11 目覚め
11 目覚め
「ミツキ」
野に生える草花が空から降り注ぐ雫を受け、首を垂れている。
空に向かって手を広げている木々は数多の葉で雨を拒み、自身の根元に腰を下ろす二人を優しく守っていた。
雨宿りをしている女は自分の着ていた外套を脱いでいる途中で。男はどうやら眠りについているらしい。
「今回は少し危険でしたね。大したことはなかったですが辺りに多少の影響はでていました。あの子は既に自我を失いかけていた…体もなしに長く彷徨っていたのですから当然と言えば当然ですが。必要とあらば強制的に巡りの中へ還すことも大切ですよ。誰よりも貴女は心得ているでしょうけど」
諭すような口調の相手に外套を脱ぎ終わった女は、隣で眠る男に優しくそれを掛けた後、「はい」と返事をした。
「ごめんなさい」
だが素直に謝罪の言葉を口にはするものの、心ここにあらずといった様子だ。
「それと…貴方達に与えたその力は本来の使い方と違うのですよ」
「…はい」
「説教はまた今度にしましょうか」
女のそんな様子に気が付いたのか、相手は「まあいいでしょう」と話を切り上げる。
「ほら彼が目を覚ましそうですよ」
「あ」
「最後までちゃんとやりきりなさいね」
雨はやみ、辺りはすっかりと夜の景色を身に纏う中。閉じていた翡翠色の瞳はある女の顔を捉えた。
「ルーク君には会えましたか?ダニエルさん」
雲の隙間から覗く月の光が、女のイヤリングに反射して輝いた。




