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第二十六話

 エルーラ様の念話により案内された部屋で、俺たちは一旦落ち着いた。その部屋は人間を宮殿に招くのを前提に作られた部屋のようで、人間生活に欠かせない物なんかは取り揃えてあった。

 

 「あなた方の部屋はこの部屋です。早速明日から本格的に仕事に取り組んで頂きますので、しっかり休息を取っておいてくださいね。」

 

 エルーラ様はそう言うと念話をやめた。返事はしたものの、聞こえただろうか。

 

 


 「ユウト、この部屋もめちゃくちゃ広いね、なんだか落ち着かない。」

 ケイゴはベッドに腰掛けて言った。

 「そうだね、フリーダムの居住スペースとは訳が違うもんな・・・。」

 部屋の凄さに驚いていた俺に、ケイゴが笑いながら話しかけた。

 「休息って言ったって、俺たち何してればいいんだ?寝るってか?」

 「何か思いつかない?」

 「うーん、そうだ!ユウト、竜に戻って!」

 いきなりの不思議な頼みに戸惑いを隠せなかったが、すぐに竜になった。

 「そっちが本来の姿なんでしょ?それならその姿でいなきゃ。変身魔法は自分が変身した物に取り込まれてしまう危険性があるから、気をつけて使うべきなんだって魔法オタクの船員から聞いたよ。」

 「そうなの!?」

 まぁ確かに理屈は通っているかもしれない。自分でないものになっているなんて、本来あってはならないことだもんな・・・。

 「・・・で、用件は?」

 「えぇっと、ユウトって火吹けるの?ホースドラゴンは吹けなかったけど、白竜族は吹けるんだって聞いた。エルデドラゴンは・・・どうなの?」

 火を吹くだって?ファズと島にいた時、夜中に焚火程度の火なら吹いたことが・・・

 「ここで吹けって?」

 「うん、でも火事は起こさないでよ?」

 「気をつけてみるよ。」

 前にしたように、火を吹くことを意識して軽く息を吐いてみた。

 「凄い!真っ青!」

 ケイゴが目を丸くして驚いている。

 空気中に消えていった炎は真っ青な炎だった。

 「ガスバーナー的な感じじゃない?あれは青色の方が高温だったでしょ?」

 「あ、確かに!」

 納得したようにうんうんとうなずいた。

 


 「ユウトの翼ってさ・・・他の竜とは違って鳥の羽毛みたいに薄い鱗がたくさん生えてるよね。」

 さっきから俺の体のことばかりに興味を示しているが、どうしたんだろう。

 「変わってるなとは思うけど・・・さっきからどうしたの?俺の体のことばっかり。」

 「え?あぁ、落ち着いてみてみるとやっぱり他の竜とは違うんだなぁって・・・結構竜舎で仕事してた時に竜に興味を持っちゃってね。エルデドラゴンはどんなだろうって思っちゃった。」

 「ふぅん。で、どう?」

 威厳を見せるイメージで少し翼を広げた。

 「ははは、そりゃあすごいよ!竜の中の竜って感じ?しかもそれがユウトだってのがまた。」

 「ふぅん。そこまで言われたらなんか照れくさいなぁ。」





 その後竜舎でケイゴが学んだ竜についての知識を教えてもらっていたら(竜の自分が教わるのはどうかと思うけど)窓から入ってくる光は弱くなってきていた。


 「もう夜!?」

 話すことに集中していたケイゴは驚いて窓の外を見る。

 「こっちに着いたのが昼も遅くなってからだったから仕方ないかもね。」

 「で・・・夕食はどうなるんだ?」

 あ・・・俺は食わなくても大丈夫なんだが・・・。

 「エルーラ様に尋ねてみたら?」

 俺は提案してみたが・・・。

 「念話ってのは遠くから気軽に話せるからいいけど、逆に俺が気軽に話しすぎるっていう危険性も・・・。前の世界で・・・例えば先生なんかと話すときに簡単に電話を使ったか?」

 あんまり覚えてないけど・・・しなかったと思う。

 「じゃあ直接聞きに行く?」

 



 そんな話をしている時に、エルーラ様のいる広間から怒号が聞こえてきた。

 「なんだ?ユウト、行ってみよう!」

 すぐに人型に変身して、先に部屋を出て行ったケイゴの後を追った。


 

 


 広間に着いてみると、三頭の白竜がエルーラ様に怒鳴りかかっている。三頭の中の一頭はかなり怒っているみたいだ。

 俺たちは様子をうかがうために柱の陰に隠れて耳をすませた。今はドラゴンの聴力だから、遠くの音でも集中すればかなりよく聞こえる。まぁ、怒鳴ってるから普通にしてても聞こえるけど。

 

 

 「・・・ーラ様!ジャハルの戦艦に爆波動結晶が使用されたというのは真実でございますか!?」

 「なぜ我々の力をもってして止めようとなさらなかった!!」

 「暗黒の歴史を繰り返すのを許すおつもりですか!?」

 「異界の人間が召喚されたことも事実でございましょうか!」



 三頭のドラゴンは爆波動結晶のことを言っている・・・。異界の人間ってのは・・・俺たちのこと?やばい、話を聞き始めたのがが途中過ぎて付いていけない。

 エルーラ様は考え込むように目をつむっていた。

 




 と・・・その時もっともキレていた一頭の白竜がエルーラ様の首元にかみつこうとした。脅して理由を聞き出そうとしているのか!?


 「なぜ理由を言わない!?同族に隠し事をするような王は求めちゃいねぇんだよ!!」

 エルーラ様の首元に牙が刺さった。

 

 エルーラ様は抵抗しようとしない・・・。



 まずい・・・そう悟って飛び出そうとしたが・・・・・・ケイゴの方が早かった。


 「やめろよ!!」

 広間にケイゴの声がこだまする。

 

 「誰だ!?」

 白竜たちがこちらを向く。

 

 「危険です!お逃げなさい!」

 エルーラ様が俺たちに念話で忠告する。


 しかし、ケイゴはそれを無視して白竜たちの方に駆け出した・・・。ちなみに俺も・・・。

 

 


 


 

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