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ノーデンスから感じる膨大なエネルギーに、クトゥルフの頭が警鐘を鳴らす。
(ノーデンス……! 自分の全エネルギーを懸けて、捨て身で私を殺すつもりか……!)
クトゥルフは急ぎ、己の両手から作り出した、黒く輝くエネルギーの爆弾を射出する態勢を整えた。
そして、ノーデンスの右手にもエネルギーが集まり、激しく輝く球体となる。
「お前は逃げられんぞ、クトゥルフ。逃げればこの崩壊弾が地球を破壊する。地球がなくなれば、究極の星辰は崩れるだろう。お前はこの一撃を、受け止めるしかない」
「そういうことか……。完全に本性を表したな! 私が受け止めたところで、地球は壊れずとも、地球上の生き物は衝撃で死滅するだろう!? ディープワンズを皆殺しにして、私をも殺す気か! 散々利用してきた、人間すら見捨てて!」
「……、致し方あるまい」
「貴様……!」
「犠牲と共に消えろ! クトゥルフ!!」
ノーデンスの崩壊弾が、地球に向かって撃ち放たれた。クトゥルフはブリンクで地球とノーデンスの間に移動し、自身も崩壊弾を撃つ。
二つの崩壊弾がぶつかり合う。どちらも直撃すれば、星どころか銀河系の二つや三つは軽く消し飛ばしてしまうほどの威力を持つエネルギー弾だ。
互いの威力はぶつかり合うことで消耗されてはいるが、ぶつかっている間に周囲に広がる衝撃は、近くにある惑星にも降り注ぐ。
そう。地球にも、その途方もない威力の衝撃が迫っていた。
ルルイエで空を見上げる純たちは、宇宙から地上を揺るがすエネルギーを感じ取っていた。
「おいジョルド……。これ、やばくないか……?」
「ああ……。何か、とてつもない衝撃が来る。これはもう、地球から逃げるしか……。フォマルハウト! 急いで人間をドリームランドに避難させよう! 一人でも多く!」
「ダメだ! 間に合わない! それに、ディープワンズはどうする!? このままだと、みんな死んじまう!」
「ディープワンズ!? 君は……、ディープワンズまで助ける気なのか!?」
「当たり前だ! ジョルド。俺は人間もディープワンズも、全員守る!」
「馬鹿な! 何を言ってるんだ!? 大体、どうやって!? こんなの、守りようがない!!」
「方法なんて、一つしかないだろ!」
遂に、宇宙から衝撃が降り注いできた。地上の生物全てが軽く消し飛んでしまう程の衝撃が。
純は空に飛び、天にファイアスターターをつけた左手をかかげ、無謀にも立ち向かった。
「受け止めるんだよ!! 全部なぁ!!」
ファイアスターターから炎が噴き出し、空を覆った。炎が衝撃を受け止め、なんとか地上へ届くのを防いでいる。
だが、ルルイエ全体を守るには、純一人の力では到底足りはしない。すぐに押し負け、炎の壁は地上へ近づいて来る。
「無茶なやつだ! フォマルハウト!!」
衝撃に耐える炎の中に、雷が加わった。ジョルドの銀の腕から放たれる雷だ。
「一度救われた命だ! 最後まで付き合ってやるさ!!」
ジョルドの力が加わるが、それでもノーデンスとクトゥルフの攻撃の余波は抑えきれる物ではない。衝撃は徐々に徐々に、地上へ迫りつつある。
純とジョルドが必死に耐える姿を見て、銀の腕の戦闘部隊も動き出した。地面に巨大な魔法陣を描き、皆で魔法陣を囲んで念じ、力を込める。
「我々も加勢するぞ! このまま死んでたまるか!!」
魔法陣から光が飛び出し、何本もの光の柱となって、迫る衝撃に対抗し始めた。
だが、まだ足りない。まだ衝撃は止まることなく、純たちを潰さんと押し進みつつある。
「クソ! 足りない! 足りないぞ、フォマルハウト!! どうする!?」
「分かってる!」
このままでは、衝撃を止めきれない。しかし、純にはまだ希望があった。
「おい、てめえら! いつまでそうやって見てるつもりだ!?」
純が声をかけたのは、とっくに純の炎の束縛から解放されているにも関わらず、迫りくる破滅を前に、呆然と立ち尽くすだけのディープワンズたちだった。
「そのまま死ぬ気か!? てめえらも力があるんだろ!? だったら戦えよ!! なんでその力を使わないんだよ!? 使うなら、今だろ! 使え!! 生きるために使うんだ! 誰かを守るために使うんだよ!! あんだけ調子こいてた癖に、肝心な時ばっか腰抜けのまま死ぬ気か!? 笑わせんな!!」
ディープワンズたちは互いに顔を見合わせ、どうしたらいいのか分からず、恐怖の表情を浮かべるだけ。
純は苛立たしそうに、さらに発破をかけた。
「クトゥルフだって、自分のことで精一杯なんだよ! お前らのことなんて守っちゃくれねーぞ! けど、ここでお前らが踏ん張れば、お前らだけじゃない、他の力のないやつらも助けてやれるんだ!! やれ!! 戦うんだ!! お前らにだって、守りたいやつの一人や二人、いるんじゃねえのかよ!! 結局最後は、他の誰かじゃない、自分がやるんだ!! 自分が戦うしかないんだよ!!」
純の必死の説得を聞いて、ディープワンズたちは何を想ったのだろう。皆、何かを思い出したように、気持ちを口に出す。
「死にたくねえ……。死にたくねえよ、俺だってよぉ!!」
「そうだ……。俺の娘は……、まだ産まれたばっかだ……。会いてえ……。娘に、会いてえ……!」
「俺もだ……!」「俺だって!!」「そうだ……、童貞のまま死んでたまるか!!」
純の言葉に感化され、ディープワンズたちの顔つきが変わる。純は嬉しそうに、笑った。
「だったら、やろうぜ。一緒に、生き残るんだ」
そして、ディープワンズたちも純に加勢し始めた。全力でテレキネシスを放出し、衝撃に対抗する。
人間も、ディープワンズも。
己が魂を燃やして、みんなが。生き残るために、守るために、命をかけて協力し合い――――
遂に、地球を滅ぼす衝撃を、全て防ぎきったのだった。




