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捕まり癒やされし異世界  作者: 波間柏ひかた


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31/31

31.*未来、未来を想像する*

「いや~。朝は特に爽やか! リゾートみたい。まぁ借りてる部屋だけど。でもってお城の中だけど」


初めてトリップしてから季節は移り変わり春から夏へ。親には友達の別荘に泊に行くと伝え、久しぶりに異世界へ来て二日目の朝。


昨日は、グラン君が結界の調査で不在で会えず。ただ、彼のお師匠さんが突然この部屋に現れた。


驚きよりまず私が行動したのは、何処から取り出したのか分からない武器を構えたジュリアさんを止める事だった。


美人の本気は怖い。


と、噂をすればノックの音に返事で返すと。


「お茶をお持ち致しました」


ジュリアさんが、紅茶とスコーンのような物を運んできてくれた。


「ありがとうございます。美味しそう!」


「焼きたてですわ。まだ温かいうちにどうぞ」


「頂きます!」


ぱちんと手をくっつけて早速口に入れたスコーンもどきは最高だった。


それよりも最近ジュリアさんが益々可愛くなっているのは何故だろうか?


窓を開けて風をいれるジュリアさんの後ろ姿は絵みたいに綺麗。昨日の武器を構えた姿もキリッとしてカッコ可愛かったけど。ジュリアさんが振りむいた。


「ミライ様は本日は外出されますか? グラン様は予定では夕方に戻られるようですが」


「うーん。なんか私の勘ですと昼には来そうな予感がする。なので今できる限り用事を終わらせて、午後はグラン君と散歩しながらテニスコートを作る場所を見てみようかなと」


婚約してからグラン君は、用事があっても教えてくれる時間より必ず早く済ませてくるのだ。


私は、ふと机の端に置いてある巾着袋、グラン君のお師匠さんがくれた品をつまみ上げた。


側に寄ってきたジュリアさんがそれを見て、それはそれは悪い笑みを浮かべ嬉しそうだ。


可愛いのに恐い!


「昨日、ラスティア様から贈られた品ですね。今日から直ぐにでも使用されるべきだと思いますわ」


「気が進まないんだけど、やっぱりそう思う?」


私の煮えきらない様子にジュリアさんは、拳をつくり力説しだした。


「あの粘着質な方には必要ですわ! なによりミライ様には特に!」


目をギラギラさせるジュリアさん。

えっと、ジュリアさんってこんなだったっけ?




*~*~*



「乙女ゲームみたいな感じのもいいなぁ。あとなんだろう。男性向けのが全く思いつかない!」


次の発売するグッツの検品は済み、夏の映像を流したいから、その外出の手配もした。一息つく為に一人お茶を飲みながら私は悩んでいた。


最初に立ち上げた『幅広い女子ゲット☆トキメキ作戦』は成功している。あと声優さんの顔バレしたいなぁ。職務的に駄目かな。だってさダンスとかトークショーとか。誕生日イベントなんていいよね!


他国も興味をしめしているし、近々輸出したい。


あとは、ターゲットを広げるか。


「ああ、あと料理番組みたいなのもよいなぁ」


ターゲットが女子だとやりたい事が沢山でてくるのに。


「男性に人気でそうなのって何かな? 城内の男の人に片っ端から聞いてみるか」


「そんなの駄目に決まっています」


「わっ!」


座りながら椅子を揺らしていたので、逆さまにアップのグラン君が現れひっくり返りそうになるが、しっかり椅子の背をつかんでくれたので怪我なしとホッとしたのも束の間で。


チュッ


「!」


書くのに邪魔だからヘアクリップで留めたせいで、オデコ全開なそこにキスをされた。


「リップ音が嫌だ!」


そう叫べば、今度は瞼や鼻にまでされた。

くっそう! 絶対面白がってるよ!


文句を言おうと半身をぐらん君の方に向ければ、抱きつかれた。


「久しぶりですね」


「そうだね。お帰り」


「うん。ただいま帰りました」


そんな、嬉しそうな顔されたら何も反論できない。って、なんかスーハーしている。


「な、何をして」


「えっ? ミライの匂いを堪能してます」


へ、変態がいる!


約5分経過。

約10分経過。


「ねー。いい加減離れて。何にもできないよ」


「ミライは、何もしなくていいです」


──かなり重症だ。


あの出会った時と同一人物とは思えない。最初、とても落ち着いている姿に年上だと思っていたし。


「グラン君」


「グランと呼んで欲しい。なんか子供っぽい呼び方が嫌です」


それに我が儘だ!


