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『テストの終わりと、小さな小旅行』

テスト最終日のチャイムが鳴り響いた瞬間、教室中が張り詰めた空気から一気に解放された。誰もが解放感に浸り、友達同士でこれからの予定を大声で話し合っている。


そんな賑やかな教室の後ろの席で、諒はそっと美月に視線を送った。美月は友達に囲まれて楽しそうに笑っていたが、一瞬だけ諒の方を振り返り、悪戯っぽくウインクをしてから、人差し指を一本立てて見せた。「10分後に、いつもの場所で」という、ふたりだけのサインだった。


荷物をまとめて新校舎を出た諒は、渡り廊下を通り、今は使われていない旧校舎の図書室へと向かった。

重い木製のドアを開けると、そこにはすでに美月が待っていた。窓際に立ち、外を眺めていた彼女は、ドアの音に気づいて嬉しそうに駆け寄ってくる。


「お疲れ様、諒! やっとテスト終わったね!」

「お疲れ。……美月、今日はいつもと違う場所に行ってみないか?」

「えっ、どこに行くの?」


美月は目を輝かせて諒の顔を覗き込んだ。


「ここから自転車で20分くらいのところに、海が見える古い展望台があるんだ。テストも終わったし、ちょっと遠出してみようと思って」

「行く! 諒とのお出かけなら、どこでも行きたい」


美月は迷うことなくそう言うと、諒の腕を軽く引っ張るようにして歩き出した。


学校の敷地を出て、ふたりは諒の自転車に二人乗りをして坂道を下っていった。

美月の細い腕が諒の腰にしっかりと回され、彼女の背中が諒の背中にぴったりと寄り添う。風を切る爽快感と、背中から伝わる彼女の確かな体温に、諒の胸は高鳴り続けていた。


たどり着いた展望台からは、夕日に照らされて黄金色に輝く海が一望できた。

誰もいない静かな高台で、心地よい海風がふたりの髪を揺らす。


「すごいきれい……! 諒、連れてきてくれてありがとう」

美月は柵に寄りかかり、満面の笑みで海を見つめていた。その横顔があまりにも綺麗で、諒は思わず息を呑んだ。


「美月」

名前を呼ぶと、彼女が不思議そうに振り返る。諒は一歩近づき、風になびく彼女の髪をやさしく耳にかけた。


「これからも、テストが終わるたびに、いろんなところにふたりで行こう」

「うん。約束だよ、諒」


美月はそう言って、今度は恥ずかしそうに、でも嬉しそうに諒の手をぎゅっと握りしめた。海に沈んでいく夕日が、ふたりのシルエットを優しく包み込んでいた。

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