虚ろな月
以下の注意事項があります。
- この物語はフィクションです。
実在の人物、団体、建物とは一切関係ありません。
- この作品を生成AIの学習等に使用するのはご遠慮ください。
- この作品の主人公は偏った性格(学力至上主義、度の過ぎた真面目、融通が全く利かない等)を持っています。
そんな主人公の一人称で物語が進んでいきます。
そのため、文章に不快感を感じる可能性があります。
- この作品に登場するセリフ等は登場人物の意見で私の意見ではないです。
- 部活を辞めることは悪いことではありません。
登場人物
- 私 : この作品の主人公。
学力は学年3位。
- 張山 縫 : 私の隣の席の女の子。
- 新月 虚 : 私が敵と認識している少女。
学力は学年2位。
- 満月 雅 : 私が敵と認識している少女。
不動の学年1位。
私が高校に入学して一番驚いたことは、周りの人間の態度だった。
私の高校は県内では指折りの進学校であった。
入学前の私は、上しか見ていないような奴らが心を研磨剤代わりに擦り減らしながら刃を研いでいくような世界だと思っていた。
でも、実際は違った。
私程成績に対して執着心を抱いているような人間は少なかった。
たまたま頭が良かったから入った。少し背伸びすれば入れた。本気で受験勉強をして満足した。授業のレベルが高く喰らい付くのを諦めた……。
そんな奴らばっかりだった。
私を唯一倒した学年1位の満月 雅でさえ、成績への執着を一切見せなかった。
そんな時、彼女に出会った。学年3位の彼女は私を睨みつけて来た。
その目に宿るのは嫌悪ではなかった。
その目に宿るのは覚悟だった。
『次のテストでは私が1位になる』
その目はそう語っていた。
私はその少女を睨み返した。
『悪いけど、学年1位は、この私新月 虚のものよ』と……。
そんな彼女の目は日に日に変化していった。
覚悟と競争心で磨かれた眼差しは、嫌悪と苛立ちで鈍くどす黒く染まっていった。
そのころの彼女は、私を敵ではなく、敵として見ていた。
私達に対する彼女の敵意は少しづつ大きくなっていった。そうやって、彼女は少しづつ壊れて言った。
私はそんな彼女の事が気になり、彼女の周りを調べた。
調べに調べた末、
私は鳶葦という情報屋に放課後の卓球場へと案内された。
夕日に染まった物悲しい卓球場。
その片隅で彼女は独り黙々とサーブ練習をしていた。
卓球場の外からは彼女の背中しか見えなかった。
でも、それだけで十分だった。
男子卓球部の部員たちが卓球をしている中で、彼女は独り黙々とサーブ練習をする。
彼女はそれが自分にとって必要なことだと言わんばかりに集中してサーブ練習に取り組む。
そうやって自分の気持ちを誤魔化しているんだ。
ただ、淡々とした作業に集中して何も感じないようにしているんだ。
今の卓球部にいることが苦痛で仕方ない。
本当は誰かに助けて欲しい。
本当は逃げ出したい。
でも、彼女の中の規則が邪魔をして卓球場の中にとどまることしかできない。
その中で、ただ淡々と目的のない作業をこなす。
そんな彼女は痛々しくて仕方なかった。
私はそんな彼女の姿に思わず胸を押さえていた。
だから……。
私は今日もいつもと同じように目を覚ましました。
何時もと同じように朝の規則をこなし、
何時もと同じように学校に行き、
何時もと同じように授業を受け、
いつもと同じように部活に……。
行きませんでした。
放課後になりいやいやながら帰る準備をして教室を出ると、教室の前に学年2位新月 虚が居ました。
新月 虚は廊下の壁にもたれかかるようにして立っていました。
『満月 雅に用があるのでしょう』
私はそう思いました。新月 虚は満月 雅に敵対心を抱いていて、何かあるごとに勝負を挑んでいるからです。
その為私は新月 虚の存在感を感じながらも、特に気にすることはなく部活へと向かおうとしました。
「ちょっと待ちなさい」
そんな私に新月 虚は鋭い声を上げました。
私は刃物を首筋に突き付けられたかのように、蛇に睨まれた蛙の様に、動くことが出来なくなってしまいました。インナーの中を背筋に沿って一筋の汗がゆっくりと流れます。
新月 虚は、獰猛な野生動物が獲物の周りをまわるように、カツカツと言う威圧的なローファーの音を立てながら私の前へと移動しました。
私の前に立ちふさがります。
新月 虚は月の様に白い右手をゆっくりと私の頬に伸ばします。私は抵抗することが出来ません。そのまま、右手は伸び柔らかい指先が私の左頬に触れました。
新月 虚の手は冬の寒空に浮かぶ青白い月の様に冷たいです。
そんな新月 虚の手は、私の顔の輪郭に沿う様に、関節を曲げ、私の顔の左側を包み込みます。何故か分かりませんがその動作はとても優しく、今まで恐怖で止められていた私の時間が動き出します。ですが、私は新月 虚に抵抗するようなことをしませんでした。
新月 虚は下から覗き込むように顔を近づけ、背伸びをしてできるだけ私の視線に合わせようとしました。
