変遷
AIとの共同執筆です。
アルドにとって、そのダンジョンはもはや自宅と同じくらい馴染みの場所になっていた。
壁に染み付いた血の匂い、影に潜む魔獣の気配、罠が放つ微かな錆びた鉄の匂い…。
かつては心拍数を跳ね上げたそれらすべてが、今や数え切れないほどの反復によって、無機質な事務作業へと成り下がっている。
彼は欠伸を噛み殺しながら、暗闇の中を松明を片手に歩いていた。
今の彼にはこの状況で警戒心を持つことは難しかった。
今や彼にとってこのダンジョンに来る理由は冒険心などかけらも無くただただ効率よく素材を集めるためだけの退屈な作業へと成り果てていた。
「えっと、次はここに罠があって、っと。
そんでそこの角曲がるとコボルトが二匹…ほらね。」
慣れという毒が、彼から恐怖と危機感という名の生存に必要な安全装置を取り去っていた。
彼は知らなかった。
彼が前回このダンジョンに来てから今日までの間にある冒険者がここに挑み、対モンスター用の罠を一つ道の真ん中に設置していたのだった。それを彼はいつもと同じ、という思い込みで気付かず踏んでしまったのだ。
ここがもし彼にとって初めての冒険の地であったなら。あるいは彼がもっと警戒を、危機感を持って行動していれば回避できたであろう隠されてすらいなかった死のトラップ。
全ては彼の慢心による事故だった。
慣れが彼の危機感を消滅させてしまっていたのだった。
乾いたクリック音がなった瞬間、逃げ場のない鉄の杭が、無防備な彼の脇腹を深く抉り抜いた。
「ぐああああああ!?!?」
肺腑を灼くような激痛が、泥のように濁っていた意識を一気に真っ白に塗り潰す。
「なん、だこの、罠は!?こんな、ところにこんなもの、なかったはず、だ、ろ!?」
そして直後、溢れ出す鮮血の熱さが、喉の奥にせり上がる鉄の味が、忘れていた「死への純粋な戦慄」を全身の細胞に叩き込んだ。
皮肉なことに、視界が崩れ落ちていく絶望の淵で、彼は何年ぶりかに「今、俺は生きている!!」という狂おしいほどの生の実感を、魂の底から噛み締めていた。




