どこにいくのだろう
(やっぱり、おかしかったんだ)
嵐のように何の前触れもなく僕の前に現れた子だけど突然、関係を断つ子ではないと思っていたから。
きっと何かあったかもしれない。
そう思うのに姫川が行きそうな場所や家の場所を知らない僕たちは、自分たちの家がある方へ歩いていた。
(僕ってけっこう薄情だよね。姫川さんのこと……何も聞こうとしていなかった)
携帯の連絡先しか知らないのだ。
興味がなかったんでしょ?と言われても仕方ない。
「消えた人たちって、どこにいくんだろう?」
立ち止まり、呟く。
隣を歩くシン兄ちゃんも僕に合わせて立ち止まった。
「まだ……いなくなったとは限らないだろ」
「みんなの記憶にあるから?」
「……」
「どうして、いなくなった人のことをみんな忘れてしまうんだろう。
それにアヤカシを『アチラ側』と呼ぶのって? 住人がいる場所があるなら行き方があるはず…………」
今まで疑問に思わなかったんだろう。
光夜叉の声、浮かぶ言葉を鵜呑みにし、何も考えなかった。考えようとしなかった。
ただ、斬れば。
退治すればいいと思っていた。
「お母さんを拐った『蜘蛛』を倒した。人に成り代わる『獣』を狩った。夢の中に閉じ込める『樹』を燃やした。
ねぇ、シン兄ちゃん。本当に僕は退治してよかったのかな。むやみに退治したから姫川さんは狙われたんじゃ……」
復讐ではないだろうか?
僕の身近な人からだんだんと消していく。
そうして、最後に残った自分を喰らうんだ。
「ヒカル。それは違う、違うよ。ヒカルのせいじゃない」
「でも……」
「今は姫川さんの無事を確認しよう。
姫川さんの家が分からないのなら誰か他の人に聞いてみよう」
シン兄ちゃんの言葉に僕は携帯を取り出し、電話をかける。
「姫川さんの家、知ってる?!」
五回コールの後、電話に出た相手に質問する。
「珍しいと思ったら。姫川がどないしたんか?」
何の前置きもなく姫川の住所を訊かれたスバルは聞き返してきた。
「姫川さんが……いなくなったかもしれない」
今日、姫川が通う中学校に行き、一週間くらい休んでいること。
ずっと返信がなく、連絡がとれないことを伝えた。
「姫川さんの家に行こうと思ってるんだけど、分からなくて……。
スバルは姫川さん家の住所、知ってる?」
「…わかった。住所を送っとく。確認してくれ」
「ありがとう」
「俺も行けたら良かったんやけど。悪な、今ちょっと手が離せないんやわ」
「ううん。こっちも忙しいなかごめん」
「ま、明日には帰れるから気にすんな! そっちは任せた」
僕は電話を切った後、スバルから送られてきた住所に向かった。
僕は否定してほしかった。
姫川は風邪で寝込んでいるとか。
家族と旅行に行っててさっき帰ってきたとか。
そんな現実を期待していた。
だけど。
姫川の家を訪ねると中から少し憔悴した姫川の母親らしい人が出てきて言った。
「……先週の土曜日から帰ってきておりません」
僕の願いは虚しく。
「今、あの子を捜しています」
姫川は、行方不明という現実を告げれた。
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