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第23話 女の戦い

女の子の争いって恐ろしいですよね。

作者は未だ経験ありませんがw

アルジールの妹アルメイヤを仲間にした俺達はシラルークに戻った。


俺達は宿屋に戻る前にまずは依頼達成の報告とアルメイヤの【魔王】加入の申請のために冒険者協会に向かうことにした。


町中を歩いていると、辺りがなにやら騒がしい事に気づいた。



「なんか騒がしいな。魔獣でも出たか?」



「どうなんでしょうか。ですが魔獣如きクドウ様にかかれば、敵ではございません」



そりゃそうか。

まぁなにかやばそうならエリーゼが何か教えてくれるだろう。


そんな事を考えながら俺はアルジールの方をチラリと見る。


どうでもいいが、少し離れようか? 暑苦しいよ?

アルメイヤはいつの間にかアルジールの手を握っていた。


傍から見れば、少し歳が離れたカップルか弟を溺愛している姉と弟に見えているのだろうか?

少なくても兄に溺愛している妹にはどうやっても見えない。


俺の視線に気づいたのかは分からないがアルジールはアルメイヤに言った。



「暑苦しいから少し離れろ。クドウ様の前でみっともないぞ」



「えー、でもアールがそう言うなら離すー」



そう言うと、アルメイヤは名残惜しそうにアールから手を離すがそれでもアルジールからぴったりと離れず歩く。


今でもアルメイヤの豹変ぶりには慣れない。


そうこうしているうちに俺達は目的の冒険者協会へとやってきた。

中に入ると、冒険者の視線が俺達に刺さる。



「おい、なんか一人増えてるぞ」「2人でD級依頼を受けたって聞いたがもう終わったのか?」「つか女の方めっちゃ美人じゃね? 金髪の方の女か?」



要約するとそんなヒソヒソ話が俺の耳に聞こえてくる。


アルジールも聞こえているのだろうが、何も気にすることなく歩いている。


アルメイヤはなぜか顔をぽっと赤く染めてモジモジしながら歩いている。

アルメイヤの様子がいつも通りおかしいが俺は気にすることなく、エリーゼがいる受付に向かう。


おかしいな。いつもならエリーゼの「アール様ー!」とこちらに手を振ってくるお時間のはずだがそれがない。


だが、エリーゼはいつもにも増した笑顔で俺達を待っていた。



「お疲れ様でした。クドウさん、アール様。もしかしてもうD級依頼をクリアしてきたのですか?」



アルジールだけ様付けなのを除けば普通の受付嬢としての対応だ。もちろんこの女が普通であればそれが正しいのだが、エリーゼという受付嬢は普通ではない。


この普通の対応こそ異常だと俺は本能で感じ取った。



「これ、ゴブリンの証拠部位だ。確認してくれ」



俺はゴブリンの証拠部位が入った袋から、30体以上分のゴブリンの耳を取り出し、エリーゼに渡すとエリーゼは確認の為、ゴブリンの耳の数を数え始める。



「はい、確かに。あ、クドウさんにお尋ねしたいことがあります。いいですか? いいですよね?」



なんだろう? なんか笑顔が逆に怖い気がするが。


洞窟内の状況でも知りたいのかと思っているとエリーゼが俺にぐいっと顔を近づけてきた。


笑顔が怖いよ。できれば少し離れて欲しい。



「なんです? あの女は? 確かF級冒険者の方ですよね? なんであんなにアール様にベタベタとくっついているんですか?」



仕事と関係なくね? いい加減、こいつホント仕事しろよ。


俺がそう思っていると後ろからアルメイヤの優し気な声が聞こえてきた。



「聞こえていますよ。エリーゼさん。私、アールの幼馴染の——そう、幼馴染のメイヤと言います。これからも私のアールをよろしくお願いしますね」



幼馴染を異常に強調したアルメイヤがそう言うと、エリーゼは今まで見せた中で一番の笑顔を見せた。



「あなたのアールさんではないと思いますがぁ、これからもアールさんとよろしくさせていただきますね。只の幼馴染のメイヤさん」



俺はアルメイヤとエリーゼの間にバチバチとした視線を幻視した。


エリーゼもなかなかの玉だが、アルメイヤも負けてはいなかった。



「そうですか、あなたにはこれが只の幼馴染に見えますか。目があまりよろしくないのですね。良い眼鏡屋さんでもご紹介いたしましょうか?」



そう言い、アルメイヤはぐっとアルジールを引き寄せ、腕を組んだ。

傍目にはアルジールも嫌がっているようには見えない。実際に甘えたがりの妹に腕を組まれただけなので、別に何もおかしくはないのだが、それを知らないエリーゼの頭の血管からプチっと音がしたような気がした。


