五月三日 日曜日
柏餅 頬膨らませ 至福渡る
かしわもち ほおふくらませ しふくわたる
近所のスーパーで買い物をすると、誘惑ポイントがいくつかあります。
セルフレジで会計を済ませました。
「やれやれ、今日も節約したな」と呟きながら、財布の閉じボタンを合わせパチリと音を鳴らしました。
空のカートを片手で引き寄せ、押していきます。
頭の中では、魚のパックに貼られた、赤い半額シールを思い出したりしています。
かまぼこの半額も嬉しいのですが、魚は今日の献立に反映する獲れ高ですから、喜びは倍増です。
で、私は自分を褒めながら、大きな窓が連なる右側へ目を向けました。
そうです。窓際は、明るい光が差し込み、楽園のようなお店が続くのです。
煎餅、ゼリー菓子、お饅頭、カステラ、和菓子、ケーキのショーケース、郷土銘菓など、老舗の菓子屋たちが全力をかけて、引き留めようとするのです。私は「菓子セレクトショップ通路」と呼んでいます。
出口へと進むと、必ず、ここを通らなければなりません。
私は、「しまった、見てしまった」と舌打ちをしました。
最初に、パリパリと香ばしそうな、塩味の煎餅が目に入りました。表面には、黒豆が薄く浮き出ています。
私は目を細め、
「はぁーっ」
胸の奥から息を吐くと、カートを押す力が抜けました。
「なんてこった」
私の半額の儲け分は、風前の灯火です。
すぐ先には、こんもりと盛られた生クリームにちょこんと蓋をした、シュークリームの冷えた姿がありました。
私の頬が硬く引き締まります。
「こんなことでは、いけない。さ、何食わぬ顔で過ぎていきましょう。カートを引いて歩きなさい」
しつけの厳しい鬼母のように、自分に言い聞かせました。
三歩行くと、艶のある皮とまったりとした甘みのある栗饅頭がありました。
私は眉を上げて
「ふっ、栗饅頭?今日は、、、要りません」
キレのある目つきで顔の向きを変えました。
その時です。
「柏餅あります」
目の端で、短冊に筆で書かれた文字を読んでしまいました。
「えっ」
季節の和菓子です。
好物でした。
私は緋毛氈の上に並ぶ、四個入りのケースを指差し、「これ、ください」と言っていました。
家に帰ると、ちょうどお茶の時間でした。
葉を剥がし、玉のような餅に口を寄せました。
味噌餡が、程よい甘味です。
頬が丸く、柏餅のように持ち上がります。
「至福」とは、このこと。
お茶をこくりと飲みました。
英語
Kashiwamochi
sweet in the cheeks
pure bliss spreads
中国語
柏饼香
露出笑容
至福渡颊畔