私の顔に自分の顔を近づけると、「あなた暇でしょ」と言いました。
私は混乱故に少し時間を置いてから、状況が飲み込めないまま「部活があります」と返しました。
新月 虚は「いいじゃない。付き合って」と言って、先ほどまでとは違う優しい笑顔を見せました。
例えるなら、闇夜を照らす中秋の名月のような笑顔でした。
新月 虚は学年2位で、私は学年3位です。彼女の方が私より序列が上です。
だから、私は新月 虚に逆らえませんでした。
私はいやいや新月 虚に付き合うことになりました。
新月 虚が前を歩き、私がその後ろをついて行きます。私は目的地も聞かされていません。ですが、聞こうとはせずただついて行きます。
実は今まで私と新月 虚は直接的なかかわりを持ったことがありません。
お互い(少なくとも私は)自分の敵として意識はしていました。ですが、言葉を交わしたのはさっきの会話が初めてです。
そのため私達の間には遠い親戚同士のような嫌な緊張感があり、距離感を間違えないように私は黙っていました。
新月 虚は渡り廊下の前まで来ると「あなた勉強好きでしょ」と聞いてきました。
私は、県外の叔母さんと会話するときの様な遠慮がちな声で、「普通です」と返しました。
新月 虚は「そう」と言って渡り廊下の先へと行きます。私も新月 虚について行く形で渡り廊下を渡ります。
渡り廊下には角度のある陽の光が降り射していました。それは当時の私には眩しく、私は思わず「まぶ」と言いかけました。ですが、渡り廊下の先に新月 虚がいたので踏みとどまりました。
そんな眩しい渡り廊下の先には図書室があります。その前で新月 虚は立ち止まり私の方を見ました。
「ついたわよ」
新月 虚がそう言います。目的地は図書館でした。
「『付き合って』って本の返却か何かですか?」
私はそう聞きました。ほんの返却ならすぐに終わり、まだ部活の始まりに間に合います。
そんな私に新月 虚は「それなら高薙を誘うわ」と答えました。
「それでしたら、貸出ですか?」
私の問いに新月 虚が頭を振ります。そして、1歩私の方へと近づき間合いを詰めます。
新月 虚は「2人で勉強会をするのよ」とここで初めて目的を露にしました。
私は「えっ……」と口を開きました。予想外の目的に唖然となります。
新月 虚は私に畳みかける様に言葉を掛けます。
「学年1位満月 雅の実力は圧倒的よ。
だから、学年2位の私と、学年3位のあなたが協力するのよ」
新月 虚は『学年2位の私』のところで胸に右手を当て、『学年3位のあなた』のところで胸にあてた右手を差し出しました。新月 虚の右手は同盟の証に握手を求める様に開かれていました。実に学年2位らしく威厳のある堂々とした態度です。
私はそんな新月 虚に「部活があるのでお断りします」と言って踵を返しました。私は卓球場へ戻らなければいけないのです。そして、賽の河原積の様に終わりの見えないサーブ練習をしなければいけないのです。
「待ちなさい」
新月 虚はそう言って、そんな私の右手を握ります。
「あなたは満月 雅に勝ちたくないの?」
新月 虚は、その手を振り払おうとする私にそう聞きます。
私は、手を払い、振り返り、新月 虚の方を向いて「もちろん勝ちます」と返しました。その言葉を聞いて新月 虚は嬉しそうに口角を上げます。
「なら付き合いなさい。30分だけでいいから」
新月 虚はそう言って私の手を強く強く握り、図書室の扉を開けようとしました。
私は義務のために断ろうとしました。ですが、新月 虚の手は『絶対離すものか』と言わんばかりに強く掴まれていました。新月 虚の小さな体からは想像もできないほどです。
私は抵抗はしながらもフィジカルで敗れ、解放してくれそうにない新月 虚に諦め、図書室の中へと入ってしまいました。
図書室に入った後は「30分だけです」と小声で耳打ちして、素直に新月 虚について行きました。
私は新月 虚のせいで中高通して初めての正当な理由のない遅刻をすることになってしまったのです。
約束通りの30分ではなく、50分経過したころ私はやっと30分以上たっていることに気が付きました。
恥ずかしながら、私はそれほどまでに新月 虚との時間に集中していました。
自分1人では何分も悩んでしまうようなところもすぐに解決します。ただ教えるのではなくヒントを出しながら私を導いてくれます。新月 虚は学年2位だけあり、私よりも詳しく、教え方も上手でした。
それに新月 虚は当初の私のイメージとは違いとても優しく、新月 虚の側にいると安心します。
胸の内を語ると、私は完全下校までこうしていたかったです。ですが、これはただ私のやりたいことであって、私がしなければいけないことではありません。今は私にとっては部活の時間なのです。
ですから、私は立ち上がりました。
新月 虚はそんな私に「お手洗い?」と聞きました。
私は筆記用具を片付けながら「部活に行かないと……」と答えます。新月 虚は「30分だけだったわね」と残念そうに言って解放してくれます。
