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黒山羊様の導きで異世界で令嬢になりました  作者: sisi
第二章 シャルロッテ嬢と悪い種

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62話 学者です

「3度も?」

ギルは目を真ん丸にして聞いてきた。

「不思議な生き物というなら黒山羊様の落ち仔と高慢の種と馬頭鳥で3体ですね。3度というか落ち仔とは一緒に暮らしているもので正確ではないかもですが」

「一緒に暮らしている!!?」

「ええ、私のペットなんです」

 信じられないというように頭を抱えている。

「ギル、ちょっと落ち着こうか。高慢の種の話は知ってるよな?」

「ああ、僕のところにも問い合わせが来たからね。最近種の取引を持ち掛けられたことはないかとか、そういう話を聞かなかったとか」

「その当事者が彼女なんだ。種を落ち仔と撃退して、他の子供に寄生された種も無力化したんだ」

「そんな事が! 何故、私に誰も教えてくれなかったんだ! 聞いたらすぐに飛んでいったのに!!」

「何故ってそれはお前がここに籠って、人付き合いもないがしろにしている変人と名高いからだろう。だから普段から外へ目を向けろと言っているんだ」

 詩人が呆れた様にため息をついている。

「それでどうやったのだい? 黒山羊様の力の破片を落ち仔が持っていたのかな? それとも呪文で撃退した? 魔法陣を使って? さあさあさあ、遠慮なく話して!」

 テーブル越しに詰め寄ってくる学者にあっけにとられてしまう。

「アインホルン様、落ち着きになって。私もその生き物の話が聞きたいのです。あなたの話だと退ける呪文や魔法陣があるということですよね?」

「ああ、アインホルンなんて堅苦しい。私の事はギルと呼んでくれ。人に寄り添う神や共存できるモノはともかく、攻撃性の高いやつらと人類の間にあるのは侵略と撃退の歴史だからね。特に高慢の種の元になる妖虫(シャン)。シャン、シャーン! あいつらに治世者の頭を乗っ取られてみろ! あっという間に国が傾いてしまう。僕はこう思うんだ。高慢の種をシャンから作ったのは呪術師と言われているが、シャン自体が長く人の苦しむ様子を眺めていられるように呪術師に知識を与えて自らを加工させたのかもしれないと」

 話が止まらないのか、まくし立てるように話をしている。

「勿論バカげた話だ。種になってしまえば自由に獲物も物色出来ない。憑りついた人間が死ねば自分も終わってしまう。だがね? もともとシャンというのは人の頭から頭へと憑依する生き物なんだ。そういう目に見えないもので構築されているのなら、種が消えた時に別に本体があって戻ることも可能じゃないかとね。どこかにそれがあって一部を種として感覚を共有しているかもしれない。そう思わないかい? ああ! 想像が尽きない!」

「ああいう生物なら、そういう事もありそうですわね」

「ああ、そうだろうそうだろう、君もそう思うね? 彼らは元々シャッガイという緑色の太陽のある別の惑星にいたと言われている。その太陽は彼らに力をくれたが、愚かにも破壊衝動を抑えられずに自分の星を滅ぼしてしまってね。宇宙を旅してたどり着いたのがこの星というわけなんだ。でもこの星の太陽とは相性が悪いらしくて、本体が日光に当たると死んでしまう。だが加工した種ならどうだ! 太陽の下でも死ぬことがなく相手を支配下における。素晴らしい!」

 ガリガリとテーブルの上の紙に絵を描いていく。


 ぱっと見はラッパの様な口が三つ付いた大きな目のテントウムシの様な感じだ。

 こんなものがあの種の元になっていたのか。さすが学者である。

 誰もはっきりと説明しなかったことをここまで詳しく知っているとは。

「とても詳しいのですね。別の星から来たなんて夢の様な話です」

 宇宙空間を自分で飛んできたのか、宇宙船を使ったのかなんとも不思議な話である。

 そもそもこの世界に別の星という概念があるのも私は確認していなかった。

「これはあくまで彼らからもたらされたことだけどね。神話生物というのは宇宙と関係するものが多い。そして人類に魔道や知識を与える代わりにその命や苦痛を生きる糧するのさ。あるいは自分の神を招く為の生贄にしたりね。おかげで対策もある程度確立されている。でなければとっくにこの世界は彼らのものになっているだろうね」

 彼の言う招かれる神というのは黒山羊様ではないものだろう。

 黒い雄牛の様な別の神を信仰する者がいて、ここに呼ぼうとしている?

 この世界は黒山羊様のものであるはずだ。そんなことは許されるのだろうか?

 クロちゃんが種を撃退したように神様もなにがしらの方法でバランスをとっているのかもしれない。

「あなたの様に神話生物に造詣の深い人が中央で活躍していないのはどういうことだろうか」

 学者の勢いにあてられていた王子がようやく口を開いた。

 確かにいろいろ知ってそうだし希少な存在ではないだろうか?

「王太子殿下、彼は部屋に籠って研究一筋で外見も構わないもので、社交界でも学会でも変人と言われて遠ざけられているのですよ」

 詩人がヤレヤレと肩をすくめて説明する。

「もうちょっと身だしなみを整えて周りに目を向ければいいのですが。お陰でここへ足を運ぶしか話を聞く手がないのです。それに神話生物に関しては大昔のお伽話だという輩もいますし研究する者はごく少数という報われない学問ですね。呪術師には人気の分野ですが」

「ああ、そういえば私もあの件がなければ夢物語で済ませていたと思う。あなたの様に熱心に研究する人も必要だと今は考えている。今後、改善しなければいけないね」

 確かに彼がいなければ呪術師と接触して話を聞かなければならなかったのだ。

 どんなことも学問として研究するのは大事なのだと思わせてくれた。


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