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d|IF|fer Affection  作者: 江川無名
 
28/31

第二十五話 雑多とかんしょう

―― 《Secret due to injustice》 ――




「あっつ!!」



 アレクは転移装置から飛び出した瞬間に叫んだ。他の都市(まち)――というより、さっきまでいた都市に比べて明らかに暑い。

 夏とはいえ流石に暑すぎる、と思ったりもしたが、周囲を確認して、暑いのも無理はないと考えを改める。


 建物は殆どすべて一階建てで、空に浮かぶ陽を隠す建造物が一つもない。都市の道自体はコンクリートでできているようだが、その上に砂が覆いかぶさっており、コンクリートを拝むことはできない。


 風もなければ、木々もない。――砂漠に近しい空間で、この世界ではかなり珍しい。

 

 アレクに至っては世界を旅しているにも関わらず、初めて見るような場所だった。

 物珍しい風景を目に焼き付けながらも、彼は目的の人物を探し始めた。

 


 数十分後。


「覇気のない間抜けな面で、うちに挨拶するのやめてくれへんかな?」

「は?」


 アレクは漸く見つけ出した目的の人物に煽られていた。



 絨毯の上に置かれた売り物の奥にある、大きめの椅子に腰かけている少女。

 少女とは言うが――低身長、童顔、胸がない、という外見的な判断でしかなく、実際の年齢は不明である。


 橙色に限りなく近い茶髪を持ち、髪型は丸みのあるショートボブ。薄橙色と茶色を基調とした白衣のような上着を羽織っており、その上着の袖は手を完全に隠し、彼女が腰かけている椅子の座枠に当たってしまっていた。



 そんな、この世界では珍しい服装をしている女性は、黒玉の如く漆黒の目で、アレクを見つめながらほくそ笑んだ。


「まあ、元から近づく小鳥が逃げ出すような顔やけども」


 彼女の二言目の煽りに、アレクは無言を貫き、沈黙を作り上げた。

 しかし、それはスルーするという意味ではなかったらしく、彼は売り物にゆっくりと近づいていき――。


「おーっと手が滑ったー」


 

 ――本気で蹴った。



「あああ!! うちの売りもんがあああ!! なんてことしてくれとんねん!! しかも、それは足や!!」


 見事なサイドキックが決まり、見るだけでも金を必要としそうな売り物の数々が、道に吹っ飛んでいく。

 綺麗に弧を()き、空を飛ぶ。少女の絶叫、周囲の視線――アレクは口笛拭いて、知らぬふり。


 割れ物自体はなかったのか、あるいは実はアレクが加減していたのか。地面との衝突で不協和音を奏ではしたものの、割れた売り物はなかった。

 


「ところでさ、今何日?」

「今はそないなこと言うとる場合じゃないねん!」


 少女はアレクを睨みつけた後、道に散らばった売り物をそそくさと回収し始めた。百四十センチもない少女の可哀そうな姿を見て、周囲にいたヒト達も売り物を何個か回収して、少女に手渡していく。

 ――状況にかこつけて売り物を盗ろうとするヒトがいないのは、この都市の人間性が良い証拠なのだろう。

 


 アレクも一つだけ散らばった売り物を手に取り、絨毯の上にあった小さなテーブルに置く。

 その時点で、殆どの売り物が元の位置に戻っており、少女も乱れた服を整えて、椅子に腰かけなおしていた。


「……さっきの質問やけど、確か……十四日とかやなかったかな?」

「じゃあ、丸三日かかってるのか」

「転移するのに?」

「そう。俺からすると一瞬だったんだけどなあ」

 

 ハルキと別れた都市で転移装置を使用した次の瞬間にはこの都市にいた。アレクからすれば移動には五秒もかかっていない。

 しかし、実際には三日もかかっている。――確実に歩いたほうが早い。


 勿論、転移装置は発明されてあまり月日が経っておらず、装置としての不具合が多いことはアレクも理解していた。

 そのため、死ななかっただけマシ、と彼は考え、転移に三日もかかったことに憤ることはしなかった。

 


「ところで、アレクはん!  アレクはん!! うちのところに来たってことは、遺跡に眠っていたお宝持ってきはったんやろ?」

「ああ、そうそう。ちょっと待っててくれ」

 

