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84.33  作者: ゴリラ
2026 三月
93/93

五月三日 日曜日

柏餅 頬膨らませ 至福渡る

かしわもち ほおふくらませ しふくわたる


近所のスーパーで買い物をすると、誘惑ポイントがいくつかあります。

セルフレジで会計を済ませました。

「やれやれ、今日も節約したな」と呟きながら、財布の閉じボタンを合わせパチリと音を鳴らしました。

空のカートを片手で引き寄せ、押していきます。

頭の中では、魚のパックに貼られた、赤い半額シールを思い出したりしています。

かまぼこの半額も嬉しいのですが、魚は今日の献立に反映する獲れ高ですから、喜びは倍増です。

で、私は自分を褒めながら、大きな窓が連なる右側へ目を向けました。

そうです。窓際は、明るい光が差し込み、楽園のようなお店が続くのです。

煎餅、ゼリー菓子、お饅頭、カステラ、和菓子、ケーキのショーケース、郷土銘菓など、老舗の菓子屋たちが全力をかけて、引き留めようとするのです。私は「菓子セレクトショップ通路」と呼んでいます。

出口へと進むと、必ず、ここを通らなければなりません。

私は、「しまった、見てしまった」と舌打ちをしました。

最初に、パリパリと香ばしそうな、塩味の煎餅が目に入りました。表面には、黒豆が薄く浮き出ています。

私は目を細め、

「はぁーっ」

 胸の奥から息を吐くと、カートを押す力が抜けました。

「なんてこった」

私の半額の儲け分は、風前の灯火です。

すぐ先には、こんもりと盛られた生クリームにちょこんと蓋をした、シュークリームの冷えた姿がありました。

私の頬が硬く引き締まります。

「こんなことでは、いけない。さ、何食わぬ顔で過ぎていきましょう。カートを引いて歩きなさい」

しつけの厳しい鬼母のように、自分に言い聞かせました。

三歩行くと、艶のある皮とまったりとした甘みのある栗饅頭がありました。

私は眉を上げて

「ふっ、栗饅頭?今日は、、、要りません」

 キレのある目つきで顔の向きを変えました。

その時です。

「柏餅あります」

目の端で、短冊に筆で書かれた文字を読んでしまいました。

「えっ」

季節の和菓子です。

好物でした。

私は緋毛氈の上に並ぶ、四個入りのケースを指差し、「これ、ください」と言っていました。

家に帰ると、ちょうどお茶の時間でした。

葉を剥がし、玉のような餅に口を寄せました。

味噌餡が、程よい甘味です。

頬が丸く、柏餅のように持ち上がります。

「至福」とは、このこと。

お茶をこくりと飲みました。


英語

Kashiwamochi

sweet in the cheeks

pure bliss spreads


中国語

柏饼香

露出笑容

至福渡颊畔

 


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