でも、こんなに地を出してくれているのは嬉しい。私は、座ったままだから屈みこんでいる彼の体に腕をのばした。


「最近先の事、色々考えてる。嘘は嫌だから本当の今の気持ちは、親には婚約者がいるのはまだ言えてない。世界が違うなんて頭がおかしいと思われるし。大学も来年四年だから就職も決めないとなぁとか」


あっ、体がこわばってる。肩に頭のせられた。テンション落ちてますね。


「問題山積みなんだけど、でも、グランとずっといたいと思う。それは決めたよ」


おっ、ちょっと動いた。


「最初、異世界から来た人は、何か能力があるって言われて、私には何もないと思ってたけど、自分の元の世界と行き来できるのが、能力なのかなって気づいた」


元の世界を捨てる事もなく、新たな違う世界でも生きていける。なんて恵まれているんだろう。


「私は、グラン君のご両親やお姉さんのように消えないから。側にいるから。まだちょっと、かかるけど家族になりたい」


「人は、生き物は簡単に死にます」


うん。

震える彼の綺麗な髪に触れ頭を撫でた。


「だから、護ってくれるんでしょう?」


頭が上がった。いつの間にか膝を床につけているので彼の瞳を見て吸い込まれそうなぐらい綺麗で。


ずっと目を開けている、瞳を見てする強さはないから直前で閉じた。ほんの少しずれたけど、無事唇に着地。


恥ずかしくて。

自分からしたのはこれが初めてだ。


「ミライが悪いんですよ」


「あっ」


なんで恨めしそうに悪いと言われたのか意味を考える時間はなかった。すぐ離れたはずなのに追いかけられ、塞がれた。


今までの、触れるだけだったのとは違った。

角度を変えて強く押し付けられた唇に息ができなくなる。


「…息して」


口付けられたまま囁かれた声に腰が抜けそうになった。


くらくらしてきた時。

プチン…


なんだか首が楽にって、この音は。

ちょっと我にかえった私は、これ、流されゴールしちゃうパターンでは!?


「タイム! 渡す物があります!!」


渾身の力でグラン君を剥がして、あの巾着袋を掴み、中にある一つを取り出した。


「これは?」


「ネックレス。石が二つ通してあるの。一つは私の髪や目の色、もう一つは緑だよ。私とお揃い」


お師匠さんがくれた時、通す部分が繊細なチェーンだったので、グラン君は革ひもにしてみた。


「長さ丁度いい」


グラン君につけてみた。うん、悪くない。


「その緑の石、ペリドットみたい。石は私の世界と違うかもしれないけど、今の季節なんだよ。グラン君の瞳みたいで綺麗だね」


私もつけよう。

あれ?留め具がうまく留まらない。


「貸して」


留めてくれながら、グラン君は呟いた。


「そういえば、今日が誕生日です」

「えっ!? 」


そうなの?!

事前に知っていれば!

今から、なんか作るとか!


「あっ」


指で鎖をなぞられくすぐったい、髪の毛とちょっとしっとりした何かが。


「は、恥ずかしいよ!」


「ミライ、十八になったのでプレゼント…欲しいモノがあります」


手がよからぬ触り方になってきているし。流石に彼の欲しい物とやらがわかった。


うう、でも。


際どいトコにきたので、私の口から出たのは。


「グラン!ステイ!!」


その瞬間、背後の重さは綺麗サッパリ消え、下に視線を向ければべしゃっと潰れたグラン君が。


「ミライ…これは、どういう事でしょうか」


でたよ寒気ボイス!


「え、えっとですね。昨日グラン君のお師匠さんが突然現れまして。それで婚約祝いでくれたんです。チェーンだと切れそうだから紐に私が変えたの。なんかピンチに使えって言われて…」


あっ、顔が床にくっついた。


「あんのジジイが」


怖いよー!

これ、動きを解いたらどうすれば!


よし、とりあえず今は平気なんだし。そろりと頭に触れ、まだ顔が伏せられたままの彼にゆっくり話してみた。


「あの、触られるのは嫌じゃないの」


「……じゃあ、なんでこうなったんですか?」


「真っ昼間で恥ずかしいし、強く掴まれたりすると、ちょっと」


怖いとは言えなくて、言葉がきれてしまった。

グラン君は、とても大きなため息をだし、ゆっくりと起き上がった。


あれ、効いてないの?!

お師匠さんは解除しないかぎり、ずっとそのままって。


「本当に嫌なら、もっと強く念じないと効きが弱くなります。いくら魔力量が俺と同等レベルの師匠の作った品でもね」


手がのびてきた。

怒られると目を閉じたら。


「ごめん。怖がらせた」


頭をゆっくり撫でられた。


「好きすぎて止まらなくなる」


優しすぎる声に目を開けたら、困った顔のグラン君に思わず。


「えっと、嫌じゃないから!」


むしろキスだけで気持ち良すぎておかしくなりそうです。


「本当?」


「うん!」


「じゃあ続きしていい?」


「う、って、いや、今?!」


コクリと頷かれても困るよ。

そんなワンコの目しないでよ!


「昼間っから恥ずかしいよ! それにこれからテニスコート作る場所をグラン君と見に行きたいし」


頭に置かれていた手は私の手を触り、撫でながら絡められて。


うわっ、手なのになんか。


「なら、夜ならいい?」



甘え囁きボイスに私のハート砕け散りました。


軽く両手をひっぱられ立たされた私に満面の笑みのグラン君。ご機嫌ですね。私は、夜を考えると今から心臓ドキドキなんだけど。


そんなの気づきもしない彼は、ニコニコして聞いてくる。


「じゃあ、ご飯テラスで軽く食べて散歩に行く?」


「うん! ってだから恥ずかしいからっ!」


「ミライは可愛いね」



手を絡め歩きながら何度も優しいキスを落とされた。



─END─


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