 少女は少し高揚気味にアレクの服の裾を引っ張って、遺跡の宝を求める。

 アレクは魔法でしまっていた宝を二つ取り出し、それらを少女に手渡した。


「ほう……まあ、高値でこうことに変わりないけども」

「見た目はあまり綺麗ではないよな」

「……どれだけ性能が優れとっても、売りもんとしては、見た目も重要やからなあ。いや、売らなくてもええんやけど」


 少女が見ている遺跡の宝。

 一つは、切れ味は抜群だが、完全に錆び切っている短刀。一つは、美しい月の装飾品が付いているが、月も軸も欠けてしまった小さな(かんざし)。前者はどれだけ研いでも取れそうにはなく、後者は元のデザインが分からない。



 少女は唸りながら、二つの宝とにらめっこをし始めた。

「お宝……にするには、な気がするんやけど。――何を考えてたんや?」


 アレクは少女が品定めを終えた後のことを考えて、先にウエストポーチから、ハルキとともに手に入れた宝を取り出しておく。



「……よし、決めた! これくらいでどうや?」



 少女は懐から取り出した紙に買取金額を記載して、アレクに渡した。

 しかし、アレクは特に確認するそぶりもなく、それを服についてあったポケットにしまった。


「俺はどんな金額言い渡されても気にしないから、お前が紙に書いた金額で構わないよ」

「ありがたいことやな。なら、これで成立やな。お金は今度でええか? それとも今?」

「また今度でいいよ。金ならまだあるから」


 了解や! と、満面の笑みで告げてくる少女を見て、煽りがなければ可愛げがあるのに、とアレクはつい思ってしまう。


「こほん。それはそうと……これも見てくれないか?」

「これは……!? アーティファクトも見つけとったんかいな!」

「そうなんだよ。……《楽しみの欠片》――そんなところかなと」



 遺跡に眠る四つのアーティファクト。

 ヒトが持つ四つの感情をモチーフにしたと思われる、クリスタルのような欠片。

 見た目だけで判断しようとすると、天然物に見えるが、紛れもなく人工的に作成されたものである。



「まあ、次に《楽しみの欠片》が出るのは予想通りやったけどな」

「そうなのか?」

「まあ、めっちゃ確証があったってわけでもないんやけども。……どうせ、出てきたのは女性っぽい見た目したやつやろ?」

「おお、正解だよ! なんで!? なんでわかったんだ!?」

「そんな興奮せんでも! ……種明かしっちゅう程じゃないけど、一応遺跡の作り話は残っとってな」

「俺もその話を聞いてから遺跡探索してるけど……そんなことも書いてあったんだな」


 アレクが遺跡を探索するようになった理由は、幼少期にその話を他人から聞いたことによるものが大きい。しかし、誰かから伝えられる内容は、本来の事実とは異なっていたり、誇張されていたり――中には偽りが堂々と入っていることもある。



「要は一つ目の欠片を持っているモノがそこに入れば、最後の敵は女性っぽい見た目のやつ。――確か、名前はライリアラ……とかやったかな」

「でも、そんなことできるのか?」

「できてるからこうなっとるんやろ? 欠片は集めないと意味がないかもしれんへんけど、常に繋がっている状態ではあるってことやな。だから、近づいた欠片を見つけて、その数に応じて、金属板が特定の形になる。……もしくは、そもそも既に遺跡にない欠片の数を把握してあるか、やな」


「古代文明か分からないけど、すごいなあ」

「古代文明が現代文明より優れてるなんて、演目とか、小説によくある話やないか。……まあ、アルカナが出てくるより前の情報は一切ないし、遺跡が古代文明かどうかわからんし、古代文明が存在するんかも分からへんけどな」



