第十二話
ヴァイスさんやケイゴと夕食をともにした後、ファズが食べる分を持って自分の部屋に戻った。
部屋に入ると、ファズが駆け寄ってきた。
「ユウト!夕飯持って帰ってきてくれた?」
「もちろん!」
あ、しゃべらなくても伝わるんだった・・・まぁ、今は俺とファズしかいないからいいか。
「ありがとう!」
嬉しそうに尻尾を振っている。
「ところでユウト、朝になってまた変身が解けたりしない?」
「うん、大丈夫だと思う。多分初めて魔法を使ったから、エネルギーのコントロールが上手く出来てなかったのかな?」
実際、昨日の晩のような空腹感は感じていない。
「それなら安心だね。」
ファズがほほ笑んだ。
ファズが夕飯を食べ終わってから数時間。就寝時間を迎えたことを知らせる放送が流れた。なんとなく長く感じた今日も終わりだ。
はぁ、今日もいろいろあったな・・・。なんて考えながらベッドに横になる。いつの間にかケイゴのことを考えていた。
ケイゴは、前の世界に帰りたいと思っているだろうか・・・。いや、きっと帰りたいと思ってる。でも、帰り方なんか分からない。
全く知らない世界に放り出された俺たち・・・。考えることが少し怖くなってきた。これ以上先を考えたらいけない気がした。
でも戻り方が分かっても、もしかしたら俺は戻らないかもしれない。今ではこちらの世界の方を現実と認めてしまった俺がいる・・・。俺はそのときどうするんだろう。帰るか、帰らないか。
ありもしないことを考えているうちに、眠ってしまっていた。
朝が来た。起床時間を知らせる放送が鳴った。
俺は服を着替えて、朝礼に参加するため甲板に上がった。甲板には、高校で全校朝礼をする程度の人数が列をなして並んでいた。・・・ってなんで俺こんなこと覚えてんだ?高校の全校朝礼とか・・・何かの拍子にこうやって思いだしていくのだろうか。
俺は昨日ケイゴから教えてもらったように十一列目の一番後ろに並んだ。ケイゴは俺の前に並ぶはずだが、まだ来ていなかった。
しばらくしてケイゴが来た、互いに挨拶を交わしたところで朝礼が始まった。
艦長さんが朝礼台?に昇る。そして、話し始めた。
「乗組員の皆、だいたいあと五日でラウド帝国の領海に入る。いくら我々が中立国であろうと、敵はもしかしたらこの船を沈めるための罠として使節団を送ることを許したのかもしれん。実は新兵器の開発に成功したという知らせも、我々をだますためのものかもしれん。使節団を送る条件が、この船一隻のみでラウド帝国に来させることと、千人以下の乗組員しか乗せるなという条件であったことは皆も知っているはずだ。わざと自らの手が届くところまで我々を誘いこんでつぶそうとしているようにしか見えん。」
艦長さんは続けた。
「だが!我々の使命は、世界中の人々を戦争という魔の呪縛から解放することだ!そして、この世界を暗黒へ追いやった大量破壊兵器が新たに開発されることを防ぐことだ!たとえ罠に自ら飛び込むことになろうとも、我々は我々の正義を貫く!」
艦長が言い終わると、乗組員たちの鬨の声が響きわたった。
その後、五日後からの戦闘の可能性に備え本格的な軍事演習を行うことを艦長さんが告げ、朝礼は終わった。
戦闘・・・その言葉を、なぜか恐ろしく感じた。ケイゴは第二空兵、ということは、ケイゴもドラゴンに乗って戦うということだ。戦闘員になるのは、ケイゴが望んだことなのだろうか・・・。
「ユウト、仕事場にいくよ?」
ケイゴが話しかけてきた。あぁ、俺ったらまたボーっとしてた。
「ごめんごめん、ちょっと考え事しちゃってて。」
「心配しなくても大丈夫だよ、この船は絶対に沈まないって、艦長さんも自信もって言ってたろ?それなりに頑丈に造ってあるさ。」
そんなこと心配してたんじゃないんだけどな・・・。
「う、うん。そうだよね。」
今は・・・きっと大丈夫だと信じよう。




