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d|IF|fer Affection  作者: 江川無名
第一章 「依存と信頼」
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第九話   仲間を集いて、ツギにすすむ

「ムマって何?」


 目の前から存在ごと消え去ったムマと呼ばれる存在について、俺はティシアに質問する。

 急に静謐さを取り戻したことに、周辺の木々は混乱しているらしく、葉々を無造作に振り回していた。


「――ハルキさんには、まだ言ってませんでしたね。……ムマというのは、数か月前より世界に突如出現した未知の生命体です。――いいえ、生命体と呼ぶのかどうかすら怪しい。ムマ達が『生きている』と証明する明確な情報はないからです」



「生きているかも分からない生命体……」


 

 それは、生きていないかもしれないのに生命体と呼ばれていることになる。矛盾もいいところであった。

 しかし、生命体かどうか不明とティシアは言うが、数分前まで対峙していたムマを見ると、「生きている」と個人的には思ってしまう。



 ティシアはムマの説明を続ける。

 未だ謎多き存在であるムマ。

 現在判明していることは、たったの四つだけなのだそうだ。


 一つ。何もない場所――つまり、無から突然出現する。これは、ムマと呼称するようになった理由でもあるらしい。

 一つ。倒すと同時に身体が全て消えるため、痕跡が残らない。

 一つ。目が紅く光っている。

 そして、最後。先程の個体のように、危機に瀕すると自爆する個体が存在する。


 倒すと痕跡が失われるせいか――どれもこれも、みたら分かる内容でしかなかった。

 捕獲して調べようとしても、自爆して調べられないのだろう。――一応、ティシアの言い方的には、自爆しない個体も存在しているようだが、あの恐ろしい存在をどうやって捕獲し、どうやって調べるのか――そこが課題となっているのかもしれない。


「ムマは様々な見た目をしていますが、全てが動物的な容姿でした。――ですが、もう過去形です。ついさっき人の姿をしたムマが出現した」 

「人型っていうのもなかなか質が悪い」

「そうですね。……人型のムマなんて聞いたこともなかった。だから、ムマの特徴を捉えていたものの、さっきのムマが人である可能性を捨ててはいなかった。だから、ハルキさんに殺さないように頼んだんです」


 確かに、両目は紅く光っており、何もないところから突如として姿を現し――ティシアを襲った。

 その後、自爆はしたし、痕跡も残っていない。


 完全にムマの特徴を捉えている。


 しかし、左半分は完全に人間の姿だったといってもいい。肌の色はしっかりと確認できていたし、性別は分からなかったものの、皮膚に人肌特有の質感もあった。

 そして、何より、例え声が人間のものでなかったとしても、感情を剥き出しにして、想いを吼えていたのだから。


「俺はあのムマが生きていないとは思えない」

「……私も、あのムマを見て、一瞬でも生きていると思ったことは認めます。ですが、言葉を発する程度では生命体とは証明できません。例え、そこに感情のような何かがあったとしても、証明はできない。……生命体と証明するのは、自我を持って(・・・・・)行動を選択し、言葉を発しているかどうか……ただそれだけです」


 生命体の定義は難しく、地球上でも明確な定義はなされていないらしい。

 それ故に、神々――もしくはティシア――が定義するのは「自我を持って行動を選択し、言葉を発しているかどうか」になっているのかもしれない。


「ねえ、話は終わった?」


 その時、俺を助けてくれた性別不詳だった少年が膨れ顔でこちらを睨みつける。


 俺は咄嗟にずっと思っていたことを口にする。


「……女の子?」

「男だわ!!」


 喰い気味の突っ込みに、僅かながらに身体を後退させる。

 彼はさらにムスッとした顔を浮かべつつも、俺に対して理解の姿勢を見せた。


「まあ、中性的な声だし? 中性的な顔つきだと自分でも思うけど?  色々見て分かってよ」


 そんなことを言われたので、俺は少年の身体を軽く眺める。

 小柄で、手や足のサイズも小さい。顔付きも中性的であり、服装も性別問わずの色とデザイン。しかし、手は小さくても肉付きは男性的だし、何より、胸に膨らみがない。


 よく見れば、性別が男であることは分かる。


「いや、ごめん。あと、さっきは助けてくれてありがとう」

「ううん、気にしないで! 偶然近くにいただけだから」

「……そっか。あ、自己紹介まだだったな。俺はハルキ。呼び捨てでも構わないよ」

「俺はルイ。じゃあ、こっちも呼び捨てでどうぞ!」


 2人で固い握手を交わす。自然の中に一つの友情が――。



「で、話は終わりましたか?」


 

