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ここに六つの聖女を立て、お前を殺そう。国王。  作者: 夜乃 凛
第二章 第五聖女との邂逅

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死のごとし

 フランシスカ一行は、フランシスカ領へと歩みを進めていた。目指すは深井戸のある森。なんでも、大きな井戸が森の中にあるらしい。一行は、馬に乗っていない。マリアンヌ達に預けてある。森を抜けるためである。洞窟であろうと森であろうと、馬に乗ったままでは、進軍は叶わない。


 道中、奇妙な人物に、フランシスカは遭遇した。修行僧のような格好をした、傘を目深に被った、謎の人物。

 フランシスカ一行は警戒心を抱いたが、修行僧らしき男は一人だったので、左程は緊張しなかった。

 男が語りかけてくる。


「銀貨を10枚頂きたい」


 突拍子もない言葉。銀貨10枚は安い金ではない。銅貨、銀貨、金貨とあるが、それなりに価値のあるものだ。それを寄こせと言ってくる。しかも、頂くのだから、タダである。

 本来、こういう場面で、フランシスカはともかく、ホウオウは警戒する。百戦錬磨の直感が、敵の敵意を感じ取るのだ。だが、修行僧らしき人物からは、殺気が感じられなかった。

 応じたのはフランシスカ。


「どんな事情が?」


「銀貨を10枚頂きたい」


 言葉が変わらない。フランシスカ一行の緊張が、強くなった。

 修行僧は帯刀しているのが見える。しかしホウオウから見ると殺気が感じられない。


「銀貨を渡すとして、それで何が起こるというのです?」


「銀貨を10枚頂きたい」


 静寂。後に、会議。一番早く喋ったのはシュクレ。


「フランシスカ殿、無視しましょう。この輩は一人。大した脅威ではありません。それに、いるのです。この土地には、脅しをかけるしかない人種というのが。それらは、警戒心を植え付け、我々を威圧してきます。ホウオウ殿はどう思いますか?」


「あの男からは殺気が感じられない。シュクレの言う通り、脅しかもしれないな」


 選択肢は二つしかないのだ。結局、渡すか、渡さないか、である。

 その決断をすることは容易に思えた。本来ノータイムで渡さない。いちいちこのような輩を気にしていては、やっていられない。

 フランシスカが意を決し、修行僧に告げることを決めた。


「上げることは出来ません。あなたは、それほど痩せているようにも見えない。食事に困っていないはずです。私たちは、あなたには銀貨10枚を渡せません」


「銀貨10枚を渡せないという結果だけが残る」


 修行僧の声が、低く響く。その瞬間、シュクレはハッとした。


「待った!時間をくれ!」


「銀貨10枚を渡せないという結果だけが残る」


 男は同じ言葉を話し、刀に手を当てた。

 その瞬間に殺気。ホウオウも臨戦態勢。まるで殺気なんてなかったのに。


「ホウオウ殿、油断してはなりません!否定殺しです!」


「否定殺し!?」


 フランシスカがシュクレに詰め寄った。


「願いを否定された瞬間に強くなる悪魔の」


 その言葉を唱え終わる前に、『否定殺し』の刃が、シュクレを襲っていた。ホウオウが状況を見て、シュクレに体当たりしていたから、ダメージは減ったが、シュクレは肩に一撃を食らってしまった。

 護衛部隊も臨戦態勢。だが、否定殺しの速さが速すぎる。


 まともに相手に出来るのは、ホウオウくらいのものだった。だが、その彼女も苦戦していた。

 強い。刃を追いかけることは出来るが、次の動きが読めない。

 否定殺しはホウオウを狙っている。数多の剣撃。ホウオウは防戦一方である。護衛部隊は蚊帳の外。

 フランシスカは、何もしていないわけではなかった。ホウオウが時間を稼いでくれている間に、必死に考えた。乗り切る策を。

 考える。考える考える……。

 閃く。ノータイム。


「待ちなさい!銀貨を10枚渡します!!」


 そのフランシスカの言葉と共に、否定殺しの剣撃が収まった。フランシスカの策は、否定されることによって強くなるのだから、逆に相手の意見を肯定してしまえば良い、というものだった。

 実際にそれは功を成し、否定殺しの動きが明らかに落ちた。殺すか殺さないかはフランシスカ達の判断だったが、ホウオウがノータイムで殺した。危険人物だったからである。


 否定殺しが死んだのを確認し、皆、シュクレを囲った。傷は浅そうだ。しかし、応急処置はしなければならなかった。


「すみません」


 苦悶の表情で言うシュクレ。


「喋らないで。今、処置をします」


 フランシスカは、カバンから、『聖魔の石』を取り出した。聖女の持つ、秘密の道具。それは、人の傷をたちまち癒すことが出来る。

 聖魔の石が光り、解放されているシュクレの表情が、徐々に落ち着いてきた。


「暖かい……」


 シュクレが呟いた。

 無事、死人が出ずに乗り越えることが出来た。シュクレが落ち着いてから、再出発することになった。


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