私は小さな少女のその言葉に何故か良心がきしみます。ですが、私は部活に行かなければいけないのです。
私が片づけを終え、図書室のグループ学習エリアを去ろうとしたとき、新月 虚は「教えて欲しいところがあったのだけど……また今度にするわ」と言いました。
この勉強会は2位の新月 虚と3位の私がお互いの苦手教科を補って満月 雅に対抗しようというものでした。お互いに教えあいっこをするのです。
そのはずなのに50分の間私ばかり新月 虚に質問をしてしまい、新月 虚から一方的に教えられてばかりでした。
そのため、新月 虚のその一言は私の良心に銛のように深く刺さりました。そして、かえしが着いているのか抜くことが出来ません。
私はため息をつきました。こんなのは反則です。
新月 虚を睨め付けたい気分でした。ですが、新月 虚は私に勉強を教えてくれたのです。その分私も教えるのが正しい行いです。
先に商品を受け取ってしまえば、必ず対価は払わないといけない。
私は新月 虚の横に戻りました。新月 虚は「部活はいいの」と聞きました。白々しいです。
私は「後20分だけです。分からないところを手短に聞いてください」と言いました。
新月 虚はその20分を無駄にしないように早速参考書からわからないところを探し始めました。
新月 虚と勉強をしていると、図書委員の生徒が私たちの元へと近づいてきました。
私達は少しうるさくし過ぎたのだと思いました。グループ学習エリア内は話しても大丈夫ですが、あまりにうるさいと注意されます。
ですが、うるさかったわけではありませんでした。
「あのー。そろそろ締めたいんですけど……」
図書委員は少し遠慮がちに私たちにそう言いました。
私はその時図書室に入ってから2回目の時間確認をしました。完全下校の10分前図書室の閉室時間でした。
私は新月 虚の方を見ました。新月 虚はわざとらしくニヤッと笑いました。
私はこの日初めて部活をサボってしまったのです。こんな不本意な形で……。
何か言ってやらないといけない気になります。
ですが、今は図書委員を待たせているので、片づけに専念します。
片づけが終わると図書委員にお礼を言って図書室を出ます。文字を読むための図書室とは違い、廊下の電気は少し薄暗く、緑と黄がほのかに混じっています。少し病的な色の蛍光灯です。
そんな廊下を2人で校門へと向かって歩きます。
私は部活に行けなかったことに文句の一つでも言おうと思いました。
私が不平の言葉を言おうとしたときに、新月 虚が「今日は充実していたわね」と言いって満足げに伸びをしました。それには私も同感です。
伸ばした手を下すと、新月 虚は私の方を向いて「この調子なら案外すぐかもしれないわね」と言います。
私は「何がですか?」と聞きます。
新月 虚は「私たちが満月 雅に勝つのがよ」と答えます。
そうです。この勉強会の目的は2位と3位が手を組んで1位を倒すことです。
そのために、これからも頑張らなくては……。
違います。
私には卓球部という義務があります。今日は新月 虚のせいでサボってしまいました。ですが、明日からは行かなければいけないのです。
そうでないと……私は護崎や有象無象と同じになってしまいます。私が積み重ねてきたものがなくなってしまうんです。
私は立ち止まります。新月 虚はそれに気づいて立ち止まり私の方を振り返りました。
私は「ですが、私は明日は部活があります」と言います。
一瞬新月 虚の顔に寂しさを感じます。決して人が見ることは出来ない月の裏側のような寂しさを感じます。
ですが、新月 虚はすぐに「そうだったわね」と言って微笑みました。
私たちはまた歩き出しました。
校門の前まで来ると新月 虚は立ち止まりました。
「私、友達と帰る約束をしているから……」
新月虚はそう言います。高薙さんと待ち合わせをしているのでしょう。
私は新月 虚と別れて路面電車の駅へと向かいます。
新月 虚は私と別れるときに「また、明日」と言いました。
私はつられて「また、明日」と返してしまいました。
控えめながらも希望に満ちた笑顔で……。
路面電車に乗ると席に着き、そして、ため息をつきます。
路面電車の扉が私を逃がさないように閉まり動き出します。
薄暗い蛍光灯に照らされた狭い車内は、海外の小説などで読んだ懺悔室の様です。私は電車の中で独り今日の自分の行いを振り返ります。
今日の私は初めて自分の規則を破り、あろうことか部活をサボってしまいました。
義務の代わりに新月 虚と共に過ごした時間はとても充実していました。独り、赤く、黒く染まっていく卓球場で淡々とサーブ練習をする時間とは大違いです。
でも、それは本来の私に与えられた行動ではないのです。私のやるべきことではなく、ただ私がやりたいだけの事なのです。
ゴトゴトと揺れる懺悔室の中で、私は自責の念に押しつぶされそうになります。
私は有象無象と同じことをしてしまったのです。
中途半端な人達の仲間になってしまったのです。
