魔法学院「ウエストエンド」
魔法学院「ウエストエンド」
その名の通り、学院のある島の西端に位置する
ことがその名の由来なのだという。
魔法学院というから、いわゆる学校施設しかないのか
と思い混んでいたが。
「どちらかというと一つの大きな街なんです。」
とエリカが言う通りで魔法道具の販売をしている
問屋街や芸術の中心として、劇場街や美術館が立ち並び
、また多くの魔法の研究施設があるという。
エリカが言うには、アルスと呼ばれるこの魔法世界は
とても広いが彼女が王女として存在しているのは
この魔法学院のある小さな島なのだそうで。
「国の名は?」と聞くと、いわゆる国境という概念は
あいまいで、ただ地域ごとにその一帯を治めさせて
いただいている王がいるという。
「治めさせていただくって誰に?」
そう不思議がるひまりに
「女神様に、ですかね。」とエリカは答えた。
「女神様?」
やけに具体的だと感じた。
そこは、神様というような気がするのだが。
「知恵と魔法の女神ミネルバ様
それがこの世界アルスの創造者といわれています。」
その女神の神託のもとに、この島一帯を私たちは治めて
いるにすぎないが、魔法の研究、教育を担い、芸術の
栄えるこの島は、大きな影響力があるという。
前置きが長くなったが。
そんなわけで学院にたどり着くまでの間、その街並みを
通り抜けてようやく学院の正門に辿り着いたわけなのだ。
「学院の入り口までワープさせてくれればいいのに。」
と口を尖らせるひまりに
「セキュリティの問題から許されてなくて。
面倒ですよね。すみません。」
とエリカはいう。
地球にも戦争があるようにこの魔法世界にも争いと
いうものは存在するのだと。
そして、先端の魔法研究拠点でもあるこのウエストエンド
に悪意あるものが入り込まないようにしているのだと。
エリカの屋敷の裏門を抜けた先は確かに高い壁が立っており
要塞のようにさえ見えた。
もっとも、王女様のお付きとして今回は簡単に通り抜けて
きたわけだが。
そんなわけで街に入ってから30分近く歩いたのだろうか。
ようやく学院が目の前に見えたのである。
魔法学院というよりは、大きな教会という表現がしっくり
とくるその建物は、歴史を感じさせる石造りの実に荘厳
な佇まいだった。
女神をあしらった像やステンドグラス、そして建物を
入り教室へ進む天井には、女神とその女神に仕える天使たち
そして悪魔のように見えるものとの戦いの様子が描かれた
絵が描かれている。
当然ながらエリカはこの学院一の有名人で、道すがら
会う教師も生徒も恭しく頭を下げていく。
そして、その王女様と親しげに話ながら歩いている
俺ら二人を好奇の目で皆一瞥して去っていく。
「今日はね、全校集会があるんです。」
「へぇ、そうなんだ。」
「そこでお二人を紹介しますから、ご挨拶をお願いします。」
さらりとムチャぶりをするエリカに対して
思わずひまりと俺は目を見合せ聞いてないという顔をした。
「あ、言ってなかったですか。」
うっかりしたとばかりに舌でも出しそうな雰囲気のエリカ。
「聞いてないわね。でも仕方ない。
やるしかないんでしょ?」
ひまりが、そんなことを言う。
まあ、やるしかないんだろう。
「とりあえず頑張ってみるよ。」
俺もそんなことを言って自分を鼓舞していた。