暗躍
※三人称視点です。
「世の中、不公平だと思わない?」
髪の長い少女は、教室の窓辺から下校していく生徒らを見下ろし、同じく教室にいる者に向けて言った。
「永い間、生を、肉を欲してる横で人間は次々と生まれていく。少しわけてくれても罰が当たらないでしょ?」
「あまり目立つことをしなければいい。調整が面倒になる」
「ほどほどに、だろ? 分かってるさ。ボクは優しいからね。ちょっとずつもらってるだけさ」
男の注意に少女は机の上で胡座をかく。
制服のスカートが捲れ、大胆に太腿を露に晒している。
寄せ集めにしては本当にそっくりだと男は少女を凝視して思う。人間ともあの女とも。
「でも、この体はすぐ崩れる。
ねぇ、いつまで暇を潰せばいい?」
「『鬼』と『器』を分離できるよう人間側で計画を進めている」
無駄だなと思いつつも再度、目立つ行動をするな、と釘を刺しておく。
「それより……把握できたのか?」
「んー、だいたいの場所は…ね。すんごく脆くなってるところは見つけたよ。
あそこ…放っといてもいずれ壊れるんじゃないかな?」
「そうなったらこの町ごとアヤカシ共に飲み込まれ、深淵に辿り着けない。
お前も困るだろう。他の奴らに奪われるのは」
「そうだねぇ。貸したものは返してもらわなきゃ。そこら辺にいる有象無象のアヤカシと同レベルだからね」
冗談目かしに肩を竦めながら言う少女。
そばで聞く男は胡乱な目で見る。
よく言う。千年以上も存在する『悪鬼』が――。
「そんなに怖い顔をしなくてもちゃんと人間らしくするし、頼まれた役だってするよぉ。
だから、そっちの方もがんばってね。アンタのことを嗅ぎ回ってる子、いるみたいだからさぁ」
「あぁ、分かってる。お前もそろそろアレを返してやれ。不審がられてる」
「うん。返すよ」
そのうちね、と少女は小さく呟く。
少女の呟きが耳に届いたのか届かなかったのか男はため息を吐き出した。
「それでは、先生。さようなら」
ため息を吐く男を愉快そうに見つつ、少女は教室から出ていった。
それぞれの思惑を胸に秘め、計画を進めるために暗躍する。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
『長編を書く』という目標で拙いながらも書いてきましたが、『終わり』ってなかなか到達するのも難しいものですね。