私はダメな人間人間になってしまったのです。
私は背徳の果実の味を覚えてしまったのです。
私は穢れを知ってしまったのです。
私は……。
せめて明日は……いや、これからは休まずに部活に行きましょう。
気が付けば、私はあろうことか2週間近くも部活をサボってしまっていました。
言い訳をさせてください。私が部活をサボりたかったわけではありません。
放課後私が部活に行こうとすると、新月さんが私をさらいに来るのです。新月さんは私の手をしっかりと掴み離してくれません。
ですから、私はサボるしかないのです。
私は何も悪くないのです。私は有象無象とは違います。ただそうするしかなかったのです。
そうやって、サボりにサボって日々を過ごし2回目の土曜日を迎えてしまいました。
私はその日学校の北側にある温泉街に来ていました。
温泉街と言うだけあり、路面電車の扉が開いた時から硫黄の匂いが漂ってきます。
今日温泉街に来たのは、新月さんと勉強会の約束をしており、温泉街が新月さんの家の最寄り駅だったからです。
路面電車が温泉街駅についた時に、私は腕時計を見ました。9時15分であり、予定の待ち合わせ時間の15分前でした。
新月さんが来るまで、私は駅の陰で風をしのぎながら待つことにしました。まだ、冬本番ではありませんが風が吹くとさすがに寒いからです。
駅の目の前には温泉街(温泉とそこにつながる商店街の名前であり、この町全体の事ではない)の入り口があります。
温泉街は県内有数の観光地であり、今は寒さを感じ始める季節であるため、ひっきりなしに人が入っていきます。彼らは温泉街を抜け温泉に向かうのです。
そんな彼らを見ていると、温泉が恋しくなり、そのせいかやっぱり寒く感じてきます。制服のスカートは膝までしか布がないので、ふくらはぎが寒くて仕方ありません。冬用の靴下を穿いてくればよかったです。
そんな私に都合よく、温泉街の入り口には足湯があります。私は足をこするように歩きながら、走性でもあるかのように、ほぼ無意識に足湯の方へと歩いていました。
そこで私は気が付いてしまったのです。私は今日タオルを持ってきていないことに。
足湯に入った後どうすればいいのでしょう。
濡れた脚で過ごすと余計に冷えてしまいます。それに、これから新月さんのお家へお邪魔するのです。濡れた脚で上がるのは失礼……と言うより、もはや人としてどうなのかと……。
私は腕時計をもう一度見ます。待ち合わせまでは後7分程でした。
私は駅の陰まで戻り、歯を食いしばり、腕を組み寒さを我慢することにしました。
そうして待って居ると2分程後に、新月さんが温泉街の入り口の横からつづく道を通ってやってきました。
今日の新月さんのお洋服は黒のワンピースでした。
ワンピースは、上は付属のショートケープで、下はボリュームのあるスカートで体のラインを見せないようなものでした。また、レースなどの装飾品があしらわれていて、少し幼い印象を受けます。
小柄な新月さんにとてもよく似合っています。ですが、その服装は私には意外でした。
新月さんは、ヒールを履いたことのある人には一目瞭然ですが、普段少しぎこちない歩き方をします。それはローファーのかかと部分に身長を高く見せるための底上げがされているためです。
そこまでして新月さんは自分の身長を少しでも高く見せようとしています。他にもところどころ背伸びのようなことをしています。
そんな新月さんがわざわざ子供っぽく見えてしまう服を着て来るのは予想外でした。
私は驚きのあまりそんなかわいい新月さんの事をじろじろと見すぎてしまったようです。
新月さんは「そんなに見て、どうしたの?」と聞いてきました。
私は控えめに「新月さんも女の娘なんですね」と返しました。
新月さんは「どういう意味かしら?」と聞いてきました。
「新月さんは白いTシャツに黒いズボンを穿いてくると思っていたので、まさかこんな可愛い恰好で来るとは思っていませんでした。
新月さんも可愛い服とかに興味があるのだと……」
そう言う私の答えに新月さんはわざとらしくため息をつきました。
「私も白のTシャツと黒のズボンの方がいいわよ。
でも、高薙と母が2人で勝手に出かけて買ってくるのよ。
まったくあの2人は私の事を人形か何かと勘違いしているんじゃないかしら」
新月さんは嫌そうに装ってそう言いました。新月さんはこういう服は本当は嫌ではないようです。それに、本当に嫌ならわざわざ着て来ないはずです。
私は新月さんに「とても似合っていますよ」と言いました。
新月さんは嬉しそうにほんのり頬を染めます。かわいい。
そして、話を逸らす様に私の服装に言及してきました。
「ところで、あなたは何で制服なの?」
私は「学生だからです」と答えました。
それから以下のような問答がありました。
「そう言う意味じゃないわよ」
「どういう意味ですか?」
「本気で言っているの?」
「本気ですが」
「何で休日なのに制服を着てきているの?」
「休日でも学生としての自覚を忘れないためです」
