第十三話
「さぁ、仕事仕事。」
今日も天気は快晴だ。
「ユウト、今日は軍事演習があるから竜舎の仕事はあと。先に魚釣り行くよ。」
後回しってことは演習は午前中にあるってことか。
釣り場である竜舎の甲板側入り口付近に着いた。この辺がこの甲板上では一番低い場所らしい。
「ちょっと待ってて、釣り竿取ってくる。」
ケイゴが竜舎へ下りる階段に走って行った。
どんな魚が釣れるのか正直楽しみだ。おいしかったらいいな~。あぁいけない、竜的思考でいるとポロっと人前で不可解な言葉をこぼすようになる。気をつけなきゃ・・・。でも近頃、竜的思考の方が人間的思考に勝ってきているように感じる。多分ドラゴンである自分についてだんだんといろんなことを理解してきたからじゃないかな。空腹を感じる理由とか。
そんなことを考えていると、ケイゴが釣り道具を持って帰ってきた。
「お待たせ~。はいこれ。」
突然ケイゴに渡されたのは小さな袋。中で何かが動いているようだ。
恐る恐る中を開いて見てみると、前の世界で釣りの時によく使ったゴカイのような虫がたくさん入っていた。なんかキモい・・・。まぁ、別に触れないわけじゃないけれど。
「これ使うの?」
「もちろん!それ以外に何を使えって言うの?ってぐらい魚の食い付きがいいんだもの。」
「ふーん。」
ただのゴカイにしか見えないけど。
ケイゴに仕掛けの作り方を習ったあと、早速竿を振った。竿は前の世界の物とはほど遠いが、作りは似ていたからすぐに扱い方に慣れた。
ケイゴの言うとおり投げて仕掛けが海に入ったかと思うと、すぐに反応がある。あまりにも食いついてくるのが早い。
「このぐらい早く食いついてもらわなきゃ、二人で竜たちの餌の準備なんてできないよ。」
俺が驚いているのを笑いながら見て言う。
「確かに。」
驚いたのは食いついに早さと・・・魚の大きさ。普通にカツオぐらいの大きさあるんじゃないか?沖だからか、そうなのか?まぁ、この大きさなら3,4匹くらいで俺とファズの分は足りると思う。
「おっ!そろそろ演習開始だね。」
後方にある竜舎のドラゴン用出口が開かれた。
「そういえばケイゴは二等空兵でしょ?演習には参加しないの?」
「俺のいる小隊は補欠みたいなもんさ。だからパートナーの竜はまだいない。」
「ふ~ん、そうなんだ。」
なんとなく安心した俺がいる。ケイゴは戦いに出ることは今のところないということか。
俺たちが釣りをしている最中、ずっと竜たちは空を舞っていた。
「どんな演習してるんだろ・・・。」
「う~ん、俺も良く知らない。」
ケイゴも最近乗船したばかりだから、知らなくても仕方ないか。
昼食を知らせる放送が鳴った。
昼食を終えて竜舎に戻ってくると、演習が終わったようで竜たちは檻に戻されていた。先ほど釣った魚は、これからに備えて今日食べさせる分以外は冷凍庫で保管するらしい。
冷凍庫の場所は聞いておいた・・・これでいつでも魚を取り出せる!いかん、顔がにやけてきた。
「何にやにやしてんだ?」
ケイゴに尋ねられた。
「いや、なんでも。」
餌やりは単純で、三匹ずつ魚を配ればそれでいい。なんて楽な仕事だ。
「しっかり食えよ。」
そう言いながら配るものの、実際のところ一番食いたがってるのは配っている本人だったり。やっぱり魔法を使うのにまだ慣れてないからか、また空腹を感じ始めた。
皆俺が魚を配るたびにお礼を言ってくる。律義なんだな。俺が話せることを知られて一人一人(一頭一頭)に驚かれていては明日になっちゃうから返事は出来ないけれど・・・。
配っていると、アルフさんの檻の前に来た。あ、昨日話した人(竜)だ。
「おお、少年。食事の時間か。」
「そうです。ところで念話って他の人に聞こえたりしてないんですか?」
これは昨日話した時から聞きたかったことだ、今なら少しぐらいゆっくり話せる時間ぐらいはある。
「そうだ。念話というのは貴様が話そうとする対象のみにしか聞こえない。便利だろう?」
「そうですね!それはめちゃくちゃ便利なことじゃないですか。」
「それに・・・どんなに離れていても、両者の話そうとする意志が強ければ話すことが出来る。」
やばい、これまたチート過ぎる気が・・・。
「もう一度言うが、貴様の意志だけではないぞ!相手の意志もこれには関わっているんだから、その辺に気をつけろ。」
あぁ、相手も話そうとしてなければ話せないのか。聞き洩らすところだった。
「ありがとうございました」
「いや、気にすることはない。また分からないことがあれば私に聞くがいい。」
自信満々にそう言われた。
「分かりました。ではまた今度よろしく頼みますね!」
アルフさん優しい!なんて思っていたが、次に発せられた言葉で真意を知ることになる・・・。
「あぁ、貴様は他の人間とは何かが違うから興味がわいたのだよ。だからいくらでも話につきあってやろう。変わり者は嫌いじゃないからな。わははは。」
これはまた盛大に笑いなさって・・・。ん!?そんなことより、これって俺の正体がばれかけてるってことか?・・・いや、いくらなんでもそれはないと信じたい。
仕事も全て終わったから、いったん部屋に戻ることになった。ケイゴも自分の部屋に戻るようだ。
「後からお前の部屋に遊びに行っていいか?」
廊下で別れるときにケイゴが訪ねてきた。
「もちろん!でも、入るときにはノックしてくれよ?」
「そんなこと分かってるって。」
笑いながら返してきた。
俺は自分の部屋に急いだ。ケイゴが来る前にファズと晩飯すましとかなきゃ。余った魚(余分に俺が持ち出した)を入れた袋を提げて自室のドアを開けた。




