プロローグ
新作です。
よろしくお願いします。
本文にするのには文字数が足りなかったのでこちらに入れてあります。
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ーー誰か、彼女を助けて!
玄関の扉をくぐった三人に、屋敷を任せている家令が腰を折った。
「旦那様、奥様、若様お帰りなさいませ」
「ああ、戻った。あの子はどうしている?」
男性の問いに家令は答える。
「お嬢様はお部屋でお休みになっておられます」
「あの子の様子はどうかしら?」
次に問うたのは女性だ。
「ずっと塞ぎ込んでおられます。お食事もあまりお食べになられず、ベッドで過ごすことも多くなっておられます。ですが、皆様のお顔を見られればお元気になられるかと」
三人の顔が曇る。
「そこまで気落ちしているのか?」
「はい」
「領地でトラブルがなければついていてやれたのだが」
男性が眉尻を下げて言う。
「領地のほうも落ち着いたから、これからは一緒にいてあげられるわ」
女性の言葉に青年が頷いた。
「そうですね。ようやくあの子の傍にいられる」
「お嬢様もお喜びになられることでしょう」
「だと、いいが」
領政のほうが忙しかったとはいえ、ひどく傷ついている娘を一人にしてしまった。
「これからですわ。これからあの子に寄り添うのです。今までの分も」
「ああ、そうだな」
過去は変えられない。
できるのはこれからのことだけだ。
一先ず顔だけでも見せようと部屋に向かうと、何やら騒がしい。
「お嬢様! お嬢様! 誰か! お嬢様が!」
女の悲鳴のような声が聞こえ、四人は顔を見合わせ、慌てて部屋に飛び込んだ。
寝室に続く扉が開け放たれており、ベッドに横たわる少女とその枕元で彼女を揺さぶる侍女の姿が見えた。
「ーーっ!」
名前を呼びながら寝室に雪崩れ込む。
侍女が振り向く。
「お嬢様が、お嬢様が息をしておられません!」
その言葉に場が騒然となる。
「医者を呼べ!」
「す、すぐに!」
家令が駆け出していく。
三人はベッドに駆け寄り、必死に少女の名前を呼ぶ。
その場を退く形になった侍女はぎゅっと拳を握った。
他の使用人たちも集まってきてざわついている。
やがて医者が駆け込んできた。
医者は少女の脈を見たり、呼吸を確かめ、瞼を持ち上げて反応を確かめたりした後、三人を見て、静かに首を横に振った。
女性がわあぁっと泣き崩れる。
男性が女性の肩を抱いて項垂れた。
青年はよろよろと少女に近づき、手を伸ばしーーそのまま下ろした。
まるで自分には触れる権利などない、とでも言うように。
使用人たちも動揺している。
少女についていた侍女は固く固く拳を握ってその光景を眺めていた。
部屋の片隅では、ワゴンの上でゆっくりと紅茶が冷めていった。
読んでいただき、ありがとうございました。