「そう言うことね」
新月さんは呆れたようなため息をつきました。私にはその溜息の意味が良く分かりませんでした。
「折角だから温泉街で少し遊んでから、勉強会にしない?」
新月さんはそう言いだしました。
私はどちらでもよかったので「新月さんに任せます」と言いました。
新月さんは「決まりね」と言って温泉街へと向かいます。私もそれについて行きます。
私は初めて温泉街に入った気がします。地元の観光地は何時でも行けるせいか、案外行かないものです。
温泉街の中は人が多く賑やかで、お土産物屋さんや一風変わったお店が並んでいました。
そして、暖房が効いているのか温かくて助かります。
しばらく温泉街の中を歩いていると、右手のお店の店頭にある蒸し器から湯気がもボワッと出てきて私たちの顔を覆いました。湯気からは温泉の匂いがします。
新月さんはそのお店の方を見て「お腹空いていないかしら?」と私に聞きました。
私は今日もいつもと同じように朝食を食べてきており、そのためお腹は空いていません。
私は「大丈夫です。お気遣いありがとうございます」と返します。
新月さんはそんな私に聞き方を変えます。
「ここの温泉饅頭がおすすめなの。
出来立てみたいだけど食べない?」
私はそんな新月さんに「はい」と返します。
私たちは温泉饅頭を2つ買います。
温泉饅頭はコンビニの肉まんが入っているような正方形の紙の袋に入れられていました。新月さんはそれらを吊り下げる様に角をつまんで受け取ります。私は下から支えるような形で受け取ろうとします。
「熱いから上を持ちなさい」「熱いから上を持って」
新月さんとお店の方がほぼ同時にそう注意します。ですが、その注意は間に合いませんでした。私は既に温泉饅頭に触れていました。
「あっつっ」という声を出して、すぐさま手を引っ込めます。あまりの熱さにへんな笑いが出ます。両手を振って手を冷まします。
「大丈夫」
新月さんが心配そうに聞きます。私は「大丈夫です」と言って今度は角をつまむようにして温泉饅頭を受け取ります。
私達はお店の前にある長椅子を借りて温泉饅頭を頂きました。
しばらく冷ましてから温泉饅頭を持ち、紙の袋をめくるとさっきの湯気と同じ温泉の匂いが漂ってきます。
温泉饅頭は饅頭にしては大きいテニスボールほどの大きさで、空気の入った白い皮にこしあんが包まれています。表面上部には温泉饅頭のアイデンティティともいえる温泉のマークの焼き印が押してあります。
そんな温泉饅頭を新月さんは喰らい付くように、私はちぎって食べ始めました。
表面積は2乗に比例し、体積は3乗に比例します。つまり饅頭は大きくなるほど表面積と体積の比が体積側に傾きます。
そのため、饅頭を大きくするとその分あんこの比率が多くなり甘味が過多になります。
それを解決するために、この温泉饅頭は皮を厚くしていました。目算ですが皮は1cm程の厚さがあります。そうなると今度は皮が過剰になります。
ですが、この皮には空気が多分に含まれているため、そのようなことにはならず皮とあんこはちょうどいいバランスになっていました。
そして、皮には塩気が含まれており、それがあんこの優しい甘みを引き立ててくれます。
「おいしいでしょ」
新月さんは得意げにそう聞いてきます。
私は「おいしいです」と答えます。新月さんは「そうでしょ」と言って嬉しそうに笑います。
新月さんの笑顔のせいか、温泉饅頭が美味しいせいか私の顔も少し緩みます。本当に温泉饅頭は美味しいです。
「他にもおすすめのお店があるのよ」
新月さんはさらに得意げにそう言います。少し子供っぽく可愛い気がします。
「そうなんですか?」
私はそう相槌を打ちます。
「そうよ。こういうお店に行きたいとか言ってくれれば、紹介するわよ。
私温泉街には詳しいから……」
新月さんは自慢話をする様にそう言います。温泉街は新月さんの庭みたいなものなのでしょう。
私は少し考えました。
饅頭を一口食べると温泉の香りが鼻を抜けます。
「足湯に入りたいです」
私はそう言いました。入り口の足湯に思考が引っ張られています。
新月さんは「分かったわ。それを食べたら私のおすすめの足湯カフェに行きましょ」と言って紙袋を畳みました。新月さんはもう温泉饅頭を食べ終えていました。
私は温泉饅頭を大きめにちぎります。
それをみて新月さんが「焦らなくてもいいから、ゆっくり食べなさい」と言ってくれます。
私は大きめにちぎった温泉饅頭を2口で食べました。
温泉街の中腹辺り、その一本筋をそれたところに新月さんのおすすめの足湯カフェがありました。
木を主体とした和モダンと言った外装の建物です。
中は和紙を張った電灯の優しい光の元、板張りの床に60cm×3m程の長方形の穴が規則正しく空いてあり、その中が足湯になっています。足湯の側には臙脂色の座布団が並び、足湯の上には四角い木のテーブルが覆いかぶさっていました。
私たちは2人掛けの席へと通されました。
