新部員!!
季節は通り過ぎ夏になった。蝉の鳴き声が聞こえる中、将棋部の部室から賑やかな声が聞こえて来る。
「あぁ!王手飛車じゃん!クッソォ!!!」
「へへぇん!大局観がないね!千春は。」
王手飛車を決めニヤリと笑っているのは空条疾風だ。
「どこからこの手を読んでたの?」
「それは千春が7七桂と跳ねた時かなぁ。」
「そんな前から...」
「いいかい。相手が三手先を読めば四手先を、十手先を読めば十一手先を、読むだけだよ。」
得意げに疾風は語る。疾風が得意そうに物を語るとき、決まって彼の下唇は前に突き出る。
「なんか偉そう!」と言ったみゆちゃんは夏服のブラウスで涼しげな印象を与える。
そしてこの賑やかな将棋部だが実際のところ部員はわずか3名しかいない。
「そろそろ大会だね!一回戦突破を目標に頑張ろうね。みゆちゃんも詰将棋とか頑張ってるし、なかなか私たちいい結果残せそうじゃない?」
「千春。油断は禁物だよ。僕たちが一回戦で当たる神手中学は将棋の名門中学だからね。前大会は地区大会で優勝して県大会ベスト8という輝かしい結果を残している。」
「そうなんだよねぇ。どうしてそんな強いとことやらなきゃいけないのぉ〜最悪ぅ〜」
「まぁ僕たちの中学校は久しぶりに将棋部として活動してるからね。抽選とは言っても何か恣意的な操作があったんじゃないかと勘ぐらずにはいられないよ。」
「まさかそんなことはないでしょう。」
みゆちゃんは冷静に場を整えた。
「まぁ僕たちが強くなればいいだけの話だよ。将棋は実力の世界だからね。」
「あ!いいこと思いついた!合宿しよ!強化合宿!みんなで泊まって一晩中将棋を指すの!」
「まぁいいけど。じゃあ誰か指導してれる人を見つけないとね。僕の知り合いに将棋世界の編集をしている人がいるんだけど中々将棋も強いからお願いしてみようか?」
「素敵!!ぜひお願いするわ!」
「千春、でも夏休みの宿題もちゃんとやらなきゃダメだよ?」
「あ.....」
みゆちゃんは本当に嫌なくらい冷静だ。