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初恋の女の子を助けたら人生変わった! 初恋の子も幼馴染も大切にしたいけど一人で消えます   作者: 野良うさぎ(うさこ)


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そろそろモブになろう


「儂はご立腹なのじゃ! 最近供物の量がへってるのじゃ!」


 黒いモヤが実態化して、ロリっ子着物少女が俺のリビングでゲームをしながら喚いていた。


「うっせーな。お前呪いだろ? だったら食べなくていいじゃん!」


「……うるさいのじゃ! 儂だって好きで呪いになったわけじゃないのじゃ! ……千年前に起きた事件の生贄なのじゃ!」


「え、何? 重い話? やめよーぜ。そんなことよりスマブーラを楽しもうぜ!」


「くっ!? 儂のピカっとチュウに勝てるとでも?」


「あ、俺勇者使うわ!」


 俺と呪いは案外いい感じの関係になっていた。

 コイツが出てきた時は驚いたが、意外と普通の子供と変わらない事に気がついた。

 そして、俺の秘密を知っている最大の理解者でもある。

 かれこれ四年の付き合いだしな……


 コイツには全て筒抜けだから俺は気兼ね無く付き合う事ができる。


 あれ? 俺友達コイツだけ?


「む? どうしたのじゃ? 泣いてるのか? 隙きありじゃ!!」


 ピカっとチュウの電撃が俺に襲いかかる。

 俺は華麗なバックステップでかわし、超攻撃をお見舞いした。



「ギャーー!! 卑怯なのじゃ!!」


 ……俺コイツに殺されるんだよな? まあ俺から望んだ事だけどさ。







 委員長と玲子の仲良し作戦は成功した。

 これに関しては俺はそんな複雑な事はしていない。

 ただ委員長とカフェで話しただけだ。


 玲子は実は意外とやる気があるのに、人と付き合うトラウマがあるというのを伝えた。

 そして二人とも仲良くなれ、と強く【お願い】をした。


 うん、委員長は良い奴だ。

 頭堅いけどな。




 俺は玲子を変えようと決めてから、玲子に毎日話しかけている。

 駅で待っていたり、一緒に無理やり帰ったり、喋り倒したり……


 ちょっと嫌がられているのが分かる。

 でも意外と普通に喋ってくれる時もある。


 やっぱり寂しいんだよな……


 俺は玲子に好かれようと喋っていない。

 玲子がクラスに溶け込めるような下地作りをしているだけだ。


 だって、俺が玲子の事を大好きだってバレちゃ駄目だろ?

 大問題だ。


 俺は自分で自分のことを理解している。

 俺が玲子を好いているのをクラスの連中に知られたら……それこそ孤立する。


 ちょっと変わったボッチの女の子と友達になろうとしている印象だろう。

 恋愛的な要素は全く出していない……はずだ。


 玲子と俺が会話しているのを見た生徒も、玲子がちゃんと喋れる女だってわかるだろう。


 ……そしてクラスの中心人物、委員長っていう糸口が出来た。

 そこから俺は玲子を巻き込んでクラス全員が仲良くなるように仕向ければいい。



 そろそろ俺はフェードアウトしよう。



 ――俺はいちゃ駄目だ。



 玲子と話す時は目を見て喋らない。眉間とか前髪を見ている。そうすると目を見て喋っているように見える。

 目を見たら隠している感情が伝わる……


 玲子にとって俺はモブ生徒でいなければならない。

 唯のきっかけになればいい。


 俺がいなくなっても楓と委員長がうまくやるだろう。


 ……マジでどうやって消えよう?








 部屋でまったりしていると幼馴染の楓が凄い剣幕で俺のところにやってきた。


 俺は本を読みながらコーヒーを飲んでいた。呪いは俺の中で休んでいる。



「どうした? 怖い顔して……可愛い顔が台無しだぞ!」


 楓は俺のほっぺにいきなり平手うちをお見舞いした。


 痛くないけど……心が苦しい。



「……」


「あんたまたやらかしたでしょ!? ……今度は委員長の妹さん?」


 幼馴染はまくしたてるように俺を責めた。

 楓の怒りの形相が、段々悲しみの表情に変わっていく。


「……委員長の妹さんの手術費を出したって聞いたわ。なんであんたが払う必要があるの!?」


 ――そっちで良かった。


「ああ、そうだよ」


 幼馴染は手をきつく握り締める。まるで泣くのを我慢している子供みたいだ。


 感情がストレートで、優しくて、美人で、俺にはもったいない存在だ。


「……主治医は私のお父さんだもん。委員長の家には手術するお金が無い……先週あんたが札束抱えてお父さんの大学病院へやって来て、いきなり手術費を払うって言って……あんた少しおかしいんじゃないの? おじさんの大切な遺産でしょ!? なんで他人に使っちゃうのよ!」


