↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/17

『賑やかな図書室と、ふたりの距離』

放課後の旧図書室に、今までにはなかった賑やかな声が響いていた。


「ちょっと幸星! ここ答え違うじゃん、ちゃんと計算してよ!」

「叫ぶなよ佳鈴、図書室だぞ。……まあ、誰もいないけどさ」


新しくやってきたのは、同じ学年の東佳鈴と横田幸星だった。賑やかで世話焼きな佳鈴と、どこかつれない態度を見せつつも佳鈴に付き合う幸星。二人が加わったことで、静かだった図書室は一気に明るい雰囲気に包まれていた。


「諒、美月ちゃん! ここの問題さ、教えてくれない?」

「あ、うん! ええとね、ここは――」


美月が佳鈴のノートを覗き込んで教え始める。その様子を、幸星は少し離れた席から呆れ顔で見守りつつ、諒に向かって小さく苦笑いを浮かべた。


「なんか急に押しかけちゃって悪いな、宮川」

「いや、別にいいよ。賑やかで楽しいし」


言葉を交わしながら、諒の視線は自然と美月に向かう。

佳鈴と楽しそうに話す美月の横顔を見つめていると、不意に美月がこちらに気づき、ふっと柔らかく微笑んだ。そして、佳鈴たちの目が届かない机の下で、そっと諒の制服の裾を指先で引っ張ってくる。


(――みんながいるけど、諒は私の特別な人だよね?)


言葉には出さないけれど、伝わってくる小さな主張。前回の図書室で想いを確かめ合ってから、二人の間の雰囲気は確実に変わっていた。大勢の中にいても、お互いを意識する視線や、隠れた触れ合いが二人だけの合図になっている。


佳鈴が「あ! このあとみんなでアイス食べに行かない?」と提案すると、幸星が「俺はパス。佳鈴と二人だとまた荷物持ちにされる」と冗談めかして断り、佳鈴が「なによそれ!」と怒ってみせる。


そんな二人のやり取りにクスリと笑いながら、美月は諒の手に自分の手のひらをそっと重ねた。佳鈴や幸星には見えない角度で、指と指を静かに絡めていく。


「諒、後で……二人で少しだけ遠回りして帰ろ?」


耳元で小さく囁かれた声に、諒は胸の奥が熱くなるのを感じながら、握り返す手にしっかりと力を込めた。友人たちに囲まれた賑やかな時間の中でも、二人だけの特別な領域は、より深く、より確かに育まれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。