100回目の転生
「また、ここか」
視界に広がるは闇、絵の具の黒色よりも深い闇。音もなく、匂いもなく、まるで水の中に深く沈んでいくような感覚が支配する。
「次はどこに行けばいいんだ、いるんだろ?女神さんよ」
女神と呼ばれる存在に語りかける。すると闇一面だった世界が一瞬で光に照らされ、その中心から艶のある髪、澄み渡った瞳、高めの鼻、熟した果実のように赤い唇。
どれを取っても美しいとしか言いようがない。その女神が、頭上から舞い降りてきた。
「99回目の転生お疲れ様でした、国峰秋人様」
女神が、機械的に労いの言葉をかけ男に冷たく言い放つ。
「知るかボケ、私に聞くんじゃねえ」
美しい見た目とは裏腹に中身は黒いらしく、先ほどの一面の闇よりも黒いのではないかと感じさせられる。
「俺はうんざりなんだよ!なんで俺はこんなに転生しないといけねえんだよ!」
それに負けず劣らず、その男は女神に噛み付く。
「知らねえよ私だってお前みたいなすっとこどっこい相手にしたくねェよ!」
「言ったなてめえこの無能女神が!」
「あ゛あ゛!?お前この女神に喧嘩売ろうってのか!?」
「やってやんよオラァ!チート99回重ねと99回の人生経験舐めんなババア!」
「女神とはいえ神に楯突こうなんて良い度胸だな返り討ちだボケェ!」
会話が始まり数秒、男と女神の間には不穏な空気が醸し出され、今にも殴り合いを始め兼ねない、そう感じさせる。
女神が男を殴った瞬間、辺りに声が響き渡った。
「お主らの痴話喧嘩とかもう見たくないんだけどさぁ、女神君、秋人君」
2人の目の前に仙人と言っても差し支えない風貌をした老人が現れ、伝える。
「申し訳ございません!創造神様!ほらお前も謝るんだよ!」
「黙れババア」
「この…!「そう、それはもう良いんだってさ」
「と、言われますと?」
「お主ら2人で転生して貰うから。」
「「はあああ!?」」
「嫌ですよ、こんな奴と転生なんて!」
「俺とか99回転生してるんだぞ、もうやだぞ!」
創造神の言葉を聞くと、この時ばかり2人は息が合い、全力で怒りを込めて、抗議をする。喧嘩するほど仲が良いとはこの事だろうか。
「あーうるせえなあ、もう決定事項なんだから仕方ないんじゃよ」
「し、しかし」
「安心しろチートはやる、ただしセーフティロックは掛けさせてもらうがね」
「そういう問題ではないのですってば!」
「また転生とか嫌だあああ!」
そう言って男は創造神を止めようとする。しかし一歩遅かったらしく、老人は笑っていた。
「もう遅い、転生開始じゃ」
大きな叫び声が、響いた。




