子は、ここで改めてステファニーを見てニヤリと笑った。
「ステファニー、君には記憶喪失になってもらう。」
「きおくそうしつ。。。?」
「うん、君が一時的にでも王都を離れるのが、いいと思うんだ。ただ、この時期に突然領地に戻るのは、あまりにも不自然だ。それこそ、良からぬ噂の元になりかねない。だけど、なにかしらの不測の事態が起きて領地に静養に行くことになれば、不自然ではなくなるだろう?」
なるほど、なんとなくわかった。来週末には学園パーティーがあるのに、それを欠席してまで王都を離れるなんて、普通ではないものね。でも記憶喪失になってしまったら、勉強どころではないし、領地に戻るのも自然だわ。そうやって私がいない間に、誰が犯人か探せばいいってわけね。さすがフレデリック様だわ。
でも、こんなに早い時期から領地に戻るなんて、夢のようだわ! 去年は見られなかった流星群も、王都より領地の方がよく観察できるし、ワクワクしてきちゃうわね。
ステファニーがいろいろと考えを巡らせていたところ、フレデリック王子の声で現実に引き戻された。
「それで記憶喪失になる原因だけど、木から落ちたっていうのはどうだい? ステファニーらしいだろう?」
「いえ、それはダメです!全然私らしくありません!」
ステファニーが即座に否定したことに、フレデリック王子が驚いて目をみはる。
「木から落ちるなんて、ありえません。 どんな木だって、落ちずに登れます!」
ステファニーの力説にフレデリック王子が苦笑する。
「まあ、そこは大目に見てくれないか。」
自分が木から落ちるなんて不名誉だけど仕方がない、とステファニーはなんとか自分を納得させた。
「それで、領地に戻った後は、どうしたらいいのでしょうか?」
「いろいろと問題が解決した後に、記憶が戻ったことにして、学校に復帰したらいいよ。そのままずっと領地にいるって手もあるけど。」
ずっと領地にいる? それはずいぶんと魅力的ね。そうなれば、夏だけでなく秋も冬も春も、一年中、魔の森に行けるわ。真っ赤に染まる紅葉の木々も、氷が張った池も、全部見てみたいわ! あっ、でも、、、
「領地にいたら、お妃教育ができなくなりませんか?」
ステファニーがおずおずと尋ねた。
その様子を見て、フレデリック王子は珍しく優しい目つきをして言った。
「そうだな、、、婚約については、、、解消しようか?」
「殿下!」
今まで一言も話さなかったエドワードが、とがめるようにフレデリック王子の言葉を遮った。
しかし、王子はエドワードに顔を向け、静かに首を振った。