そして、エリーゼはアルジールには聞こえない声でなにやらブツブツと呟き始めた。


俺は注意してエリーゼの声を拾うと——



「まだ負けてない。まだ負けてない。このクソ女が。ぶつぶつぶつぶつ」



こ、こえーな、この女。


恐らくアルジールがこの場にいなければ殴り合いの血闘が始まっていただろう。

流石にアルメイヤが冒険者協会の受付嬢に過ぎないエリーゼに負けるはずはないが、問題はそこではない。


理由はどうあれ、こんな場所で冒険者であるアルメイヤが受付嬢のエリーゼをボコボコにしてはアルメイヤの冒険者としての立場は危うくなる。



「エ、エリーゼさん、あの2人ですけど、お互いの実家が近くで昔から姉弟のように育っただけで仲は良いですけど恋人関係とかでは決してないから冷静に」



俺がなんでこんなフォローを入れなければ分からないが、エリーゼにそう耳打ちするとエリーゼにまぶしい笑顔が戻ってくる。



「ですよねー! 姉弟のようなものですよねー! 私ったら勘違いしちゃった! てへっ!」



コイツの頭の中はどうなっているのだろうか?

天使と悪魔が同居でもしているのかもしれない。

まぁ悪魔と悪魔という線もあり得るが。



「あのー、そろそろ依頼の話を進めてもらえると助かるんだけど」



俺としては女の戦いの行方などどうでもいい。早く話を進めてもらいたい。


エリーゼは俺に言われてやっと冒険者協会受付嬢の仕事を思い出したのか冷静な顔に戻った。



「そうですね。依頼の件ですが、問題なく達成となります。皆さんお疲れ様でした。あっ、ちなみにですが、これでアール様とクドウさんはF級冒険者からE級冒険者へと昇格になります」



「えっ、一回依頼達成しただけだけど?」



「達成しただけって2ランク上の依頼を2人で……ですよ? 一応、冒険者協会の決まりで2ランク上の依頼を4人以下のパーティーのみで達成した場合はそれだけで1ランク昇格させることになっています。普通ではありえませんが、実力を持った冒険者がいつまでも低ランクのままでは冒険者協会の利益になりませんからね。もちろん不正などがあればペナルティーが発生することになりますが、問題ありませんよね?」



問題はもちろんないが、冒険者のランクなど簡単にポンポン上がるものではないと思っていた俺にはかなりの朗報である。 

 

つまりS級の依頼を確実にこなせる実力さえあればあと3回、2ランク上の依頼を達成すればそれだけでB級冒険者になれるということになる。


とはいえ、この冒険者協会ではA級依頼が最高ランクな上にそもそもS級依頼を達成する初心者冒険者など普通は存在しないだろうから、普通に考えれば一般的な方法ではない事は明らかだ。

   


「あぁ、問題はないよ」     



「それではこちらがE級冒険者プレートになります」 



「えっ、早いな、もう作ったのか?」



プレートに名前とパーティー名である【魔王】の名を彫り込むだけとはいえいくらなんでも早すぎる。



「アール様が依頼を失敗するわけがありませんので、彫師の方にあらかじめ頼んでおきました」


それでいいのか? 受付嬢よ。


まぁ今回の依頼の成否に関わらず、俺達であればすぐにE級に昇格すると読んでの事だろう。


プリズンを一発で沈めた実績?もある事だし、それくらいは受付嬢の権限でもどうにかなるようだ。



「そ、そうか、助かったよ。あとこいつをうちに入れたいんだけどできるかな?」



エリーゼは明らかに嫌な顔をしたが、一応は冒険者協会受付嬢だ。さすがに嘘はつけないし、吐いた所ですぐにバレる。



「【魔王】にですか? 問題はありませんが……」



「ほら、姉弟のようなもんだからさ……」



俺がフォローのような事を言うとエリーゼは渋々アルメイヤにプレートを寄こせと催促する。



「ほら、メイヤさん、さっさとプレートの裏にパーティー名彫っちゃうから」



アルメイヤがエリーゼにプレートを渡すとエリーゼは受付の裏に入って行き、1分も立たないうちに戻ってきた。



「はい、どうぞ。パーティー名を刻印しておきましたのでこれでメイヤさんも『魔王』の一員となります」



エリーゼがアルメイヤにプレートを手渡すと裏に確かに【魔王】の名が刻まれている。

魔法による刻印なのか、彫ってある所に僅かな魔法の残滓が残っているようだった。



「ありがとう、エリーゼさん」



何も言わないアルメイヤに代わって俺がエリーゼに感謝を伝える。

普通は逆な気もするが俺はそんなことはもう気にしない事にしていた。


そんな時、俺達の後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきたのだった。



「クドウの兄貴―!」



この声は……。

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