 返すわ、と言いながらアレクに《楽しみの欠片》を丁寧に返却する。

「次は怒りで、最後に哀しみ――やな。まだまだ先は長いかもしれへんし……もしかしたら――すぐに達成するかもしれへんな」

「ホント、すぐ見つかるといいんだけどな……」



 アレクは薄笑(うすらわらい)を零す。



 何かを望み、何かを掴もうとしているが、先が見えない――暗闇を掻いて、希望のために足掻いてる。そんな、彼に似つかぬ――いや、最も似合う笑みだった。


 笑みを零すのをやめたアレクは、左側に視線を向けると、小さな溝にはまった売り物を発見した。

 先程飛び散ったものがまだ残っていたらしい。


 彼はその小さなアクセサリーの元に近づいて、しゃがんで手に取る。


「これも落ちてたけど」

「――ほんまや、気づかんかったわ」

「商売人としてそれはどうなんだ?」


「一応置いてはいるけど、そこまでええ商品ちゃうからなあ。……もうええか。アレクはん、そいつそこの鞄になおしておいてくれへん?」



「…………は?」



「はい? ……ああ、すまへんすまへん。そこの鞄に片づけておいてほしいねん」

「おっけー。――あ、その良く分からない喋り方、やめた方がいいと思うぞ?」

「これはうちのアイデンティティや!! それに愛嬌あるやろ!?」



「煽りがなければなー」



 軽い言い合いをしつつ、アレクは右手に持っていた売り物を、少女の左側にあった風呂敷のような大きな鞄の中に入れる。


「じゃあ、俺の用事は終わったし! さっさとハルキの元に戻るか! とはいっても、三日かかるみたいだけど」

「追い打ちをかけるようで悪いけど、その転移装置バグってるらしくてなあ。一回転移したら、丸一日使えへんらしいわ」

「マジか……!! ただでさえ三日かかるのに、更に一日追加かよ!」


「隣の都市なら、歩いたほうが早そうやけれども、さすがにこの暑さでは難しそうやねぇ」

「……おとなしく待つことにするよ」


 暫く考えた後、アレクはがっくりと肩を落とし、落胆した顔をする。

 同情するかの如く、都市に温かな風が吹く。アレクがこの都市に来て、初めての風だった。


「せやせや。……どうや、ハルキはんとやらとは、うまくいきそうなんか?」

「…………さあな。――ただ、俺はもうあいつらとの接し方を決めてるから」



 一瞬翳った顔つきになったが、すぐに表情を元に戻す。

 そして、話題を切り替えるように、アレクは両手を叩き、少女に疑問を投げかけた。



「よく考えたら、お前の名前知らないな」

「今更気が付いたんかいな!?」


 少女もアレクがそう言った理由を凡そ分かっていた。だから、話を掘り下げようとはせずに彼の話題に乗っかった。


「……でも、うちの名前なんてあってないようなもんや。AでもZでも、あとはWでもHでも何でも好きなように呼んでくれたらええよ」

「ああ、なんか初めて会ったときにそんなこと言ってた気がする。――すっかり忘れてたよ」


 アレクは昔を思い返し、苦笑する。

 結局、その場で呼び方が決まることはなく、アレクは少女と世間話や遺跡の話をして、その場を後にした。



「次はうまくいくとええな。……アレクはん」


 

 何を思ったか――少女は一人そう呟き、空を見上げながら目を閉じる。

 

 穏やかな風が吹く。それはこの都市にも、夏にも相応しくない涼しげな風。

 小さな鳥が空を飛ぶ。別の場所に向かうために。




「さっきのもこれからいうのも全て独り言……せやけども、どうせ誰かにみられることになるんやろ?」



 …………。



「ここで話とかんと、二度と残せんくなる。……まずはうちの名前について、少し話しておこうか。ヒントを言うならば、うちの名前はこの世界ではあり得へん名前や。なんでも、好きなように覚えてもらってもかまへんのやけど、しいて言うなら……イカンダ、くらいやろか。――相変わらずだっさい名前やなあ」



 ---------・-・-・・・・-・-・-・-・・-・・-・・-



「この口調もこの世界にはないし、今後も出てこうへんと思う。それでも、うちはこの口調を知ってた。どこの世界の言語かも知らへんけど、初めから知っとったんや。おかしな話やろ?」



 ---------・-・-・・-・・-・-・-・-・・-・・-・・-



「まあ、本当はそこで暮らしとったんかもしらん。それはうちも分からんし、他の誰も知りようがない。真実を知ろうとしても、どうせ偽りが邪魔するんや。考えるだけ時間の無駄やで」



 -・----・・・・・・-・--・



「……でも……でもそれはうちの話。この言葉を聞いているモノたちは、この時間の世界の真実を知らなあかん立場におるかもしれへん。――いや、きっとおるはずなんや。……未来か過去か、この世界か別の世界か。とにもかくにも、全ての先のために、真実を見つけ出してもらわんと」



