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三月三十一日 火曜日
蕗味噌と ほかほかご飯 父の笑み
ふきみそと ほかほかごはん ちちのえみ
白い蓋をねじると、パピンと音を立てました。
真空の瓶がため息をつくように開きます。
蕗味噌の詰まった、縦に長くて、丸みのある瓶です。
瓶の入り口には、緑色の練り物が見えました。
鼻の奥に残る、蕗の香りがしてきます。
父は、箸に蕗味噌をほんの少しだけ取りました。
それを湯気のたっているご飯へ、軽く塗りつけます。
そして、口先を尖らせながら、ご飯と蕗味噌を頬張るのです。
懐かしい記憶です。
小さい頃、その父を真似て、私も同じ様にして食べました。
苦味が喉に絡み、「これのどこが美味しいのか」と鼻の穴を膨らませました。
急いで、水を飲んだのを覚えています。
それが、今では、私も蕗の苦さや香りを「春だなぁ」と味わうのです。
亡き父が黒檀の箸を上げ下げしていた様子を思い出します。
美味しそうに、炊き立てのご飯を蕗味噌で食べるのです。
幼い私は、ピンクのプラスチックの箸を持ち、ご飯粒をこぼしながら見上げます。
戻らない日々です。
それでも、こうして、蕗味噌が古びた写真を探し出すと、安心します。
私は父を忘れていないと。