 ――それを条件に委員長が玲子に優しくする、というのは伝わってないね。良かった。


「はは、遺産が多すぎて少し税金対策しなきゃと思ってね……大丈夫、まだまだちゃんとあるよ。俺は質素な生活してるだろ? それに命が助かるのは喜ぶべき事だ。」


「だからって……」


 楓は俺の部屋を見渡した。

 部屋は殺風景で、ほとんど家具が無い。


「……あんた高校の頃みたいに急にどっかにいなくならないよね? ……ねえ?」


 楓はやり場の無い怒りを抑え込んでいる。


「……大丈夫」


 俺はそれ以上言葉を言えなかった。



 楓は大きなため息を吐いた。


「……だってあんた……は……ずっと……ずっと、そんな感じじゃん! 中学までは一緒に居て凄く楽しかったのに、病院から帰ってきたらいきなり性格が変わってるんだもん! バカ! 私は昔のあんたが好……きだったのに! 今のあんたはちょっと怖いよ……嫌いだよ……なんか壁に話しかけているみたいだもん」


 ――そうだな。俺も楓の事は好きだよ。……初恋とは違う、家族に近い愛情を感じていたと思う。楓が俺の事を想ってくれているのも感じていた。


 楓は大切な幼馴染だ。


 ……だから俺は長い時間をかけて、楓と心の距離を離している。


 そうすれば俺が死ぬ時に、楓の心のダメージが減るだろう。


 おかげで、今じゃ見事に嫌われている。


「だってお前、高校の時に俺のこと嫌いって言ったじゃん? だから俺はお前と仲良くしない様にしているの。分かる?」


「……そ、そうだけど。今のあんたに言ってない。私は昔のあんたに言ってるの!」


「……無茶苦茶だ」


「……ねえ、なんで……そんなに……自分を犠牲にするの? もうやめようよ? もう少し楽に生きようよ? あ、今度わたしと旅行に行かない? きっと楽しいって!」


 楓と二人で旅行か……楽しそうだな。

 昔みたいに気兼ねなく話して観光して……

 でも、今は玲子が大事だ。

 俺は曖昧な返事をする。


「うん、楽しそうだな……いつか行けたらいいな!」


「……また適当な返事ね……はぁ……わたし帰るわ……」


 楓は俺のマンションから消えていった。









 俺は今日から徐々に玲子の前から存在を消そうと思っている。

 朝の出迎えに行かない。

 学校でもちょっかいはかけない。挨拶はするけど、それ以上喋らない。


 たまに目が合うと、笑いかける程度の関係だ。

 クラスメイトの一人だと思ってくれればいい。

 特別はいらない。


 玲子は委員長を通じて、クラスのみんなと少しずつ喋る様になった。


 ――良かった。


 未だ玲子は不器用でしどろもどろだけど、クラスメイトは優しく見守ってくれている。

 これで箱根研修は大丈夫だろう。


 授業が終わり、みんな箱根研修の話題でもちきりだ。

 俺は誰にも気づかれないように教室をでた。




 後ろから足音が聞こえる。


 ――懐かしい足音だな。いつもパタパタした走り方で、ちょっと走っただけで息が切れてしまう。


 振り向くと玲子がそこにいた。

 いつもと同じ表情。

 ……ほんの少しだけ怒りがにじみ出ている。


「……ねえ、あんたなんで私に話しかけないの? あ、飽きたの?」


 ――うん、やっぱり可愛いね。


 俺はできる限りチャラく適当に答えた。


「ははっ! だって天童さんは俺に興味ないっしょ? だから俺は他の子を狙うよ!」


 玲子は不可解な顔をした。


 ――ん? なんか間違えたか?


「あんた……女子に興味ないでしょ? ……あんな可愛い幼馴染がアプローチしているのに……しかもこの学校の女子から大人気でしょ?」


「え、マジで!? 超嬉しいよ! ははっ!」


 俺は手をひらひらさせて、玲子を無視して再び歩き出そうとした。


「ちょっと待ちなさいよ! あっ……」


 玲子は俺の肩を掴んだ。


 懐かしい感触。手のひらの柔らかさ、体温、つかみ方……前と全く変わっていない。

 ……それがわかる俺が変態か? だって仕方ない、初恋だからな。


 胸からなにかこみ上げて来そうだ。

 くそ、落ち着け。俺はクールが売りの超絶リア中でイケメンだ。

 絶対振り向くな。今玲子の顔を見たら俺が崩れる。



 俺は動かない足を無理やり動かし始めた。


 玲子の手が俺の肩から離れる。

 俺の身体の一部が離れていくような気持ちになる。


 俺は叫びそうになる心を必死で押さえた。



 玲子はなにか呟いたまま追ってくることはない。


「……あ……な……触れた? どうし……」




 俺はそのまま玲子と別れて新宿へと向かった。




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