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忘れてしまいたい・・・  作者: naomitiara-tica
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男のプロフィール

この作品は、全て妄想であり、創作です。

はたして、その男はいわゆるいい男だった。昔流行った言葉で言うと、3高と言う奴だ。高身長、高経済力、高学歴。加えて顔はもちろん、横幅、スーツの着こなし、車の種類、実家、嫁の経歴まで何一つ文句がつけられないほど完璧だった。もちろん、世間的な顔はだ。その優しげで甘いマスクを一皮剥けば平気で他人を蹴落とし、自分の為にだけの利益を貪るダニのような奴だと誰が想像できたろう?


彼が赴任して来てから、おもしろい現象がいくつか起こった。まず、バイトも含めて女子連中がなんとなくお洒落さんになった事、みんなまめに美容院に行くようになった事、出社時間がみな微妙に早くなり、しかも遅くまでいるようになった事。仕事にかこつけて遅い時間に男と2人きりで話し込みたいなどが見え見えであった。

男の興味をほんの少しでも自分に引こうと必死だった。どうでもいい事を質問するもの、事務員に聞くべき事を、わざわざもったいぶって質問するもの、家族状況や経済状況が大変などの同情に訴えるもの。

そして、営業連中は、自分は女で勝負しないと言うような暗黙のプライドが働いていたのか、みんな1件でも新規を取り付けようと必死に駆けずりまわっていた。


営業所が活気が出て成績が他の営業所より上がるようになった反面、御他聞に漏れず、みんなの仲がとたんに悪くなった。これはもう、笑えるほどだった。

小競り合いの理由はそれぞれにちゃんとした理由はあるのだが、よくよく聞いてみるとその原因の奥底には、男にいかに自分が褒められたいか、自分だけ女として認められたいか、つまりは自分のものにしたいか、そういう女丸出しの心理が醜く巣食っているのだった。

男が携帯で話し込み始めると、女達の神経は一斉にそちらに集中し、そば耳を立てた。誰かが男を呼び出すのではないかと、みんな気の毒になるほどお互いを見張っていた。


男は自分自身の容姿が武器になる事を良く良く自覚していた。


それまでも、くだらない争いは常にあった。が・・・なんとなくみんなで仲の良い営業所だった。ふだん成績でバトルしているチームも処々の飲み会ではすっかり意気投合したり、プライベートで遊びに行ったりしたものだった。

しかしその男が来てから、まず飲み会が戦場の第一歩だった。それはそれは凄まじいものがあった。男を酔わせて少しでも自分に触らせようと必死であった。しかもタチの悪い事に、男は女達のそういう心理を利用して煽る態度を取るものだから、哀れな女達は我々のよう子持ちも独身もみな揃いも揃ってきゅうきゅうとしていた。


私が男の刃に引っかかったのは、そんな日々が続いて、少し営業所の雰囲気にうんざりし始めた夏の日の事だった。



さて、どうやって男に引っかかってしまったでしょうか?

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