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愛されてはいけない理由  作者: ねここ


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崩れゆく現実

「…………マリア、戻ろうか」


 エリゼは何事もなかったかのようにマリアに話しかけ、手を握り、先程の会場へと戻った。

 

(先程は、なんだったのでしょうか?)


 エリゼに聞く勇気が出ない。


 だが、ニーナに関係がある。そんな予感がし、一抹の不安が胸に残る。


 しかしマリアはエリゼに全てを話せるメンタルに至っていない。

 だから自分からそれについて口を開くことが出来ない。

 

 何かあればエリゼは話してくれるだろう、そう思い込み気にしないことにした。

 だが、そう思いながらも気持ちは晴れない。


 

 お茶会も終わりエリゼと共に部屋に帰る途中、マリーザがマリアを待っていた。


「マリーザ? 何かあった?」


 マリアはマリーザが待っている事に少し戸惑う。

 

(エリゼに聞かれてしまうかもしれない)


 だが、いつまでも隠すこともできない。

 

 エリゼはマリアの心境を察したが、あえてその場から動かない。

 マリーザもエリゼの反応を察し、マリアの気持ちは理解できるがあえてエリゼの前で話すことを選択した。


「マリア様、ニーナ様がマリア様にお会いしたいとおっしゃっています。いかがしましょうか?」


 マリーザの表情は硬い。ニーナの態度がそうさせているのだとマリアにはわかる。


(行きたくない……)


 だが、それを言うことはできない、それを選択することもできない。

 

「すぐに行きます。エリゼ様少し失礼しますね」


 マリアは精一杯の笑顔を浮かべエリゼの手を離した。

 しかしエリゼは一度話したその手を掴み言った。


「マリア、その人はここには置いておけない。気がついたのならすぐにこの城から出てもらう」


 驚くマリアにエリゼは毅然とした態度を示した。マリアは目を見開きエリゼを見つめる。

 

(何か、感じてくれている)


 目の奥が熱くなる。だが、ニーナは何も悪くない。悪いのはマリアなのだ。

 マリアは息を飲み、口をひらこうとする。 


「エリゼ様、私はマリア様のメイドですからマリア様にお仕えしたいです!」


 突然マリーザはエリゼに直談判する。

 本来ならあり得ない行為だが、エリゼはマリーザの言葉からニーナの性格を察した。


(やはりニーナはマリアにとってよくない存在ということか)


「心配するな。マリアもお前が好きだからすぐに戻す」


 エリゼはマリーザに頷き言った。

 マリーザはエリゼに言いたいことが伝わったと内心安堵した。

 ニーナはマリアにとってよくない存在だとエリゼに言いたかったのだ。

 

「陛下、ありがとうございます!! マリア様は私がお守りいたします」


 マリーザの言葉にエリゼはゆっくりと頷く。

 ニーナをマリアと会わせたくない。ただ、マリアが会うことを望むのなら仕方がない。

 

 一方でマリアは戸惑っていた。


(マリーザがこんな事を言うなんて……)


 ただ、それがどのような意味を持つのかマリアにはわからなかった。


「マリア、行きたくなければ行かなくて良い。ここはマリアのいた世界じゃない。それだけは忘れないでくれ」


 マリアはその言葉に頷き言った。


「大丈夫です。ニーナさんは知り合いですから、きっと一人で心細いでしょうから励ましたいと思っています」


 マリアはそう言ってニーナの部屋に向かった。

 

 エリゼはマリアの後ろ姿を見つめながら執事のレオネにニーナの監視を指示した。


  *


 先ほど、庭園で城の一室から異様な気配を感じた。


(あの女、ニーナがマリアを見つめていた。その瞳に殺意があった。だから俺はすぐに反応した)


 エリゼは唇を結ぶ。


 マリアとニーナ、何があったのかわからない。ただ、ニーナには得体の知れない不気味さがある。

 マリアはニーナとのことを隠したい。その行動に不満はない。マリアが隠したいのならそれでいい。


 なぜなら今のマリアがエリゼにとってのマリアだからだ。


  *

 

「ニーナさん、マリアです」


 マリアはマリーザと共に部屋に入った。


「マリーザさん、少し出ててもらえますか?」


 ニーナは冷たい視線をマリアに向け、マリーザに言った。

 マリーザはその視線に背筋が寒くなる。こんな状況でマリアを置いてゆきたくない。


「マリーザ、部屋の外で待っててくれる?」


 しかしマリアはマリーザに出てゆくよう指示した。マリーザは重ねた両手を握る。

 

 マリアは心配そうに見つめるマリーザに微笑みかけ、小声で大丈夫よ、と、言った。

 マリーザは不本意だったが部屋から出た。


 ニーナはマリアから視線を逸らさず、眉間に皺を寄せ言った。

 

「マリアさん。お久しぶりです。突然居なくなったと思ったらこんな所に居たんですね」


 ニーナの棘ある言い方にマリアは息を呑む。

 

「……そうですね」


 その問いに応えるのが精一杯だ。

 

「まさかこんな所で人生やり直しですか? 誰も知らない所ですしラッキーですね」


 ニーナは青ざめた顔をし、唇を結ぶマリアを見て嬉しそうに話を続ける。

 

「……その通りです」


 反論もできない。実際その通りだからだ。

 


「さっきの人誰ですか?」

 

「さっきの、人?」


 マリアは誰のことかわからない。


「庭で一緒にいた人ですよ、すっごいカッコいい人ですね。新しい彼氏ですか?」

 

 その言葉に息が止まる。

(ああ、だからエリゼ様はあの時一瞬止まった。ニーナさんを見たのね)

 

「こ、この世界の皇帝です」


 マリアの声が震える。平常心を保てない。

 ニーナに見られてしまった今、全てが崩れてゆくような感覚になす術がない。 


「うわー、流石ですね。あの頃と何にもかわってないんですね。お兄ちゃんが生きていたらどう思うかしら?」


 ニーナはマリアの態度に全てを察した。マリアは過去を話していない。隠している。

  

「……」


 マリアは答えることが出来なくなった。体が小刻みに震え始める。

 犯した罪はどこまでもマリアを追いかけ、その幸せを奪う。マリアに幸せになる権利はない。

 

「黙っちゃうんだ。へぇ、人を殺しておいて自分だけ幸せになろうだなんて、流石ですね!」

 

「……」


 その言葉に立っていられなくなる。壁に手をつきよろけそうになる体を支える。 


「何も言い返さないんですね。事実だから。私、あのかっこいい人に会いたいです。もちろん紹介してくれますよね」

 

 マリアは何も答えられない。拒否することもできない状況。

 

「あ、ところであのかっこいい人あなたの過去知っているんですか? ああ、知ってたら逃げられますもんね。そしたら私に下さいね!」

 

 マリアはニーナの言葉に何一つ答えることができない。

 ニーナの幸せを奪い、自分だけ幸せになることは許されない。

 全てマリアがしたことだ。

 

 ニーナの言葉を浸すら耐えることしか今のマリアはできなかった。 


「話はそれだけです。ご紹介、楽しみにしてますね」


 ニーナはそう言ってドアを開けた。出てゆけという意味だ。

 マリアは黙って部屋を出た。


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