 と、ティシアが冗談混じりで言った。



◇◇◇



「おはよう!」

「おはよう、ルイ。この宿にいたんだ」


 睡眠して翌日。

 身体にも精神にも疲労を蓄積してきた昨日が、夢の中に混じっていったおかげで、全体的に気分は悪くない。


 そしてここは宿屋の一階。誰もが集まる酒場のような場所。

 俺はルイとティシアが座っていた机の中で、空いていた椅子に腰掛ける。


「まあ、ティシアに用があってさ」

「ティシアとは知り合いなのか?」

「あ、そうなんだよ! ハルキより少し前にね、知り合った。魔王退治どうのこうの言ってて面白いなあ、ってね」

「別に見境なく言ってなかったかと思うんですがね」


「アハハ。でね! 僕はティシアに恩ができちゃったこととか、他に目的があってこの場所から動いた方が良さそうなので、魔王退治に協力しようという話です。別に魔王退治そのものには興味ないけど!」

「そうなんだ。……別の目的ってのは聞いても大丈夫なの?」

「んー? 構わないけど、ちょっと難しいよ? なーんて。こほん、まあ簡単に言うと『何処かに置いてきた目的を達成すること』って感じかな?」


「何処かに置いてきた?」


「そうそう! いやあ、どこに置いてきたのか僕にもさっぱりでね! だから、動き回りたい、ついでにティシアにも恩がある。だから、魔王退治手伝う! はい、こんなことが出会う前にあったわけですよ、旦那」

「ほうほう、旦那それ聞いてない」


 「旦那だからでは?」とティシアが意味もわからぬことを口にした後、彼女は席を外して近くの机に移動する。


「ユリアさん、こっちに来てくれませんか?」

「嫌、無理、やめて。……あ、腕掴まないで、ごめんなさい」

「魔王退治、手伝ってくれるんですよね? だったら、挨拶くらいはお願いできませんか?」

「別にティシアさんとかと行くとは行ってないし!」


「一人でどうにかなるとでも?」


「どうにかなる、じゃなくてどうにかするの。今までそうやってきたし」


「いや、普通に無理ですから。というか、私も貴方に、『愛』をまた見つけて欲しいみたいな話をしたじゃないですか」

「あれ意味分からなかったよ?」


 近づくのは大変良くないと感じつつ、二人の相性はそこまで悪くないのかな? と、思いながら、珈琲っぽい何かを啜る。


 暫くして、観念したのか、あるいは説得されたのか知らないが、ユリアがこっちの机にやってくる。

「……ユリアです。一緒に魔王退治のお手伝いすることになってます。よろしくお願いします」

「僕はルイ。呼び捨てでいいからね!」

「俺の名前は知ってるよな。まあ、俺も呼び捨てで良いよ」


 握手するために椅子から立ち上がり、手を伸ばしたが、ユリアには頑なに拒まれた。

 俺とルイは渋々手を下げて椅子に再度腰掛ける。


 他の人の喧騒に飲み込まれないように、ティシアは大きく手を叩く。


「はい、これでみんな知り合いになりました。これで一緒に旅ができますね」

「本当か?」

「どうだろうね」

「わかんないよな?」

「分かんないよね」



「「いや、本当に大丈夫か(な)?」」



 期せずしてハモった、俺とルイの言葉にティシアは右手で口を押さえながら、楚々として笑う。

 ユリアは御察しの通り。


「さあさあ、いよいよ冒険の始まりですね。とまあ、明日からの予定ですが。とにかく、各自準備しておくこと! 以上解散です!」


 解散の言葉を聞きながら、朝食を頬張る俺とルイはこの場に残り続け、ユリアはそそくさとどこかに行ってしまった。


 こればっかりはもう全部俺が悪い。


 結局、この冒険における仲間の関係は――。



 契約と復讐と目的――そして、贖罪の関係。



 何もかもが滅茶苦茶な仲間関係になってしまっている。

 今後、協力できるのかすら怪しい。



 ただ今は――この状況で良いのだと、自分を誤魔化して、元の世界に帰るために動いていくしかなかった。

「ムマの個人情報及び判明情報」に判明情報及び個体データ「ファミリル」の欄を追加しました。

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