第一話
今日もいつものように7時間目終了のチャイムが鳴った。
いつものように俺は友達のケイゴと自転車で並列走行しながら家に帰る。
「おいユウト。お前定期テストの勉強できてる?」
唐突にケイゴが尋ねてきた。
「全然できてない。」
そう答えることしかできない自分が情けない!とは思いながらも、家に帰ればなぜか勉強に手が付かない。ケイゴも同じみたいで、「俺も」と笑いながら返してきた。
「今やろうって思ってても家に帰ったらなぜかダラダラしちゃうんだよね。」
「あ、それわかる!ユウトもそうなのか!?」
あまりに大きな反応だったのでこちらが吃驚した。
「え〜。そんなに驚く事かな?」
「そう言われればそうだね。でも、ユウトはまじめなイメージが強いもんで・・・。」
日ごろの印象とは怖いものである。俺はまじめな印象を持たれているらしいが、そのせいでたまに冗談をクラスメイトの前で言ってみると真に受けられてしまい困ることがある。嗚呼・・・いつか俺の言った冗談が他人に冗談として受け取ってもらえる日は来るだろうか・・・。俺の冗談を冗談として受け取ってくれるのはケイゴぐらいだ。
「なぁユウト。お前、生まれ変わりたいって思ったことあるか?」
いつも別れる交差点が見えてきたときケイゴがそう尋ねてきた。
「突然なんだよ、らしくないなぁ。」
と、笑いながら返す。ケイゴはいつも冗談を言うから今回もそんな感じだろうと思ったが、俺が面白いことを言って返してやろうと考えていると、「一応本気で聞いてんだぜ。」と言ってきた。
どうしてそんなことを聞いてきたのか知りたくなって、思わずこちらから尋ね返してしまった。
「じゃあケイゴはどうなのよ。」
「俺は考えたことあるから聞いてるんだろうが。で、ユウトはどうなの?」
「俺だって一度ぐらいはあるぜ。でも、生まれ変わってもどうせまた恥ずかしい間違いをどこかでやってしまうんだから・・・。前世の記憶が残ってるとかなら別だけど。」
「だよな~。そんな都合よく生まれ変われたら、苦労なんかしないよな。」
「生まれ変わることなんてできないんだから、そんな夢物語を語るより明後日からの定期テストのこと考えようぜ。」
「・・・そうだな。でも、俺は“転生”っていうのを信じたいな。」
空を見上げながらケイゴが呟いた。
「俺は信じてないぜ。」
ちょっと冷たい返事をしてしまった。
「勝手にしろよ。じゃあ、また明日な。」
「また明日。」
いつものようにケイゴは笑顔で手を振ってくれた。こちらも笑顔で振り返した。
俺は転生など信じていない。信じるのが怖い。この世にいる理由が分からなくなってしまいそうで・・・・・・。しかし、俺はこの後、ケイゴに冷たい返事を返してしまったことを後悔することになるとは、知る由もなかった。