第二王子と第三王子の違い
ステファニーは学校の1階の廊下を歩いていた。階段を上がろうとしたところ、2階からエミリーが降りてきた。
「ブランドン侯爵令嬢、どいてくださらない? 廊下は右側を歩くのが基本でしてよ。それなのにあなたが左側に立っているから、2階から降りてくる人の行く手を塞いでいますよ。こんなことも言われないとわからないなんて、あなた、周りの人の迷惑を考えたことがあるのかしら?」
ステファニーにしては珍しく一言も話さずに、エミリーを見つめている。
「人のことをジロジロ見て、全く不躾でしょう。。。何か言ったらいかが?」
「あの、なんで私に話しかけるんですか?」ステファニーはエミリーに聞くと、
「あなたが、私の前にヌボーっと立っているからでしょ。」エミリーは呆れた声で言った。
「いえ、そうじゃなくて、なぜ、春から何度も声をかけてくるのかって聞きたいんです。去年までは一度もなかったのに、今週だけで3度もあります。その理由を知りたいんです。」
「あなた、貴族令嬢でしょう?質問が直球すぎよ。。。まあ、いいわ。教えてあげましょう。あなたがフレデリック殿下の婚約者だからよ。」エミリーがハッキリと告げるが、ステファニーには意味が理解できない。
「へ??? 私は3年前から殿下の婚約者ですけど。」
「ですから! 今まではフレデリック殿下は第三王子でしたでしょ。でも、第二王子のギルバート殿下が王家から離れることが公にされた。そうなるとフレデリック殿下は扱い的に第二王子と同じ。第二王子の婚約者にあなたは全く相応しくない。嫌味の一つも言いたくなるでしょ!」
「第三王子ならよくて、第二王子だと駄目? 何か違いがあるのでしょうか?」
「何を言っているの? 第二王子は王弟として政治の中枢で国王を支えるでしょ。妻の実家も王家との繋がりができるわ。でも第三王子は違う。成人して数年経ったら、国が管理する領地の中から小さなものを分けてもらうか、騎士として軍に入るか。どっちにしても国の政から離れることになる。両者には大きな違いがあるのよ。」エミリーは呆れを通り越したのか、丁寧に説明してくれる。
「妃だって、将来的には違いが出るの。第二王子の妃は王弟妃になって、妃殿下のまま。でも第三王子妃の未来は公爵夫人になる。妻に与えられる権力も実家への恩恵も、はっきりと差が出るのよ。」
「アスター侯爵家のように歴史も古く、代々が国の要職を務めているなら、仕方がないと思えるわ。またはあなたが優れた令嬢だというなら、諦めもつくわ。でも、ブランドン伯爵家は三代前は子爵家。商いで成功して陞爵したもの。あなた自身だって、はっきり言ってダンスは平均点だし、歴史や地理はそこそこできるけど、政治的なものについては全く駄目じゃないの。あなた、そういうことを考えたことがあって?」
ステファニーはただ無言で、エミリーの話を聞いていた。




