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訳あり令嬢の行く末  作者: なぎ
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長らく更新出来なくてすいませんでした。

待っていてくれた方、そうでない方にも楽しんで頂けたら嬉しいです。

家を出てから、深く眠ることは出来なかった。

いつも緊張を強いられて、僅かなの音でも目が覚める。その筈だったのに。

スッキリとして目覚めてみれば、隣で寝ているはずのリーがいない。

リーはどこ?

側を離れはいけないと言い聞かせていたのに。

慌てて起き上がり、隣の部屋へ続く扉を開ける。

そこに、リーはいた。

閣下の膝の上で絵本を読んでいた。

前髪をピンで留めて、大きな金の瞳をキラキラさせながら私を見た。


「おかぁさま、おはようなの!」


膝を飛び降りて私に駆け寄る。

ご機嫌な様子で抱きつかれた。


「ああ、おはよう、リー。側にいなくて心配したわ。」


久しぶりに陽射しを浴びている額にキスをする。


「おなかがぐーって、なにかないかなぁって、そうしたら、おとぉさまがいたの!」


興奮状態でまくしたてているが、中に聞き捨てならないものが含まれていた。

『おとぉさま』……『お父様」!


「おとぉさまとごはんたべて、それからりーのたからもの、みせたの!」


血の気が引く。

おなじ目の色だから勘違いしているの?

ああ、なんて事。


「リー違うのよ!よく聞いてちょうだい、この方はーーーー」


()()()、良いんだ。私が父親だと言ったんだ。同色の瞳に顔立ちも似ているだろう?」


髪をあげたリーと閣下。瞳は勿論だが、他のパーツも所々似通っている。同じ血が流れていると思えば当然なのかもしれない。


「しかしっ!」


「リーナ、君は選ぶことが出来たのか?どちらも選べないそれが答えではないのか?ならば私が選ぶ。例えばこんな設定だ……療養中に手を出して孕ませた酷い男が、母と子を見つけて悔い改めて愛を請うた。リーがいる以上、早く結婚してしまったほうが良いだろう。まずは、3人で友愛から始めないか?それが君たちを守る盾となるはずだ。」


唖然とするしかない。

一夜明けたら私の選択肢は無くなっていて。リーは閣下を父と呼んでいて。3人で『愛』を育もうと言う。

これを拒んだら城に連れていかれて、本当の父親に押し付けられるのだろうか。そして、城の奥で雁字搦めで飼い殺しになるのか。ゾッとする未来しか見えない。


「閣下は、、、閣下はそれで良いのですか?穢れた女に、子どもまで。あなたが私達を守る義務は御座いませんでしょう?」


「ではリオンの所に行くか?リーが王家の庇護の下にあるなら、私はどちらでも構わない。」


どうなんだ、と鋭い金の瞳に貫かれた。

ああ、そうなのか。

閣下は3人でと言っていたけれど、私はその枠に入っていないのだろう。リーを手元に置ければそれで良いのだ。

そう、理解した。

結局の所、私はリーのおまけで乳母みたいなものなのかも知れない。

「女」を求めないから、穢れていても問題はない。

閉じ込められる場所が公爵邸に変わるだけ。それでも城にいるよりも自由に違いない。

この人は私に微塵も興味を持っていないのだから。


「ーーーー閣下の提案を、、、いいえ、閣下、多大なご迷惑を掛けると思いますがリーの事、よろしくお願い致します。……1つだけ、お願いしたい事が御座います。」


「なんだ?」


「もしもこの先、閣下に愛する人が出来たなら私と離縁して下さいませ。私はリーを連れてグランシェスに戻ります。国内に留まるのならば問題はないのでしょう?家には兄もおりますし、金の瞳を持つリーは歓迎されるでしょう。閣下の許可なくリーを何処にもやりません。」


