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第22話 幕間 スポッチャに行こう 下

 駅前に到着。


「コウ君!!」


 葵さんが僕を見つけて手を振る。その隣には茜さんがいた。


「久しぶりだね朱神君」


 ——忘れている読者の方もいるだろうから紹介。この人は葵さんの姉、村雨茜さん。

 蒼春学園の現生徒会長であり、葵さんを溺愛していて、妹を守る為ならその辺の不良や体育会系男子すらなぎ倒すシスコンバーサーカーである。


「ハッハッハ、シスコンバーサーカーとは心外だね。これでも可憐な乙女なのに……」


「黙っていれば、ですけどね」


 それはそれとして、僕は茜さんに直接シスコンバーサーカーとか言った覚えはないし、そんな恐ろしい事できるはずがない。なのにバレてる。え……?まさか、心読まれてる?


「君が顔に出やすいだけさ」


 以前にもそれ言われたような気がする。

 そんな会話をしながら僕達はシャトルバスを待つ。やがて全員揃い、赤いシャトルバスに乗り込んだ。

 バスに乗り込み座席に着くやいなや、御影さんが僕の持つレジ袋の中身を確認する。


「ドリンクは……良し。確かにカロリーゼロのコーラ2本あるな。他のも間違えてないし、OKだ、朱神コウ」


 御影さんは僕が買ってきたドリンクを真っ先に袋から取り出した後に買い出し分のお金を返してくれた。


「向こうには持ち込みできないから今のうちに食っとけよ~」


 烏丸先輩が眠そうな声で全員に向けて言った。


「こっちはペッキーにポテチ、ひつじのワルツっスか。悪くない選択っス。確か葵さん、ひつじのワルツ好きだったっスね」


 日陰さんはそう言いながらひつじのワルツの六角柱型をした箱を開けた。葵さんもそれに続き、チョコとビスケットで構成されたひつじをつまむ。女子ウケが良さそうという理由でひつじのワルツを選んだのは正解だったらしい。

