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初恋の女の子を助けたら人生変わった! 初恋の子も幼馴染も大切にしたいけど一人で消えます   作者: 野良うさぎ(うさこ)


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玲子の親父


 俺は全て分かっている。

 玲子が記憶を取り戻して、呪いが嘘をついていた事も……


 ――嘘をつくのが下手くそすぎなんだよ……


 俺の身体の一部が抜け落ちるのを感じ取った。

 身体の中の苦しみが和らぐ。


 俺は電話口で叫んだ。


「楓!! 花園神社に急ぐぞ!! あいつは自分を犠牲にして呪いとともに消え去ろうとしているぞ!!」


『え!? そんな……約束とちがうよ……』


「ばか!! 今は無駄口叩くな!! ここが正念場だ!!」



 俺は電話を切って自分の席を見る。

 案の定玲子がいない。



 俺は花園神社まで全力で走った。








 呪いの発症は玲子の花園神社と確定していた。

 俺は玲子とは別に、自分の呪いについて死ぬほど調べていた。



 極道である玲子の親父と無理やり会うことで判明した解決法がある。

 俺はそれに賭けるしなかった。





 ************





 遡ること数日前。


「おい、兄ちゃん。お前最近玲子に付きまとってるやつか? 死にたいのか?」


 数多の不良やチンピラを相手取ってきたが、玲子の親父は本物であった。

 威圧感が半端ない。

 だけど、俺はそんなものには負けない。


「うるせえ。……天童家の呪いについて話しやがれ!!」


 周りにいた子分達いきり立つ。

 俺は子分共を一喝した。


「黙れ!! 俺は玲子の親父さんと話してんだよ! 話の邪魔をするな!!」


 玲子の親父はひげを触る。


「けっ……威勢だけはいいな? おい、あれもってこい。あれだ、あれ」


「へ、へい……」


 しばらくすると子分が汚い布にくるまれた長い何かを持ってきた。

 玲子の親父それを受け取る。

 汚い布を剥ぎ取ると、そこには一本の刀が出てきた。

 不気味で禍々しい刀。嫌悪感が湧いてくる。


 玲子の親父が訥々と語りだした。


「……これはな、呪われた刀だ。うちは見ての通り極道だ。歴史は古く先祖代々続いている。……でな、俺もこの呪いにかかった事がある」


 ――なんだと?


「そしてこの呪いに打ち勝った者だけが、うちの家督を次ぐことになる」


「じゃ、じゃあ玲子は……」


「あいつはこれに耐えきれなかった。……というかあいつにこれを触れさせるつもりもなかった……まさか物置でこれを持ってきた時は俺の頭が狂いそうになった……あいつにはこの家業は似合わん……俺の代で潰す予定だった」


「お、親分!?」


「黙れてめえら!! 今はこのガキと話してんだ!!」


 玲子の親父は俺をにらみつける。

 俺は一瞬でもその視線から逃げなかった。


「はん! まったくどんな人生歩んできたんだよ……てめえ何回死んでんだ? 極道でもそんな目をしてるやつはそうそういないぞ?」


「……ああ、俺は何回も死んだ。……だけどな、俺ももう二度と死なない。玲子が悲しむような事はしない」


「ふん、てめえが玲子の呪いを奪いとった奴か……」


 俺は静かに頷く。


 玲子の親父はため息を吐いた。


「はぁ……もっと適当な奴だったら見殺しにしても良かったが……気が変わった。呪いを断ち切る方法は一つだけある」


「本当か!! どうすればいい? どうすればいいんだ!!」


「まあまて、落ち着け。……お前に呪いが乗り移っているのは正規のルートじゃない。いわばバグに近い状態だ。呪いの後継者である我が家の血筋……玲子が呪いを背負ってないといけない」


「!?」


 玲子の親父は子分に命令をして葉巻を持ってこさせた。

 親父さんは葉巻の煙を漂わせる。


「ふぅ……いいか? 俺の時は十八歳だった。刀を腹に刺して一晩耐える。それだけだ」


「か、刀を腹に刺して一晩? 俺がそれを受ければ呪いがなくなるのか!」


「だから、てめえは血筋じゃねえ。ただ苦しむだけで終わりだ……だが玲子なら……」


「玲子に受けさせるのか!?」


「……まあ死ぬだろうな……そんな事をしようとしたら俺がお前を殺す」


「じゃあどうすればいいんだ!!」




 親父さんは再び葉巻を吐いた。




「はぁ、てめえを見殺しにするのが一番なんだがな……くそっ、今の楽しそうな玲子を見ると……な……」



「いいか?……玲子に呪いを移すには神社で儀式が必要だ。……その儀式で玲子は刀を持ち出すだろう……タイミングは一瞬だ。玲子に呪いが移る瞬間、お前が玲子と一つになって刀を自分の腹に刺せ」



 ――は!? 一つになる?



「くそっ! 親の口から言わせんなよ!! とにかく、そうすれば呪いがお前を後継者と誤認識して、試練をあたえるだろう」



「……乗り移る瞬間、玲子と一つになり、刀を腹に刺して一晩耐える……って事だな?」



「ああ、苦しいぞ? がはははっ!!!」


 親父さんは豪快に笑った。


 俺も釣られて笑ってしまう。


「はは、なんだ……そんな事で良かったのか……これで希望が見えた……」


「おい、刀で腹を刺すんだぞ? てめえ怖くねえのか?」


「……多分だけど……このために俺は苦しい経験をしてきたんだな……そんなもん玲子のために耐えてみせる……」




 親父さんが葉巻を投げ捨てて大声を上げた。




「……おい、酒もってこい!! ……あん? このクソガキにだ。おい、今から景気づけに飲みぞ!! てめえらも宴会だ!!」



 その夜、俺は記憶を失くしそうになるまで玲子の親父と一緒に酒を交わした。









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