気付き始めている
「なぁ、なぁ、最近人がいなくなる話。聞いたことない?」
教室のどこかで囁かれた噂。
「俺の部活の先輩で、人が目の前で消えたのを見たんだって」
「隣のクラスのやつも言ってたな。街を歩いたら突然、人が消えたらしい」
怖い怖いと口に出しながら声音は明るく、誰も噂を信じていない。
まるで他人事だ。みんな、自分には関係がないと思っているのだ。
友達が、家族が、自分に……災いが降りかかって初めて渦中いると知る。
(人間って愚かだ)
薄っすらと開いた眼で雑談をする同期生たちを眺め、再び腕の中へと顔を埋めた。
「あれ? 早退すんのか?」
次の授業のため異動する最中、げた箱で靴を履き替えるスバルを見かける。
僕の他に不思議に思った生徒が話しかけていた。
「んー、まぁな。急用ができてなぁ」
「そうか、じゃあなー」
「じゃあねぇ」
話しかけてきた生徒から別の方を向いたスバルとちょうど目が合った。
「あ……」
お互いの声が重なる。
「何かあったの?」
「今からお仕事なんや」
「あやかし絡み?」
「まぁ、そんなとこやねぇ」
「僕も手伝おうか?」
スバルは少し驚いた表情をした後、手をひらひらさせて。
「おう! 手伝ってほしくなったらいうわ。アリガトな」
大丈夫だとやんわり断られた。
「できるだけ東絛先輩のそばに居れよ。んじゃな」
「……繋がらない」
携帯を持つ自分の手を見つめ、呟いた。
あれから一週間だ。
姫川から返信が来ず、あらためて自分から電話してみたが繋がらなかった。
――嫌われたんじゃないの?
だとしても、急に連絡を断つ人ではない。
姫川の性格から何のアクションもせず、無視をする人ではないはず。
携帯が壊れたのか? それとも、親に携帯を没収されているか、何か制限をかけられているのか。
――うっとしい。そんなに気になるなら会いにいけばいい。
「…………うん。そうしよう」
「だからって無断で抜け出そうとするのは良くないな」
5時限目の休み時間。学校から抜け出そうとした僕をシン兄ちゃんに見つかってしまった。
「今から行かないと。先に帰っちゃうかもしれない」
「それでもダメだよ。ただでさえヒカルは誤解されやすいんだから」
先生たちにマークされたくないでしょ?と言われ、が「うっ」と黙ってしまう。
「学校終わってから行こう。部活で残ってる子がいるから、ね?」
姫川に会えなくても誰か知ってる生徒はいるかもしれないから。
シン兄ちゃんに諭された僕は学校を抜け出すのを止めた。
授業が終わってから姫川が通う中学校に行くことにした。
中学校の校門前付近。
疎らなに出ていく生徒に声をかけた。
部活帰りの中学生たちから意外な言葉を耳にする。
「へぇ……あいつ、友達いたんだ」
声をかけた男子生徒は姫川と同じクラスだという。
姫川を知ってる人に会えて運が良かったと思った。
だけど、僕が姫川に抱く印象と大分違っていた。
いるか、いないか、よく分からない人。
そんな印象をクラスの男子生徒に持たれているみたいだった。
意外だった。僕が思ってる印象とは真逆だったからだ。
首を傾げつつも姫川のことを尋ねた僕たちに男子生徒は言った。
「しばらく見てないな。ずっと学校を休んでいますね」
「いつから休んでいるの?」
「そうですねぇ……一週間くらい前から見てないですね。なんで休んでるのかは……忘れたっすね」
男子生徒たちは特に心配した様子もなく初対面の僕たちに教えてくれた。
「どこに行く気だ?」
男子生徒たちと別れた後、駆け出そうとした僕の腕をシン兄ちゃんは掴み、制止させた。
「探しにいかないと……」
「どこに? やみくもに探しても見つからない」
落ち着けと言われ、僕はムリヤリ進むのをやめた。
「まだそうと決まったわけじゃないんだ。帰ろう、ヒカル」
ここにずっといても不安は解消されない。僕はこくりと頷いて中学校から離れた。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
長編を書くって本当に難しいですね。
誤字脱字もそうですが、矛盾点や分かりにくい表現、内容が不足など人によっては気になる点が多々あると思います。
長編を書くという練習として投稿しております。生温かくで良いので、見守っていただけますと幸いです。




