1.両親への説得
数ある作品から本作品を選んでいただきありがとうございます。
新章開始しました!!読んでいただけると幸いです。
学園祭が終わって数日が経った。レグルス殿下も拘束されたことだしこれからは安心した生活が・・・と思いきや、アネットはいきなり窮地に立たされていた。
「アネット。これはどういうことか説明しなさい。」
「・・・。」
セレナーデ侯爵が険しい顔をしてアネットを見ている。普段はただの親馬鹿なのだが、今回の事はさすがに看過できなかったのだろう。
その理由とは2人が向かい合っている机の上にある手紙だ。セレナーデ侯爵とアネット宛になっており、ザクから送られてきた手紙だった。
セレナーデ侯爵が手紙をトントンと指で叩く。
「アネット。私はお前の行動を制限したことは無い。学園で楽しく過ごしてほしいと思っていたし、それを通して好きな相手を見つけてほしいと思っていた。だが、何故イザーク殿下なのだ。王家が腐っていることはお前も重々承知しているだろう。」
「あなた。もう少し言い方というものが・・・。」
「お前は黙っていなさい。レグルス殿下の件で散々懲りたと思っていたが・・・。正直に言おう。私は今の王家を信用していない。レグルス殿下があんな事件を引き起こすまで放置していたうかつさ。隣国への警戒心の薄さ。お前達を連れて別の国へ移ろうと考えたことも一度や二度ではない。」
(まあ当然よね。)
セレナーデ侯爵の言い分はもっともである。レグルス殿下は放置され過ぎていたのだ。入学式の時に問題を起こしたのにも関わらず、謹慎して終わりなど甘すぎる。その上、何かしてきたら対応は自分達でしてほしいなどと甘いことこの上ない。
セレナーデ侯爵は机の上に置かれた手紙を再度叩く。
「この手紙には、レグルス殿下の件について改めて謝罪に伺いたいという旨と、アネットと正式に婚約したいという旨が書かれていた。後半の方が本題だろうがな。」
「ザクが・・・。」
「だが、私は反対する気でいる。アネットには幸せになってほしい。だが、彼は駄目だ。」
セレナーデ侯爵の言葉にアネットは辛そうに顔を伏せる。だがすぐに顔をあげるとセレナーデ侯爵に向けて頭を下げた。
「お願いしますお父様。ザクとの交際を認めてください!!」
「なら聞かせなさい。イザーク殿下との経緯を。」
(ノゾミさん。解呪の事も話します。)
(まあ、避けては通れないわね。良いわよ。)
それからアネットは、ザクに会ってからの事を話した。カーネスと一緒に行って出会った男の子がザク、イザーク殿下だったこと。2人で遊んだ時本当に楽しかったこと。学園祭で再び再会したこと。その時に彼が苦しみだして、アネットが解呪をしたこと。そして解呪によってこれからを考えられるようになり、アネットと一緒にいたいと告白してくれたこと。
2人はアネットが解呪できることに驚いていた。
「アネットが解呪を・・・。」
「はい。ノゾミさんに教えて頂きました。」
「ノゾミさんが・・・。」
(まあ私は使えないんだけどね。)
セレナーデ侯爵は何か考え込んでいたようだが、やがて口を開いた。
「すまないが、ノゾミさんに替わってもらうことはできるか?」
「(え?)」
意外過ぎる言葉にアネットと私は驚く。アネットが籠っている時以外、私がセレナーデ侯爵と話すことは無い。最初、私の事に気付かれた頃は、最悪な未来を回避するために積極的に情報交換をしていた。だが、アネットが学園に通い始めてからは、表に出ることはほぼない。家族団欒を邪魔する気もなかったし、話すことも特に無かったからだ。
「私はいつも客観的に世の中を見るように心掛けているが、お前の父親だ。どうしても色眼鏡で見てしまう。本来であれば家族内で解決するべき話なのだが。こじれるのは目に見えているからな。だから第三者の意見も聞きたい。お前にとって大事な人なのだろう。」
「私は構いませんけど・・・。ノゾミさんに聞いてみますね。」
アネットは頷くと、私に向かって話しかけた。
(ノゾミさん・・・。父はそう言っていますけど・・・。替わってもらっていいですか?)
(いいけど・・・。私容赦なく話すわよ。それでもいいの?)
(う・・・。でもノゾミさんの本音も聞きたいので我慢します。)
(それならいいわ。替わると言ってちょうだい。)
アネットは頷くと、セレナーデ侯爵を見た。
「替わってくれるそうです。」
「ああ。なら頼む。」
(ノゾミさん。お願いします。)
(了解。)
私は頷くと切り替わって表に出る。2人を見て深々とお辞儀した。
「替わりました。ノゾミです。学園祭の初日でお会いした時以来ですね。未だに娘さんに寄生しております。」
「おお。ノゾミさん。話しは聞いていたと思うがな。実を言うと貴方に会いたかったのは別の理由もあったんだ。」
「(え?)」
再び、私とアネットは驚いてセレナーデ侯爵を見る。彼はセレナーデ夫人と顔を合わせると、私に向かって深々と頭を下げた。
「改めてお礼を言いたい。ノゾミさん。貴方には感謝してもしきれない。最初に会った時、娘にはこれから何度も壁が立ちはだかると言っていたね。最初は君の言葉を信じられなかった。だが、実際は何度も娘に危険が迫った。君がいなかったらと思うとぞっとする。本当にありがとう。」
「私達の最愛の娘を守ってくださってありがとうございます。」
「あ、頭をあげてください。」
予想外の行動に私は慌ててしまう。まさか礼を言われるとは思ってもいなかった。
「私の自己満足でしていることですので気にしないでください。それにアネットは私の恩人でもありますから。」
「恩人?そういえば私は君の事を全然知らないな・・・。」
セレナーデ侯爵は初めてその事に気がついたようで辛そうな表情を浮かべた。私は笑って首を横に振る。
「それでいいんですよ。私はこの身体に間借りさせてもらっているだけです。いずれはいなくなるんですから。気にしないでください。」
「そ、そうなのか?」
(え!?本当ですか!?ノゾミさん!?)
アネットが驚いて中で叫んでいる。面倒なので彼女の相手は後にする。私は彼らに向かって頷いた。
「確証はありません。ただ、私はこの世界にとって異物です。いつ消えるか分からないと思っていただいた方がいいでしょう。」
「そんな・・・。」
セレナーデ夫人が悲しそうな顔をする。私はそんな彼女に笑いかける。
「気にしないでください。本来であれば私は既に死んでいるのです。それなのにアネットの人生に関わらせてもらえるだけ充分です。」
(ノゾミさん・・・。)
(こらこら。別にすぐ消えるなんて言ってないでしょ。私は10年一緒にいたって構わないんだから。勝手にメソメソされる方が困るんだけど。)
(そ、そうですよね!!大丈夫ですよね!!)
アネットは私の言葉に嬉しそうにしていた。単純というかなんというか・・・。だが彼女達には言っていないが、最初に一緒の身体に入った時に謎の予感はあった。私はアネットが学園を卒業するまでは一緒にいられないだろうと。これがこの身体の仕組みを作ったやつのお告げなのかは知らない。だから私は自分がいなくなってもいいようにアネットを鍛えていたのだ。
「そうか・・・。我が儘で申し訳ないが、いなくなるまで娘を頼む。娘を支えてやってほしい。」
「勿論です。そんなことより本題に入りましょう。」
「そうだな・・・。そうしよう。」
少し脱線したが、私のことは置いておいて、私達はイザーク殿下とアネットのことについて話すことにした。
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