表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ただのモブ(大嘘)がTSした原作主人公の代わりに逆転世界で頑張る話 ―女性特効ラスボスは俺が倒す―  作者: つくもいつき
短章 1年目春 モブの休日編(完)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/73

モブの休日②:春シーズン第二週 週末


 店の軒先、魔晄ランタンの電柱の下で、四人がぴたりと足を止めた。

 金具の低い唸りが柱の中で続き、昼前の風が吊られた看板をかすかに鳴らす。

 行政区の人々が歩調を緩め、遠巻きにこちらをうかがっている。



 さっきまで様子見していた衛兵も、ついに剣の柄へ手を添える。

 水の王国では軽い私闘に衛兵は介入しない。だが、ここは城壁内――しかも渦中の人物がモブ・アイカータだ。備えるに越したことはない、という顔だ。



(……うーん、ちょっと大ごとになってきたか?)



 居心地の悪さを覚えつつ、俺は四人のやり取りに集中する。



「は? 誰、おたくら」



 赤毛の冒険者がマリーをにらみ上げる。肩を張り、顎を突き出した。

 年季の入った喧嘩口調。二十六という年齢からして、場数も踏んでいるのだろう。



 だが目の前のマリーと自身の体格差は目に入らないのだろうか?

 ――その強気で無計画そうなところ八十点。矯正し甲斐がある。



「あたしたちが先に声かけたんだけど? 何、シスターと学生が正義のお姫様気どり? 知り合いっぽくいいやがって、引っ込んでなよ」



 今度は青髪。ルールルーへ顔を寄せ、真下に見下ろす。唾でも飛ばしそうな距離。完全にナメている。



 自分より背の低い相手を前に、殊更(ことさら)強気に出る。

 なんて小物なんだろうか。八十五点。一刻も早く、商会の教育班に引き渡したくなり俺は指をうずうずさせる。



「知り合いっぽいもなにも……」



「友だち」



 マリーもルールルーも、臆した様子がない。

 糸目は崩れず、無表情も崩れず。

 無風の態度が気に障ったのか、女たちは同時に手を振り上げた。



 感情的で喧嘩っ早い。頭の回転が速い証拠だ。

 リーダーの気質あり。鞭で現場を締め上げることもできるタイプ。九十五点。

 俺はすぐさま二人に合格通知を出したくなっていた。


 

 痛烈一閃――とは、ならない。



「~~っ!?」



「は……?」



 乾いた音が一拍。

 青髪は自分の手のひらとルールルーを交互に見つめる。

 違和感を覚えたのだろう。

 ルールルーの全身は微かに脈を打つように揺れ、衝撃がどこかへ逃げてしまっている。



 一方、赤毛の手首はマリーにがっちり押さえられた。

 俺の角度からは顔が見えないが、苦痛で歪んでいるのが声で分かる。



「あ、が……っ! は、放せぇ!!」



「あら?」



「ぃ~~~~っ!!??」



 もう一方の手首も掴まれ、赤毛は更に悲鳴を上げる。

 今度は足で攻撃――それを見越して、マリーはすねで蹴りを受け止めた。

 そのまま足払い。

 石畳が鈍く響き、赤毛が背から落ちる。こひゅ、と息が漏れた。



「プ、プラム!?」



 青髪が相棒の名を叫び、身をすくませた。

 だがその硬直もすぐさま終わる。

 女社会は下に見られたら終わり――そのことが本能的にわかっているのだろう、彼女はついに腰の剣に手をかける。



 俺が制止するより速く、ルールルーは詠唱を終えていた。



中転移(ミドル・テレポート)



 二人の姿が消える。

 次の瞬間、頭上数メートルから悲鳴。



「ああああぁあ!?」


 

 視線を上げれば、青髪とルールルーが空から降ってくる。

 青髪はバランスを失って仰向けの落下、ルールルーはスカートを押さえつつ真っ直ぐ下降――着地の差は歴然だ。



 高所からの落下は、原作ゲームでもバカにならないダメージである。

 耐性がなければ生命力を半分持っていかれる。

 地面でノびる青髪を見て、俺は落下耐性の重要性を改めて思い出す。

 素で衝撃耐性・落下耐性100パーセントであるルールルーが実にうらやましい。



「うぅ……」



「あ、あたしら、レベル4なの、に……」



「あら、とてもそうとは」



 赤毛の言葉をマリーはさらりといなす。

 基礎ステ※1お化け+日々の鍛錬で上乗せしているマリーから見れば、赤毛はとても上位レベルには感じないだろう。



 この世界ではレベルがすべてではない。

 種族や才能、努力の差は、確かにある。

 レベルによるステータスはあくまで最低保証――怠けているものと努力しているものでステータスの差は生まれる。



「ち、ちくしょう……」



 マリーにまたがれ、両手首を押さえられた赤毛の立場は決まった。

 彼女らがもっとも背負いたくないであろう烙印――負け犬を刻まれる。



 俺の態度次第では彼女らはますますみじめな思いを募らせる。この世界の女性は誰だって、他者に負け犬認定されるのを嫌がる。男の前でならなおさらだ。



 俺は状況を利用する。両手を叩き、間合いへ一歩。

 拍手を奏でながら、俺は足を進めた。

 


「~~合ぉ格ッ!!」



「……あ、あら?」



「?」



 思った見返りと違う。

 そんな不満そうな態度がマリーとルールルーから見え隠れしている。

 俺は二人にウインクと舌ペロを送る。

 両手を広げ、倒れた冒険者たちに近寄った。








―――――――――――――――――――――

〈用語解説〉



※1 ステータス:

 この世界での能力の指標。レベル上昇や鍛錬・生活で向上する。

 レベル上昇時の上がり幅が一番高い。

 構成項目:筋力/耐久力/器用さ/敏捷性/感覚/知力/魅力/運


初期ステータスについて(人間の場合)

 ・各能力に初期ポイント10を付与

 ・個体差による基礎ポイントをランダム加算

 ・タレント(才能)補正を適用


※原作の主要キャラクターは、基礎ポイントが高めに設定されている。



例:赤毛の冒険者プラム(レベル1)

 筋力 15 = 初期10 + 基礎5

 耐久 15 = 初期10 + 基礎5

 器用 15 = 初期10 + 基礎5

 敏捷 12 = 初期10 + 基礎2

 感覚 12 = 初期10 + 基礎2

 知力 10 = 初期10 + 基礎0

 魅力 10 = 初期10 + 基礎0

 運  11 = 初期10 + 基礎1


タレント補正

 なし(保有タレント:〈酒造の極意〉=酒造で品質上昇[最大+40%])


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