 ----・・・・・-・-・-・・--・-・--・・-



「ただ気を付けえや。すべての人間が真実を話しとる保証はどこにもない。故意に嘘をついとるかもしれへんし、自分でも知らんうちに嘘をついとるかもしれん」



 ・・-・・-・---・-・



「記憶っていうのは曖昧なもんで――言い換えるならば、都合のいいように修正が入った過去の想い出。自分にとっては真実やったとしても、それは自分で可変した真実かもしれへん。だから、見つけるんや。――偽りの中にある真実を。――。そうすればきっといつか――誰もが求めた世界になるはずやから」



 ・-・-・-・-・・--・・--・・・- 

 


「――まあ、のこすならこのくらいやろか。どっちにも不利益なことを話したつもりはない。……今話した内容が、歪曲せずに――何処かに、あるいはいつかに……伝わっていることを祈っとこうやないか」



 ・・--・-・--・---・---・・・--・・


 


◇◆◇

―― Haruki side ――




「こちらリア。ターゲットに異常なし。ターゲットは順調に任務を遂行中」


 何処からともなくリアの声が聞こえてくる。

 俺は建物の陰に隠れて、リアが言うターゲットの様子を窺う(・・)

 

「こちらハルキ。了解」


 俺はターゲット――もとい、ユリアとルイ、そしてニアの方を確認する。

 彼等がいるのは、この都市にある少し大きな広場。綺麗に並べられた灰色の石畳が人々の跫音を掻き鳴らす。

 そして、俺とリアがいるのは、彼等から少し離れた場所にある広場の中にある建物の陰。


 ユリア達と俺達の距離は、凡そ五十メートルといったところか。


 因みに、ティシアはすぐに戻ると言って宿屋で朝食をとった段階で何処かに行ってしまった。


「ところでリアー」

「はーい?」



「何これは?」



「え?  なにって……偵察ごっこ?」

「隣にいるからやる意味ないわ!!」


 俺は右手に持ってた何かを投げる。

 それは軽快な音を立てて、地面に転がっていくが、特に誰も気にしない。それはただの石だから。

 

 転がる石に意識を向けることなく、リアは俺の袖を掴みながら反駁する。



「こういうのは気分と気持ちと昂りが大事なのよ!!」

「いやいやいやいや! 昂ぶったところで意味ないし、そもそも別に隠れる必要ないし!」

「見守るイコール隠れるだと私は思います!!」

「そんな公式はないし、それは完全にストーカーの考え!!」



 小声を通り越した言い合いに、広場を歩いている人の視線が俺達の方に向く。時刻は昼のため、迷惑という感じではなさそうだったが。



 俺は一度深呼吸をして、ユリア達の方に再度意識を傾ける。

 今は、ニアがユリアに対して、基礎的な魔法を教えているようだった。ニアは魔法を教えるのに集中しているようで、リアの事ははたから見れば、意識の外に向いているように感じる。


 ユリアは表情こそ真剣なものの、楽しいという気持ちが隠しきれていなかった。

 俺は彼女のその姿を見て、何故か妙な安心感に包まれる。



 初めて会った時から、彼女に大きな変化があったからだろうか。



「リアから見て順調? あの状態は」

「…………順調なのかとかはおいておいて、とりあえず私は今暇ね」

「あ、なるほど。大体わかった」



 暇ということは、彼女達を確認する必要がないということ。

 俺は暇という言葉を受けて、時間をつぶせるものがないか考える。


「じゃあ、しりとりでもするか?」

「まさかのしりとり!? なんで?」


「ルールが簡単、縛りも簡単、誰でもわかる、超手軽!! ……みたいな?」

「それは確かに言えてるわね。縛り、いれる? いれるならどうする?」

「今回は素直に食べ物とかでいいんじゃないか?」

「了解よ!」


「じゃあ、リアから……どうぞ」


 

 ユリアが無事基礎的な魔法を使えるようになっている姿を確認しながら、俺は「ご」から始まる食べ物を探す。

 「り」から始まる食べ物で最初に言うのは、大抵りんごだろうし、そもそも最初の単語はりんご、みたいなイメージがしりとりにある。

 なんとか、一つの単語を思いついた俺は、すぐに答えられる準備を――。


「リゾット」



 「ご」じゃなかった。

 