「……婚姻する前から離縁の話しか。」


眉間に皺を寄せて、大きな息を吐き不快を露わにした。


「これは契約結婚なのでしょう?ならば最初に意向は話しておくべきだと思うのです。閣下に愛する人が出来て、その方にお子が出来たら?愛する人を妻と呼び、自分の跡は本当のお子に継がせたくなるのではないでしょうか。その時の為に、はっきりさせておくべきだと思うのです。」


考えるべきはリーの身の安全。

邪険にされるだけならまだしも、公爵の跡目争いに巻き込まれ、危険に晒されないようにしておかなければ。

怖いけれど、金の瞳を正面から見つめる。王族に対しての礼儀も何もかもかなぐり捨て、母親として立ち振る舞わなければなるまい。これから夫婦として過ごすのであれば、これぐらいの意見ができなければ対等ではいられないだろう。言いなりの人形になるつもりはない。リーの為に否が応でも意見していく。これが最初の一歩になるはずだ。

しばらく互いに探り合っていたが、最初に視線を逸らしたのは閣下だった。

視線を下に落とした。


「もともと婚姻する予定も子どもを作る予定もなかった。この先もないと断言出来るが、君がそれで安心出来るなら約束しよう。」


安堵して吐き出しそうになった息を飲み込む。何の話しをしているかわかっていないだろうリーを覗き込み、微笑んだ。


「リー、船を降りたら髪を切りましょうか?もう隠す必要がないもの。」


キョトンとして、それからリーは嬉しそうに笑う。


「もう、ごっこあそびはおしまいなの?もう、もとにもどっていいの?」


「そうよ。もうおしまい。リシャールの勝ちね。」


2人でにこにこと笑い合っていると、閣下が慌てて口を挟んだ。


「待て、リシャール?それは、男の名前ではないか。」


2人で慌てた金の瞳を見返す。


「リシャール、()()()にご挨拶を。」


するとリーはピンと背筋を伸ばし、練習の通りに胸の前に手を当てて、紳士の挨拶する。


「はじめまして、おとぉ様。リシャール シオン グランシぇスでしゅ。4才になりました。」


閣下は一瞬惚けて、それから私に厳しい目を向けた。


「どういう事だ!女では、ないのか。」


私は気にもせず、閣下に微笑んで見せる。


「私、女とも男とも言っておりませんわ。閣下が勘違いなさっただけです。」


「こんな格好をさせていたら、誰もが女だと思うだろう!」


確かに、リーは淡いピンクのワンピースに濃い茶色の編み上げブーツを履き、肩まである髪を2つに分けて結んでいる。どう見ても小さな女の子。


「どちらの国の風習でしたかしら。小さい頃に女の子の格好をして過ごすと厄除けになり、身も心も強い子に育つと聞いた事がありましたので、それに習っただけです。リーは、愛称ですの。」


しれっと言い放った。

捕まった時に男と女では扱いが違うのではないかと打算が働いた。男は後継ぎとして奪われるかも知らないが、女は所詮家を出される身。いらないと者として扱われ可能性が高いと思ったのだ。

リーには誰かが本当の事に気がつくまでの遊びだと話していた。女の子になるごっこ遊び。気がつかれなければリーの勝ち。私が髪を切ろうと言ってもリーの勝ち。

思っていたよりも早く勝負がついたけれど、最強の手札が手に入ったから良しとする。


「本当に男なのか!?」


見た目、可愛らしい女の子だ。

信じきれないのもわかるのだが。


「……おとぉさまは、おんなのこのほうがよかったにょ?」


焦って聞き質す閣下を見て、リーは瞳に涙を浮かべていた。

それに気がついた閣下は、ハッとしてリーを抱き上げる。


「そんな事はない。ただ、女の子だと思っていたからびっくりしただけだ。」


今に涙が溢れそうな目元にキスをする。


「ほんとょに?」


「ああ、本当だよ。だからリシャール。私の息子になってくれるかい?」


「う、はい!」


リーはとても嬉しそうに笑って返事を返した。



もう、後戻りは出来ない。

私はこれから公爵夫人として公の場で、彼らと対峙しなければならない時が来る。その時の為に、強くならなければ。



読んで頂きましてありがとうございました。

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