 葵さんがひつじのワルツを食べようとしたその時、


「メェ~助けてぇ~食べないでぇ~」


 日陰さんがひつじにアテレコを始めた。


 小さなひつじを口に運ぼうとしていた葵さんの手が止まる。


「………」


「食べないでぇ~」


「ひつじのワルツ食べる時いつもアテレコしてくるのやめてよ、日陰ちゃんの意地悪……」


「ナハハハハすまねぇっス」


 大笑いする日陰さんと対称的に葵さんが少ししょんぼりした様子でそう呟く。


「そうしょんぼりするな葵。ペッキーでも食べよう。ペッキーゲームだ」


 茜さんがペッキーの箱を開け、葵さんに差し出す。そして葵さんが食べているペッキーの反対側に口をつけようとしていた。




「何考えてんだあんたって人はァァァ!!!」


 思わずタメ口になってしまったが、今はそれより眼の前の暴走シスコンを止める事の方が重要だ。チョップでペッキーを真ん中あたりからへし折った。


「な、何をするだァー!!許さん!!」


 ——何故か逆ギレする茜さん。しかも某人気バトル漫画の伝説的誤植ネタでキレられた。


「どさくさ紛れで妹にキスしようとする姉がどこにいる!!あんたは大変な変態だ!!!」


 もう僕は先輩だとか生徒会長だとか彼女の姉だとか茜さんに対するあらゆる敬意を彼方に放り投げてキレ返す。


「ペッキーゲームってそういう意味だったの?」


 葵さんが真底不思議そうに呟いた。


「「え??」」


 硬直する僕と茜さん。


「コウ君とならしてもいいかな……ペッキーゲーム……」


 葵さんが頬を染めてとんでもない事を言い出した。


「「ダメダメ認めませんそんな事!!不純異性交友ダメゼッタイ」」


 僕と茜さんの声がシンクロする。奇跡的に何かが噛み合った瞬間だった。

 一方その様子を見ていた東先輩は——、


「リア充爆発しろ……夏の花火大会くらい派手に爆ぜろ……」


 そんな呪いの言葉を吐き出していた。一方、東先輩を気にせず烏丸先輩と二人の世界に入っている御影さん。


「確かユウゴもひつじのワルツ好きだったな?」


 御影さんがそう言って烏丸先輩の前にもう一箱のひつじのワルツを置く。


「ひつじにアテレコしても俺には無意味だぞ。腹に入れば所詮、チョコとビスケットだ」


 烏丸先輩はそう言ってひつじをつまむ。


「おのれ~人間メェ~」


 御影さんがすかさずアテレコする。烏丸先輩の手が一瞬止まった。

 なんとか気にしないようにチョコとビスケットでできたひつじを口の中に放り込み、噛み砕く烏丸先輩。


「ぐわ~、おのれ何をする~」


「我が肉体滅んでもこの恨みは消えぬ~」


 御影さんのアテレコは続く。


「御影、食べにくいからアテレコやめろ。なんでひつじが魔王みたいなセリフ残すんだよ」


 ひつじのワルツは違う意味でも好評だった。

 その間もバスは赤いから通常の3倍の速度——、という事もなく安全運転で走り続ける。

 そういう感じのおふざけを経て、バスは本来の目的であるラウンドテーブル1に到着。受付を済ませて店内を色々見て回る。


「まずはバスケとかどうだ?最近バスケ部の試合が少なくて呼ばれないから身体が鈍りそうだからな」


 烏丸先輩がナチュラルに僕に対しての公開処刑を提案してきた。

 つまりそれって二分の一の確率で烏丸先輩と勝負する事になるよね。味方チームならまだしも敵チームになった場合、蒼春学園最強のアスリートにバスケ未経験の僕が敵うはずがない。いくらトレーニングで体力が底上げされているとはいえ、こればかりは——。

 それだけなら当たり前だけど、葵さんの前でコテンパンにされるという事実がなかなかにキツイ。

 葵さんきっとガッカリするだろうなぁ……

 もうダメだぁ………おしまいだぁ………暗い気分の僕。


「なら私が朱神君のチームに入るよ。私と烏丸が別のチームなら少しはバランス取れる」


僕の考えを読んだのように茜さんがそう提案した。

 ついでにちゃっかり葵さんも自分のチームに引き込む茜さん。

 まあ、こっちに茜さんがいれば少しは試合になるかも。この人、格闘技の練習で烏丸先輩と組み手している事あるから。


「わかった。じゃあとりあえず御影と物部は俺のチームな」


 3on3。烏丸先輩のチーム「陰影烏」と僕達のチーム「赤と青と朱」(暫定のチーム名)の試合が始まる。


「で、俺は?」


 一人あぶれた東先輩。烏丸先輩の答えは——、


「悪い、人数的に余った。東は次の試合からな」


 デスヨネー。

 そんなこんなで試合開始。烏丸先輩が猛然とゴールに吶喊する。僕はマークをかけるが、運動神経とバスケ経験の差から容易く抜き去られてしまう。


「茜さん!フォローお願いします!」


「任された」


 ゴールへの進撃を続ける烏丸先輩は茜さんに阻まれ立ち止まった。

 徹底的にマークされてそれ以上進む事もままならない烏丸先輩。その時、


「烏丸先輩~、こっちっス」


 日陰さんの気の抜けたような声が聞こえた。声のした方に目を向けると、完全にノーマークの日陰さんがいた。全く気付かなかった……

 某バスケ漫画の存在感の薄い主人公キャラのような活躍をする日陰さん。

 烏丸先輩から日陰さんにパスが通り、日陰さんは素早く御影さんにパス。しかし、


「ぐえっ…………」


 ボールが御影さんの顔面に直撃した。

 御影さんってもしかして、運動オンチ……


「御影さんって結構見かけ倒しデスヨネー」


「黙れ小僧!!」


御影さんは某ジ○リ作品のキャラのようなセリフで威圧する。


「ナハハ、予想外っス……」


 日陰さんの渇いた笑い声。その直後、床に転がるボールを葵さんが拾った。


「コウ君!」


 葵さんが僕にパス。僕は葵さんからボールを受け取り、相手ゴールに向かう。烏丸先輩がボールを強奪せんと僕に突撃してきた。


「させるか!」


 茜さんが烏丸先輩と並走しながらこちらへと向かう。

 結局、ほぼ茜さんと烏丸先輩がボールを奪い合っているだけで、僕達はそれに振り回されてバテた。

 そうして決着がつかないままバスケの試合は終わる。


 その後、ドリンクバーを頼んでジュースで水分補給。少し休んでまた店内を見て回る。流石にもう一度バスケする体力はない。

 茜さんと烏丸先輩以外は同意見という事でバスケはやめる事となった。

 ちなみに東先輩は烏丸先輩と茜さんの攻防を見てる途中で自信をなくしたらしい。

 その後はカラオケしたり(日陰さんだけ段違いに上手だった)、ボウリングしたり(御影さんがコケてボールを後ろに向かって投げた時はマジビビッた)、色々と騒がしい一日となる。

 僕?何をしてもそんなに目立つような結果は出せなかったよ。

 それでも楽しかった。こうやって友達どうしで集まって遊ぶ事じたい、今までなかったから。

 今までの僕はなるべく目立たないようにクラスメイトと表面上だけ仲良くして、その実誰にも心を許さず生きてきた。

 モブでありたい、ただそれだけの為に。

 今でも厄介事はごめんだけど、この時の僕は主人公として生きるのも悪くない、不覚にもそう思ってしまった。

 その時点で僕は、モブである事をやめたのかもしれない。

 「青春ポイント、+5点」と、また僕の心の中で誰かが呟いた。マジで誰。

 またですか、僕の心の声に勝手にキャラ付けするのやめてくださいよ作者さん。(二度目)


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