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第24話 えらいこっちゃ

「クドウの兄貴―!」


振り返ると俺の予想通りそこにはプリズンが立っていた。

俺を兄貴呼ばわりするのは魔界を含めたとしてもこいつくらいのものだ。


「おう、プリズン」


「へへ、聞きましたぜ、兄貴。もうD級依頼受けたらしいじゃ……ってもう終わったんですか? 流石は兄貴ですぜ」


そりゃそうだ。


お前より下のランクの依頼をアルジールまで連れて失敗する方が難しい。


このプリズンも一応はC級だ。

1人ではどうか分からないが、普通にパーティーを組めばプリズンでも普通にクリアできるレベルの依頼だったのだ。


クリアして当然である。


「あぁ、そうでした、聞きましたかい? 兄貴」


外が騒がしかった件についてだろうか? そういえば結局エリーゼは教えてくれなかったな。


本当にやる気の無い女だ。

俺が冒険者協会の偉いさんなら速攻でクビにするところだろう。



「いや、知らないが、外が騒がしかった件についてか?」


「流石は兄貴、察しがいいぜ」


そりゃ、俺じゃなくてもあれだけ騒がしかったら馬鹿でも気づく。


「魔人が出たらしいですぜ。今ユリウス教や冒険者協会の上層部は大騒ぎって話でさぁ」


「何? 魔人だと?」


俺がいなくなった魔界で何かあったのだろうか?

それにしても動きが早い。


俺が突然どこかに出かけて数日帰ってこない事なんてザラにあったはずだが、これまではそんなことはあまりなかったはずだ。


「そういや、兄貴たちは見ていないんでしたか? 確かゴブリンの洞窟の依頼だったんですよね?」


プリズンの話が見えない。俺達が何を見なかったというのだろうか?


「洞窟にいた兄貴たちは知らないんでしょうが、2時間ほど前でしょうかね? このシラルークや周囲の町一帯を闇が覆ったんでさぁ。それで東の方角に光の柱を見たって目撃情報が多発しまして、協会に助けを求める人が多発したらしいですぜ」


プリズンが言うにはそれを重く見たユリウス教の上層部が古くから伝わる文献を読み漁った結果、詳細は分からないが、文献の中に周囲を闇に覆う魔族がいたという情報が出てきたという。


それで魔族が出たという騒ぎに発展している。というのが今の現状なようだ。


あれ? なんか身に覚えがある話だな。


うん、気のせいだ。間違いない。


そう思うことにした俺だったが、横にいたアルジールがプリズンの話に気づいたように言った。


「プリズンよ、それは私の雷——」


「んー、ごほんごほん!」


俺はわざとらしく咳き込んだ。


「えっ、私の……なんですか? アールの兄貴?」


不思議そうにアルジールに尋ねたプリズンに俺は必死に誤魔化にかかる。


「アールが言いたかったのはだな……。私の完全無欠の頭脳から叩き出した結果、それは魔人だな! 魔人に違いない! そう言いたかったんだよな? アール?」


「いえ、あれは私の雷——」


「そうだよな? アール」


俺はプリズンが気づかない速さでアルジールの足を踏むと、アルジールは俺の方を見て「はい、私の完全無欠の頭脳から叩き出した結果、それは魔人だな! 魔人に違いない! そう言おうと思っておりました」と言い直した。


やや、棒読みだったのはいただけないがまぁいいだろう。


「えっ、なんか違いませんでした? 雷……とかなんとか言ってた気がするような」


「アールは緊張すると絶望的に活舌が悪くなるんだ。魔人が来たと知って緊張しているんだ。そうだな? アール?」


「はい、緊張しておりました。クドウ様」


またも棒読みだが、仕方ない。


演技も重要だということは追々教えていけばいいだろう。


そんな俺達のやりとりを近くで聞いていたエリーゼが「そういえば」とプリズンの話の補足情報を伝えてきた。


「勇者様達がこの街に向かってきているそうですよ。噂ではユリウス教の聖者様も来られるそうで」


「えっ、マジで?」


なんかしょうもない兄妹喧嘩が大事になってきた。


魔人などこの街近辺にいるはずがない。


え、えらいこっちゃ。


俺は頭を抱えるのであった。


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