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第3話 俺の魔力量がおかしいらしい

異世界生活、最初の仕事。


それは――。


「薪割りかぁ……」


目の前には大量の丸太が積まれている。


もっとこう。


冒険者ギルドに登録するとか。


ゴブリンを討伐するとか。


異世界らしいものを想像していた。


現実は薪割り。


「何をぼさっとしている」


「アウラ」


「今日中にこれを片付けるぞ」


「これ全部!?」


結構な量だぞ。


そう思っていると、アウラが丸太の前へ立った。


「少し離れていろ」


「え?」


アウラが片手を上げる。


その瞬間。


空気が変わった。


「――切れろ」


ヒュン!


何かが飛んだ。


次の瞬間――。


積まれていた丸太が、一斉に切断された。


「…………」


俺は目を見開く。


「魔法!?」


「何をそんなに驚いている」


「いやいや、驚くだろ!」


初めて見た。


本物の魔法だ。


「今の何!?」


「風魔法だ。ただ魔力を刃にして飛ばしただけだ」


「だけって!」


すげえ。


やっぱり異世界には魔法があるんだ!


「なあアウラ!」


「なんだ?」


「俺にも教えてくれ!」


「魔法を?」


「そう!」


ステータスは出なかった。


チート能力も今のところ分からない。


だったら魔法だ。


異世界に来たなら一度くらい使ってみたい!


「……構わないが」


「本当か!?」


「まず、お前が魔力を感じられるか確認する必要がある」


アウラによれば、この世界に生きる者のほとんどは幼い頃から自然と魔素を体内に取り込み、それを魔力として扱えるようになるらしい。


そして魔力を身体中に巡らせていくことで、少しずつその通り道が作られていく。


「それが魔導脈だ」


「魔導脈?」


「魔力を全身に巡らせるための通り道だ。魔法を使うなら、まず自分の魔力を感じ、魔導脈を通して操る必要がある」


「なるほど」


血管みたいなものだろうか。


血液の代わりに魔力が流れる。


そんなイメージなら分かりやすい。


「普通なら幼い頃から魔力を巡らせることで、自然と魔導脈が育っていく」


「俺には?」


「ほとんど感じない」


「マジかよ」


「お前は今まで魔力を意識したことすらないのだろう?」


「まあ……ないな」


少なくとも元の世界で魔力なんて感じたことはない。


「だから少し荒っぽい方法を使う」


「……嫌な予感がするんだけど」


アウラが俺の背中に手を当てた。


「私の魔力を直接お前の身体へ流す」


「そんなことできるの?」


「ああ。外から魔力を流し込んで、強制的に魔導脈を開く。その感覚を覚えろ」


「なるほど」


「多少痛むかもしれない」


「多少?」


「多分な」


「多分!?」


逃げようとした瞬間。


「動くな」


「ちょ――」


アウラの手から何かが流れ込んできた。


「ぐっ!?」


熱い。


いや。


熱いだけじゃない。


身体の内側を、何かが無理やり駆け巡っている。


血液とは違う。


もっと別の何か。


「これが……魔力?」


「そうだ。その感覚を覚えろ」


アウラの魔力が身体を巡る。


すると。


今まで感じたことのなかったものが分かった。


身体の奥。


そこに――何かがある。


「……見つけた」


「何?」


「俺の中にも……何かある!」


意識をそこへ向ける。


身体の奥に溜まっている、巨大な何か。


これが俺の魔力なのか?


だったら――動かしてみる。


そう思った瞬間。


「待て、カナタ!」


「え?」


アウラの表情が変わった。


次の瞬間――。


ドンッ!!


「うわっ!?」


身体の中から何かが一気に溢れ出した。


風が吹き荒れる。


周囲の砂や薪が吹き飛ぶ。


「な、なんだこれ!?」


「止めろ!」


「どうやって!?」


「魔力を抑えろ!」


「だからどうやって!?」


分からない。


一度開いた栓から、水が噴き出し続けているような感覚。


身体の中にあった何かが、ものすごい勢いで外へ流れていく。


「カナタ! 意識を保て!」


「無茶……言うな……」


視界が暗くなる。


力が抜ける。


あ。


これ、知ってる。


気絶するやつだ。


「……MP切れ……」


この世界に来て何回気絶するんだ、俺。


そんなことを考えながら。


またしても意識を失った。



「……天井」


見知った天井。


「起きたか」


横を見るとアウラがいた。


「俺……また倒れた?」


「ああ」


「何回目だよ……」


身体を起こす。


少し怠いが、動けないほどではない。


「一気に魔力を放出しすぎたんだ」


「じゃあ、やっぱり俺にも魔力はあったんだな!」


「……あった、という言い方では足りない」


「え?」


アウラの様子がおかしい。


いつもの淡々とした顔ではある。


でも、何かを考え込んでいる。


「どうした?」


「カナタ」


「うん?」


「お前、自分の魔力量がどれほどあるか分かっているか?」


「分かるわけないだろ。今日初めて感じたんだから」


「……そうだったな」


アウラは少し黙った。


そして。


「私も、これほどの魔力を持つ者を見たことがない」


「……そんなに?」


「ああ」


マジか。


もしかして。


来たか?


異世界転生定番のチート能力!


「じゃあ俺、結構すごい?」


「結構どころではない」


アウラが真剣な表情で俺を見る。


「百年前の魔王様を知る者たちから、残された魔力の記録や話を聞いたことがある」


魔王。


百年前、人間との戦争で魔族を率いていた存在。


「おそらく――」


アウラが一度言葉を止める。


「純粋な魔力量だけなら、お前は魔王様すら超えている」


「…………」


ん?


今なんて?


「……魔王以上?」


「ああ」


「俺が?」


「ああ」


「…………」


俺は自分の手を見る。


異世界に来て。


ステータスも出ない。


荒野で死にかける。


ダークエルフに拾われる。


薪割りをする。


そして突然。


魔王以上の魔力量を持っていると言われた。


「……マジで?」


アウラは真顔で頷いた。


「マジだ」


「…………は?」


どうやら俺は。


自分でも知らない、とんでもないものを身体の中に抱えているらしい。


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