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日にちだけが過ぎていき、いつの間にか学校が再開しないまま、夏休みの時期に入ってしまった。当然、学校からの連絡はない。連絡を取ろうとしても、誰も電話に出ないのだ。
純が何度クトゥグアを呼ぼうと、夜空のフォマルハウトの星に祈っても、クトゥグアからの返事は一度として来なかった。
何も変わらず、誰とも会うことのない日々が続いた。
もしかしたら、もうこのまま永遠にこんな静かで寂しい日が続くのかもしれない。そんな風に錯覚してしまいそうなくらい、何の進展もない毎日が続いていた。
けれど、そんな甘い空想は、恐ろしき支配者の采配一つで、あっさりと崩れ去るのだ。
その日は、不気味なくらいに綺麗に晴れた空で、なんの変哲もない朝に見えた。
しかし、その日こそが、世界が滅亡する日であったのだ。
「――――始まるよ」
朝、目を覚ました純の前に、エインセルのスマホからハスターが出てきた。
「うわっ。なんか出てきた! 純! またこの女ですよ!」
「始まるって……、何がだ? まさか……」
ハスターは悲しげな瞳で、純に終末の始まりを告げる。
「気を付けて。クトゥルフは、必ず何かを仕掛けてくる。忘れないで。クトゥルフが復活したら、すぐに私の力を使うことを」
警告だけを残し、ハスターがエインセルのスマホの中に戻る。
すると、一階で何か大きな物音が聞こえた。正道に何かあったのかと思い、純は急いで一階へと駆け下りた。
廊下にはスタンドミラーが倒れており、正道がこれにつまづいて大音を出したのだと思われた。けれど、肝心の正道本人がそこにいない。開け放たれたままの玄関が、正道が外に出て行ったのだと暗に示していた。
「純! 純! 外を見てください!」
エインセルが慌てた声を出し、純はすぐに玄関から外に出た。
そこには、人の波ができていた。道という道を埋め尽くし、同じ方向へ歩いていく人混みだ。
伊須升市の人間だけではここまで長蛇の列はできまい。他の町からも人が集まり、どこかへと真っすぐに向かっている。
「純……。列の中に……、ディープワンズが……」
「なに……!?」
エインセルの言う通り、よく見て見れば、列の半分近くがディープワンズと思われる者たちであった。頭がすっかりカエルの様に変わっている人や、まだ肌の一部が両生類のそれに近い物になっているだけの人まで、ディープワンズではない純粋な人間に混ざって歩いている。
ディープワンズたちもまた、操られているかのように、人間と一緒になって同じ方向へ向かっている。
「そうだ……、親父は……!?」
純が人混みを見渡し、父の姿を必死に探す。
「いた……!」
人とディープワンズに紛れ、ちらりと見えた父の後ろ姿に、純は大声で呼びかける。
「親父!! おい! 親父!!」
どんなに大きな声で呼んでも、正道は一向に気づく様子もなく、人混みの中に消えてしまった。
「くそ……!」
純は屋根の上に登り、列が向かう方に何があるのか確認した。
列は海の方へと向かっており、人々やディープワンズが進む海辺には――――
「ありゃあ一体、なんだ……?」
海辺からすぐの近海。歩いていける程度の深さの場所に、巨大な渦潮が発生していたのだ。
人とディープワンズの行列は、みんなその渦潮の中に入って、海の底へ消えていってしまっていた。
「あれは……、どうやらワームホールの一種のようです。どこか別の場所に、みんなが移動させられているみたいです……」
「どこかって、どこだよ!? とにかく、俺も行ってみるしか……!」
純が屋上から降りようとした時、純のスマホが着信音を鳴らし始めた。こんな時に電話がかかってくるとは随分と不気味なことだ。純は緊張しつつ、誰からの着信か確認した。
電話は、神宮からだった。
電話に出た純に、神宮は短く、こう告げた。
「先輩……、ですか? 今すぐ、神社まで来てください」