座布団に腰を下ろすと靴下を脱ぎ、足湯の中へと足を入れます。芯まで冷えたふくらはぎの表面が温かくなります。その熱がだんだんと中芯へと中芯へと向かってきます。
とても贅沢で幸せな時間です。私は恥ずかしながら両手を枕に机に伏せてしまいました。だんだんと頭がボーっとしてきて、このまま気持ちよく眠ってしまいそうです。
新月さんはそんな私を見て笑いました。私は寝起きのような顔を上げて新月さんの方を見ます。
新月さんは「満足してもらえてよかったわ」と言います。
私は我に返り身体を上げます。
新月さんは何も言わずにメニュー表をとり、私の方へと向けて開いてくれました。
私は一通りメニューに目を通します。
しばらくすると新月さんが「どれにするかきまったかしら」と聞いてきました。
私は指をさしながら「温泉コーヒーにします」と答えました。
温泉コーヒーです。
恐らくただのブレンドコーヒーなのでしょうが『温泉』と着くと気になってしまいます。
新月さんはそんな私に「いろいろあるのだからもう少し変わったものにしたらどうかしら」と言います。
私は「そう言う新月さんはなににするのですか?」と尋ねました。
新月さんは「私はこれよ」と言って、みかんフロートを指で指しました。指す指はまっすぐに伸び、ビシッという効果音が聞こえそうなほどに力強くありました。
先ほども言いましたが、私の中の新月さんは背伸びをしているイメージがあります。
私の思う新月さんこそ温泉コーヒーを注文してそうです。そして、苦手なコーヒーをブラックのまま平気な顔を作って飲んでいる姿が容易に想像できます。
そのため、私の口からは「意外です」という言葉が飛び出ました。
新月さんは「たまにはこういうのもいいわよ」と『たまに』と言う部分に力を込めて言いました。その言い方でいつも注文しているだろうことがバレバレです。
私はクスクスと笑いそうになるのを我慢しながら「それもそうですね」と言って、もう1度メニューに目を通します。
そして、抹茶セットに変更しました。
私たちは、注文の品が来るまで、足湯につかりながら雑談をして待っていました。
好きな食べ物の話、好きな本の話等と言ったことを話します。
そう言った話をしていると時間がすぐに流れ、店員さんが注文の品を持ってきました。
店員さんは先ずはみかんフロートをお盆から新月さんの前に置きます。
みかんフロートはシャープな形状の逆三角形のグラスにみかんジュースと炭酸水が注がれ、その上にアイスクリームが乗っています。アイスクリームには砂糖漬けにしたみかんの皮が練り込まれていて、アイスクリームの白色にみかんの温かな橙色が良く映え美しです。
新月さんはそんなみかんフロートを前に鼻歌を歌いだしそうなほど上機嫌になります。
次に店員さんは私の前に抹茶セットを置きます。
私の注文した抹茶セットは、抹茶に三色団子が2本ついています。抹茶は白を基調とし藍色で模様が描かれた茶碗に入っており、三色団子も同様の模様のお皿の上に載っています。
私は新月さんみたいに浮かれることはなく、普通に抹茶セットを受け取ります。
店員さんは最後に注文の確認をして帰っていきます。
店員さんが返ると私達は示し合わせたかのように同時にみかんフロートと三色団子に手を付けます。
三色団子の優しいあんこの甘みが口の中に広がります。
私は1本目の三色団子の3つの団子の内、2つを食べると1回皿の上に置きました。
そして、新月さんに「抹茶と和菓子が出てきたら、和菓子から食べるのが正しいらしいですよ」という何処かで聞きかじった知識を披露しました。
新月さんはストローから口を離して、「そうらしいわね。まぁ、ここは茶室じゃないんだから、気にしなくていいと思うけど」と言い、スプーンに持ち替えます。
新月さんがそう言うので、団子はまだ4つ残っていますが抹茶に手を付けます。
団子を2つも食べているせいか、苦味を強く感じます。ただ、苦味の中に不思議ですが海苔のような香りを感じます。
抹茶を置くと1本目の三色団子の最後の1つを口に入れます。
そこで、新月さんがアイスクリームを食べていたスプーンを置き「三色団子って、色によって味が違うのかしら?」と聞いてきました。
気にしたことはありません。ただ、言われてみると疑問に思えてきます。
有名な話ですがかき氷のシロップはすべて同じ味らしいです。しかし、言われなければ気づけません。ならば、三色団子がすべて同じ味でも、それぞれの色にあった味だと思い込んで食べ、気づかない可能性があります。
「どうなんでしょう?少なくとも緑は抹茶味のような気はします」
私は自信がないながらにそう答えます。
新月さんは「私も今度食べるときに意識してみるわ」と言って、みかんフロートのアイス部分を口に運びます。アイスクリームはとても美味しいのでしょう。新月さんは子供らしく頬っぺたをおさえます。
私はよく注意しながらもう1本の三色団子に手を付けます。注意して食べれば注意して食べる程、なんだかよくわからなくなります。
足湯カフェから出ると、私たちは勉強会のために新月さんの家へと向かいます。
