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ー継承ー




ばっさばっさと斬る。斬る。斬る。


彼、安倍晴明と話したあの日以降、剣と霊力の扱いが飛躍的に上達した。特に霊力の扱いはまるで手足を動かうように自然にコントロールできるまでになっていた。


「前とは大違いだな。まるで別人だ」

「別人というか、前世の感覚を思い出してきたと言いますか・・・」

「後ろ」

「あ」


こうして戦闘中に話していたりすると、背後からの気配に気づけないあたり、まだまだである。こういうときは騰蛇がフォローしてくれるので非常にありがたい、が本人には言わない。


「すっごい今更だけど、(わざわい)って誰にでも見えるの?」

「まじで今更だな。禍は普通の奴には見えない」

「でも、見えないなら禍は襲い放題じゃあ?」

「見えないってことは存在しないってことと同義だ。だから、見えない奴の前では禍は実態を持たない。実際見えない奴を襲っているとこは見たことはないし、聞いたこともない」

「なるほど。つまり見える人がいなくなれば、禍も消えるってこと?」

「まぁ究極的にはそういうことだが。俺たちの存在真っ向から否定すんなよ」


私たちのような見える者たちが禍を実体化させている。うーん、因果なものというか、皮肉というか。


「口より手を動かせノロマ」

「む」


この男は絶対、文句を言わないと気が済まない病にかかっている。


「余計なこと考えてるだろ」

「ソンナコトナイデスヨ」


おかしい。無表情だったはずなのに。騰蛇はなぜわかるのか。それに心臓もおかしい。なぜだか鼓動が早くなっている。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「ねぇあの子、小学生かな?」

「かわいいー!!」

「あの年で既に顔が完成されているなんて、すごい」

「兄か姉を待ってるのかね?」

「声かけてきたら?」

「やだよ、捕まるよ」


アカリンとおしゃべりしながら玄関を出たら、なにやら騒がしい。どうやら、超かわいい小学生女児が校門で誰かを待ち伏せしているらしい。かわいい、といえば隣に歩いている方も超絶かわいいが。


「アカリン妹いたの?」

「え?いないよ?」


違うんだ。この地域美形が多すぎないか。少し歩けば美形にあたる。天国かなここは。


「あ、菖蒲(あやめ)じゃん。やっほー」

「朱莉さん、お久しぶりです」


黒色のランドセルを背負ってぺこりとお辞儀する。なんて礼儀正しい小学生なのか。


「知り合い?」

「うん、もんじぃの孫の菖蒲だよ」


なるほど関係者か。どおりで美形なはずである。


「あなたが、榊麻結莉?」

「はい」


に、睨まれている。美形の鋭い目、えげつない。たとえそれがランドセルを背負った小学生でも怖気づいてしまう。


「付いてきて」

「菖蒲?どうしたの?」

「朱莉さんは付いてこないで」

「うーん、行きたくなかったら行かなくていいよ。まゆりん」


行きたいか行きたくないかと言われれば、後者なのだが。菖蒲ちゃんは何か思いつめた様子だし。放ってはおけない。


「付いていくことにするよ」

「それなら止めないけど・・・菖蒲、まゆりんに失礼なこと言ったらダメよ」

「・・・」


あ、これは失礼なことを言われる感じですね。了解です。心の準備をしときますね。


「また明日、アカリン」

「うん、またね。まゆりん」


アカリンと別れて、先を歩く小さな背中についていく。少し歩いた先には例の車が。毎度お世話になってます。


「乗って」

「失礼します」


と言ってそろりと車内に入る。向かいの席に菖蒲ちゃんが座った。車が走り出し、菖蒲ちゃんが口を開く。


「菖蒲は、あんたを巫女様だなんて信じないから」

「と、言われましても。それはあだ名のようなものであって、自分で決めたわけではありませんし」

「ふざけないでよ!!」


ふざけてはいない。連吾とのやりとりの癖で反射的に言い返してしまっただけだ。日頃の習慣って怖い。


「いきなり現れて、みんなにちやほやされて、守られて!なんなのよ!!」

「?」


なんなのよ!!と言われても。正直自分でもよくわかっていない部分が多い。


「確かに、私はみんなに守られてる。でも、それだけじゃない。守りたいとも思ってるよ」

「今更・・・!それじゃあなんであのとき、守ってくれなかったの!?」

「あのとき?」


悲痛な叫びが車内に響く。


「2年前、蒼が全部を奪われた日」

「奪われた・・・?」


蒼とは卯月蒼先輩のことだろう。彼からは亡くなった十二天将の継承者について聞いた。まさか、継承者()()にも?なんで気づかなかったんだろう。十二天将だけを狙うことはありえない。むしろ人質として、その家族を利用することだってあったはずだ。


「蒼は2年前、目の前で家族を全員殺された。大罪の一人によって」

「っ!!」

「妹の桜は、蒼の目の前で両目を抜き取られて死んだ」

「・・・」


なんと惨いことをするのか。蒼の気持ちを思ったら胸が張り裂けそうだ。でも、それを私が言ってはいけない。言ってはいけないことである。


「それからずっと、蒼は苦しんでる。己を責め続けている。神子様なら、助けてよ!!蒼の心を助けてよ!!」


涙を流しながら叫ぶ菖蒲ちゃんの前に行き、その小さな体を抱きしめる。


「ごめんね。私に卯月先輩を救う力はない」


この力は決して万能のものではない。


「このままじゃ蒼が壊れちゃう。どうにかしてよ・・・」

「・・・」


何も言えない。かけるべき言葉が見つからない。私はただ、車が止まるまで、ただただ菖蒲ちゃんを抱きしめることしかできなかった。


「麻結莉さん、その、さっきはひどいこと言ってごめんなさい」


泣きはらした赤い目でぺこりと頭を下げてきた。


「謝るのは私の方だよ。ごめんね」

「菖蒲は八つ当たりしたから、菖蒲が悪いの」

「いやいや」

「いやいやいや、ってぷふっ」

「ふふっ」


謝罪合戦は平行線だったので、どちらからともなく笑いがこみあげてくる。


「菖蒲ね、もうすぐもんじぃの後を継いで、天空の継承者になるの」

「菖蒲ちゃんが?」

「うん。だから、よろしくね巫女様」

「こちらこそ。・・・そういえば継承者ってどうやって決まるの?」


聞いた途端、菖蒲ちゃんの顔が「え?巫女様のくせにそんなことも知らないの?」とでも言いたげな表情になった。すみません、知らないです。


「継承者には2つのパターンがあってね、1つ目は菖蒲みたいに生まれつき体のどこかに継承者の印である五芒星(ごぼうせい)が浮かぶパターン。10歳の誕生日に正式に継承者になるの。」

「ちなみに菖蒲ちゃんの五芒星の印はどこにあるの?」


袖をめくって白い腕を見せてくれた。左の二の腕には確かに星の形が。


「2つ目は先代の継承者が亡くなるか、戦闘不能になって突然体に印が浮かぶパターン。青龍、騰蛇、朱雀はこっち。一族の中から勝手に選ばれるから、今まで一度も途切れたことはない」

「なるほど」

「ただ、不気味なのが・・・」


不気味?継承者本人に不気味と言わせるほどの事実とはこれ如何に。


「継承するのはどっちのパターンも10歳なの。だから、一族の中に10歳になる子供がいれば、その子が11歳になるまで十二天将たちは内心びくびくしてる。だって」


いつ死んで世代交代してもおかしくないってことだものー。





毎回言っている気がする・・・遅くなってすみません。あと、「アニメのサウンドクリエイターになった俺が人生を謳歌する話」を書き始めました。

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