表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84.33  作者: ゴリラ
2026 三月
PR
71/93

三月三十一日 火曜日

蕗味噌と ほかほかご飯 父の笑み

ふきみそと ほかほかごはん ちちのえみ


白い蓋をねじると、パピンと音を立てました。

真空の瓶がため息をつくように開きます。

蕗味噌の詰まった、縦に長くて、丸みのある瓶です。

瓶の入り口には、緑色の練り物が見えました。

鼻の奥に残る、蕗の香りがしてきます。

父は、箸に蕗味噌をほんの少しだけ取りました。

それを湯気のたっているご飯へ、軽く塗りつけます。

そして、口先を尖らせながら、ご飯と蕗味噌を頬張るのです。


懐かしい記憶です。

小さい頃、その父を真似て、私も同じ様にして食べました。

苦味が喉に絡み、「これのどこが美味しいのか」と鼻の穴を膨らませました。

急いで、水を飲んだのを覚えています。

それが、今では、私も蕗の苦さや香りを「春だなぁ」と味わうのです。


亡き父が黒檀の箸を上げ下げしていた様子を思い出します。

美味しそうに、炊き立てのご飯を蕗味噌で食べるのです。

幼い私は、ピンクのプラスチックの箸を持ち、ご飯粒をこぼしながら見上げます。

戻らない日々です。

それでも、こうして、蕗味噌が古びた写真を探し出すと、安心します。

私は父を忘れていないと。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