 もう終わりである。

 一級フラグ建築士――なんて言われても、言い返せない。

 なんでリゾットなんだよとか、リンゴって言えよとか、言いたくなる気持ちを抑え、俺はしりとりを続ける。



「……とまと」

「トースト」


「それはもう犯罪者だからな!」

「やったことはハルキと変わらないわ」

 

 ただでさえ、「と」から始まる食べ物を殆ど思いついていないし、この世界になかったら意味がない。俺は何かないか二十秒程長考した後、思いついた単語がセーフかどうかの確認のために、リアにしりとりのルールを尋ねる。


「濁音ってつけたらダメだったっけ?」

「駄目だった気がするけど、どっちでもいいんじゃない? だって、『ど』は『と』になっても許されるのに、逆はダメって変じゃない? というか、しりとりって自分たちでルール決めてる気がする」


「だったら、ドリアだな」

「飴」

「……銘菓」

「甘美な飴」



「は?」



「なに? 早く次言いなさいよ」

「じゃあ、目玉焼き……とか?」

「厳しくも穏やかで美しくも活発な味わい深い甘さの飴」



「お前まじで言ってる!?」



「だから何よ!? 早く次……いったら? ……え、私間違ってるのかしら」

「ルール的には間違ってるだろ」


 しかし、二回とも悪びれもなく平然とした態度で次に進むように促すリアに、俺の方が間違っているのだろうか、と自分の非を考え始める。


 そして、結論。自分に非はない、絶対に。



「はぁ……メレンゲ」

「それ食べ物なの?」

「ギリギリ食べ物だろ」


 最早、リアのあれが許されるなら食べ物じゃなくてもいいだろうという感覚に陥って――。

 

「険しくて激しくて恐ろしくも優雅で扇情的な儚くも輝かしい甘さと酸っぱさを兼ね揃えた何とも形容し難い美味しさを持った飴ちゃん!! よし! 言い切っ――」



「三度目はないからな!?」

「なんでえ!? ちゃんと完璧に言ったじゃん!! 全部間違ってはいないわ!!」


「修飾語を重ねるだけでおっけーなら、全てのしりとりが成立しなくなるんですけど、しりとりやったことあります!? あと形容しまくってんのに形容し難いは意味わからん!!」

「何言ってるのよ!? この都市にそういう飴を売ってるお店があるのよ!! あとそれはそのお店の店員に言って!!」 



「それは俺が悪かった! でも、さっきの『ん』が付いたからリアの負けだから!!」



「いや、ちゃんはノーカウントでしょ! 『め』で終わりって! いいから『め』で終わったことにして!!」


 服の襟を掴んで、ぶんぶんと俺の身体を振り回して抗議するリア。視界が歪み、脳が揺れる感覚。恐ろしく気持ち悪い。


「それを許したら今後永遠に同じこと繰り返すでしょ!! 間違いは間違いで通さないといけないと俺は思う!!」

 


 彼女は疲れたのか、それとも理解したのか――ゆっくりと体を揺らすのをやめて、沈黙を作り上げた。

 ユリア達の声が遠くから聞こえてくる。他の子ども達の元気な声もともに聞こえてきて、心を穏やかにする。



「…………ケチ」

「はあ!?」



 再び穏やかではなくなった心を落ち着かせようと、目を閉じ深いため息をついて、心身共に平常心へと戻していく。

 冷静さが返ってきた俺は今までの事を振り返り、なんでここまでしりとりに真剣になっていたんだろう、と疑問とともに恥ずかしさがこみ上げてくる。

 


 もしかしたら――小学生以来やっていなかったために、何処か懐かしさを覚えていたのかもしれない。



「ねえ、丁度いいからさっき言った飴買ってきてよ。お金は後で出すからー」

「えぇ……。――ああ、もうそんな目で見るな見るな! 買ってくるから!!」


 両手を合わせて見上げるように、潤んだ目で懇願するリアの表情に耐え切れず、俺は場所を彼女から教えてもらい、逃げるようにその場を後にした。


 

 走る傍ら、楽しそうにしているのユリアの事が見えて、俺は小さく笑みを零す。

 しかし、そんな穏やかな感情とは裏腹に、気になることが脳裏をよぎる。




 ティシアはいつになったら戻ってくるんだろう、と。

あらすじを更新しました。また、以前までのあらすじは、後日「活動報告」に保存します。

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