足湯に入ったためか、昼が近づいたためか、私はふくらはぎが寒いと思わなくなりました。
そのころには温泉街の人の数はさらに増えて、夏の土曜夜市程もの賑わいになっています。
そんな人混みの中で2人歩いていると、突然新月さんが私の手を握りました。足湯で温まった体に、新月さんの夜の様に冷たい手が気持ちよく感じます。
新月さんは私に「はぐれるといけないから、温泉街を抜けるまでは我慢して」と言います。私は特に何も思わず「はい」と答えます。
温泉街を抜けると、新月さんは言葉通り私の手を離しました。そして、1人で歩き始めます。私は手に心細さを感じながら新月さんの後ろをついて行きます。
10分ほど歩くと新月さんの家に着きました。私は新月さんの母君に手土産を渡し、2階の新月さんの部屋へと向かいます。
「気を遣わなくてもいいのに……」
新月さんは2階への階段を上りながらそう言います。
「いえ、お昼もいただくのに手ぶらでは失礼です」
私はそう返します。
「あなたは本当に真面目ね。ところで、手土産はなにかしら?」
「母からは和菓子の詰め合わせと伺っています」
「いいわね」
新月さんは舌なめずりをする様に笑いました。新月さんも甘いものは大好きみたいです。
階段を上り2階に着くと、新月さんは一番手前の左側の扉を開けました。そこが新月さんの部屋でした。
新月さんの部屋は、私の部屋程ではありませんが、シンプルです。
部屋の中にはベッドと勉強机、箪笥、後本棚のみしか見えません。本はすべて本棚に、衣服などが箪笥にしまってあります。
私が昔遊びに行ったある友人の部屋とは大違いです。因みにその友達の部屋は、自作のぬいぐるみが部屋にたくさんあり、標本棚と言っている古生物の模型を並べる棚があったり、壁にカンブリア紀やオルドビス紀などのCG再現ポスターが張られていたり、ミシンなどの裁縫道具が勉強机を占拠していたりとなかなかにごちゃごちゃしていました。
その友達の部屋と同じくらいの広さのはずなのですが、新月さんの部屋の方が1回りほど広く感じます。それにほのかにですが甘さのない華やかなフローラル系の香りがして、落ち着きます。
新月さんはベッドの下から80×120程の大きさの折り畳みテーブルを出して部屋の真ん中に置きます。私たちはそのテーブルに隣り合う様に座り、新月さんの部屋での2人っきりでの勉強会を始めます。
私の苦手教科を新月さんが補い、新月さんの苦手教科を私が補う。そうやって満月 雅という水平線に浮かぶ満月のように大きな目標へと向かいます。
勉強はとてもはかどり、時計は見張っていないと針が不連続に進んでいるのではないかと思うほどに早く進みます。
2時間ほど経つと、昼食をいただくため2人でダイニングへと降ります。昼食はカレーでした。
やはり我が家の味つけは薄味みたいです。
新月家のカレーは濃く辛く感じます。ですが、新月さんと食べるカレーは美味しかったです。
昼食を終えるとすぐに部屋に戻り、勉強会を再開します。
勉強会を再開して体感で30分ぐらい(実際には1時間半ほど)経つと、扉がノックされました。
新月さんは私に教える手を止め、「少しごめん」と言って立ち上がり、扉の方へと向かいます。扉の向こうには新月さんの母君がいて、言葉を2、3言交わすとお盆を受け取りました。
新月さんは私の方を向くと、嬉しそうな顔で「休憩にしましょう」と言いました。
新月さんがお盆をテーブルに置き、私の横に戻ると、おやつの時間の開始です。
新月さんの母君から受け取ったお盆には私の持ってきたお土産の和菓子と温かいお茶が乗っていました。和菓子には最中、どら焼き、栗饅頭、そして……三色団子がありました。
新月さんは三色団子に視線を注いでいます。足湯カフェの事があり、三色団子の味が気になって仕方ないのでしょう。ですが、三色団子に手を付けようとはしません。
私が客であるので、私が持ってきた和菓子なのですが、私が選ぶまで待っているみたいです。
私はどら焼きを手に取りました。それを見て、新月さんはやっと三色団子に手を伸ばします。
新月さんは三色団子に手を取るとしっかりと目をつぶり、そのまま三色団子の包装を開け、口へと運びます。
ちょっとした物音を立てることさえ憚られるほどの真剣な表情で、団子を舌の上で転がすようにしながら、味を吟味していきます。その表情は、女の娘の小さな体からは想像もできないほどに、凛々しく美しいものでした。
三色団子を食べ終わると新月さんはパッと目を見開き、自信満々に「全部違う味ね」と言いました。
私は「そうでしたか。それで、何味なのでしょう」と聞きました。
新月さんは何も言わずにお茶を飲み、「やっぱり和菓子にはお茶が合うわね」と言いました。私はそれ以上追及するのをやめ、どら焼きを口に入れました。
それから、私は最中、新月さんは栗饅頭を食べ休憩が終了しました。
私たちは夕方まで勉強会をしました。勉強会が終わると当たりが暗くなっておりました。そのため、新月さんと部活から帰ったばかりの高薙さんに、駅まで送ってもらうことになりました。
電車に乗り席に座ると、車窓から2人に手を振ります。
電車が発車し、2人の姿が見えなくなると、私はカバンから英単語帳を出そうとしました。
ですが、それを辞めました。
今日は私が高校生になってから最も充実した1日でした。
勉強は進みましたし、温泉街の散策は楽しかったです。それに、新月さんの子供っぽいような意外な一面を知れて仲良くなれました。
私はそんな幸せの余韻にただ浸かるために英単語帳を開きませんでした。
次の日。私は普段の休日のように学校の自習室で1日勉強をして過ごしました。
自習室からの帰り際に有象無象とすれ違いました。有象無象は有象無象内での話に夢中らしく私に存在に気づいていないみたいでした。
私は有象無象に気づかないように通り過ぎ、G城前駅へと向かい、電車に乗りました。
そして、私は懺悔室の中で独り考えました。
私は有象無象が嫌いです。でも、今の私は有象無象と大差ないのだと……。
ですから、明日は……明日こそは部活に行くと心に決めました。
私は有象無象や半端者とはちがうのだから……。
次の日。
私はいつもと同じように目を覚まし、いつもと同じように学校に行き、授業を受け、今日こそは部活に行きます。
放課後になり荷物を持って教室の扉を開けると、今日も扉の前で新月さんが待ってくれていました。
新月さんは私を見ると笑みを浮かべます。反面、私の心はその笑みに歪みます。
新月さんは今や私の一番の友達なのかもしれません。それなのに、私は新月さんの期待に応えられないのです。
私は心苦しさを感じながら「ごめんなさい。今日は部活に行きます」と新月さんに言いました。
今日も新月さんは私の手を強引につかんで図書室へと連れ去ってくれると思っていました。ですが、新月さんは「ごめんなさい」と謝りました。
そして、「代わりに今度の休日また勉強会できないかしら」と言ってくださいました。
私は「大丈夫です」と答えます。
そして、私たちは分かれ、新月さんは図書室に、私は部活へと向かいます。
卓球部の部室の前まで来ると、私は何故かそこで立ち止まってしまいました。
ドアノブに手を掛けようとしますが、私の手はそれを拒否します。それでも、手を伸ばします。
その時、部屋の中から有象無象の話し声が聞こえました。よりによって、すごく楽しそうな笑い声です。耳障りです。
私は独り有象無象に背を向けて着替え、独り準備運動をし、独り走り、独り素振りをし、独りサーブ練習をする。
そんな時間をこれから過ごすのです。私はなんて惨めなのでしょう。
それでも、それが私の義務なのですから逃げるわけにはいきません。
それなのに、何故か私は踵を返し卓球場から逃げる様に図書室へと向かってしまいました。
図書室の扉に手を掛けると私は踏みとどまりました。
『もう一度よく考えなさい。
今は部活の時間なのです。
先ずは扉から手を離す、そして、来た道を戻り、部室のドアノブを回しなさい』
私は心の中で自分にそう命令します。私は、素直で良い子のはずなのに、その命令を聞こうとしません。
それでも何とか振り返りました。
すると、そこには新月さんが居ました。
新月さんは手を拭いていたハンカチを胸ポケットにしまうと、私の横を通り図書館の扉に手を掛けます。
私は新月さんに無視されたのだと思いました。無視されても当然ではあります。私は新月さんの誘いを断ってしまったのですから……。
それに、断って部活に行くと言ったのに部活にさえ行けなかったのですから……。
でも、新月さんは図書室の扉を開けると私に向かって「勉強会するわよ。早く入りなさい」と命令してくれました。私は新月さんに続くかたちで図書館の中へ入りました。
図書館の中は明るく、温かく、優しかったです。
読んでくださりありがとうございます。
もし面白いと感じていただけたなら、11月24日か25日の22:30投稿予定のep4も見ていただければ嬉しいです。
因みに『虚ろな月とルールの檻』は次回が最後になります。
[感想]
今回は主人公と新月 虚との出会いの回になりました。
話は変わりますが、高校時代休日に外出するときも制服を着て外に出る様にしていました。
私服は持っていたのですが、母親が買ってきたもので、気に入りませんでした。だからと言って自分で買いに行くといった気も起らなかったので、服装は制服固定でした。
ただ、安心してください。この物語の主人公とは違い、私はそれが普通ではないことを理解はしています。
ですが、高校の時の友人は、休日に制服を着てきたぐらいで私に幻滅するような人たちではなかったので、それも私らしさとして許される関係だったので、制服で通しました。
因みにですが、社会人になった今は制服がスーツに変わっただけで、休日も基本スーツを着ています。ただ、休日は休日用の派手な赤色のネクタイを付けて、休日用の眼鏡をかけて、休日用の水色のシャツを着ています。
ですので、実質私服です。




